石川樹脂工業株式会社・三井化学株式会社・secca inc.の3社による製品発売を記念した鼎談をレポート。(後編)
3社・三つ巴を支える基盤にあったものとは:ARAS meets NAGORI【後編】

この記事では…
石川樹脂工業株式会社は2022年7月20日、同社が展開する食器コレクション「ARAS(エイラス)」の「サステナブルコレクション」の第2弾となる「海水」シリーズを発売した。前編では製品が出来るきっかけや課題について伺ったが、今回はプロジェクトを支えたチームの関係性や見据える今後のものづくりについて話してもらった。
3社が1チームで向き合う意義
「素材・アイデア・技術、それらを支えるパッション、これらがコンプリートされた時にプロジェクトとして上手くいく下地ができている状態だと思うんです」――こう話すのはsecca inc. 上町達也氏だ。今回のプロジェクトが発売までたどり着けたのは、オリジナルの素材とその情報を提供する三井化学株式会社、独自のアイデアで製品をデザインしたsecca inc.、そして高度な成形技術で製造・販売を担う石川樹脂工業、この3社がそろったからこそであるというエピソードが、インタビューの端々で登場したのが非常に印象的であった。
そもそも今回のお皿のメイン素材である「NAGORI」が生まれたきっかけは、子ども向けのプラスチック製食器の使用感である。しかし、これまでNAGORIがお皿の形で販売までたどり着くことはなかった。ネックになっていたのはNAGORIが海水のミネラルを50%以上含んでいるという点だった。前例のない原料を活用した食器を販売するために必要な安全性を担保するには、化学の知識や試作・試験の繰り返しが必要になる。石川樹脂工業 石川勤氏は「ベンチャーのような気質で、ぐっと踏み込んでやれるというのがARASや石川樹脂の強み」と話す。石川樹脂の執念深い試行錯誤はその技術力の根底にあり、今回のプロジェクトでも欠かせなかったという認識は共通しているようだ。
今回、試作含めさまざまな原料の手配を担っていた化学品専門商社、金森産業株式会社によるフラットな目線からの配合の提案も、大切な要素だったそう。

(写真左から)石川樹脂 石川勤氏、secca inc. 上町達也氏、三井化学 近藤淳氏
価値の見直しが生み出す利活用
素材・アイデア・技術を支える、パッションの元になっていたのは、これからのものづくりに対するビジョンの共通点であった。地球にある資源は有限であるという認識が広がり始めて年月は経ったものの、今既に生み出され続けているマテリアルの活用という議題が少なくなってはいないだろうか。まさしくNAGORIが活用を目指している海水の濃縮水がそれである。生命維持に必要な淡水が出来上がると同時に、海にそのまま戻すことはできない濃縮水も生み出してしまう。ものづくりの場面でも、製品の生産過程での廃棄物が発生することは常であって、それを資源という“副産物”として見直すことができれば、まっさらな0から1を作り出すのではなく、今、既にある0.5からモノを作ることができる――、ここに着目していた3社だからこそ、NAGORIが持っていたコンセプトに共感し得たのだろう。
これまで、製品の生産過程で廃棄物が、再利用などを考えず、そのまま捨てられ続けてきた理由の1つは、「再利用するにはコストや手間がかかる」「その方が効率が良い」という、生産性や効率重視の考え方ではないだろうか。製造業における効率化は、深く議論する機会を奪い、部署や専門は違えど同じ製品に関わる人たちの横のつながりも奪ってしまっていたのかもしれない。
今回のプロジェクトでは、3社を中心に関係者による活発な議論によって、全員で同じベクトルを向いて開発を進めることができたという。このことで連携も密になり、さまざまな課題を乗り越える際の基盤がしっかり作り上げられていたのだ。こういったチームの形がこれからのものづくりの現場では広がっていくのだろう。

インタビューを振り返って
鼎談の中でも、それぞれのフィールドでの経験や事例が引き出されながら、話が盛り上がっていた。開発の際にもこのように3者が様々な情報を持ち寄って、広がりのある自由闊達なやり取りがされていたのだろうと目に浮かぶ。また、それぞれが今立つ立場や状況から社会に対してなにができるか、という目線で製品づくりに向き合っているというのも非常に印象的だった。今回のプロジェクトは「ARAS meets NAGORI」だけでなく、人同士にも良い出会いを生み出したと言って間違いないだろう。
3者ともに今回の製品発売を迎え、ユーザーの方々とのコミュニケーションがスタートすることを楽しみにしている様子だった。発売から1ヶ月が過ぎ、「海水」が彩った各家庭の食卓の風景は3者に届いただろうか。NAGORI、ARAS双方のこれからの広がりが楽しみである。
NAGORI材料に関する問い合わせは、PlaBase編集部まで(inquiry@plabase.com)
今回のインタビューイー

石川勤(いしかわ・つとむ)/石川樹脂工業株式会社 専務取締役

近藤淳(こんどう・じゅん)三井化学株式会社 複合材料事業推進室

上町達也(うえまち・たつや)secca inc. 代表取締役

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