2023年4月25~27日にフランスで開催された世界最大の複合材料展示会「JEC World」より、樹脂材料に関する新技術や、世界のトレンドについて、全3回で紹介する(第3回)。
「JEC World2023」に見る欧州複合材料市場の動向(3)

今回の記事は…
(執筆:横山盛之/カワサキテクノリサーチ)
複合材料に使われる強化繊維は炭素繊維に関する話題が多いが、他にもいろいろある。アラミド繊維は炭素繊維ほどの弾性率付与はできない反面衝撃に強く、亜麻などの天然繊維はバイオ由来というだけでなく振動抑制や電波透過などの特徴も併せ持つ。また、安価なガラスは話題になりにくいがコストパフォーマンスという点では極めて高く、再溶融してバージンとそん色のない繊維を作る開発も進められている。
十人十色のごとく繊維にもそれぞれ固有の特徴があるが、複合材料として使う場合に共通するのは繊維の長さと配向の制御が性能に大きく関わる事である。繊維の使い方の最適化と、原材料から成形加工、組み立てまでの工程を高度に自動化することで複合材料部品のコストを最小限にする生産技術開発が、欧州の複合材市場拡大の原動力の1つであろう。
残念ながら今年は生産技術に関する展示が少なかったが、以下に目についたものを挙げる。
連続繊維による補強
少ない繊維量で可能な限り強度を発揮させる手法の1つに、部分補強(local reinforce)がある。連続した繊維をそのまま、あるいはUDテープのような中間素材にしてから成形品の中に配置する手法がある。
たとえばJEC World2013年ではドイツの成形機メーカーDiffenbacherがUDテープを挟んでプレス成形した試作品(写真下)展示が見られ、それ以前にも特殊小型車の樹脂製ドアを厚肉のUDテープで補強した量産例がある。

UDテープ(黄色部分)補強例(JEC World2013年展示)
UDテープによる部分補強は決して新しい考え方ではなく、むしろ原始的にさえ見えるが、年々補強の仕方や、自動プロセスによるコスト削減などの進化が進んで活用が広がっている。今年はこれまでに比べ展示が最も多いように感じられた。
下は、ドイツの研究機関Fraunhofer(フラウンホファー)が、EV用インホイールモーターのローター検討で、中央の金属と周囲の樹脂(芳香族ナイロン+炭素繊維)の一体成形を検証した試作品である。周囲のリブ部内には同じ材質のUDテープがインサート成形されている。
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左はインホイールモーターのローター、右はリブ部の補強用UDテープ(Fraunhofer)
ルクセンブルグのGradel Lightweightは、繊維の最適配向による無駄のない設計から製造工法までの提案としてカーボン、ガラス、亜麻、玄武岩などの各種繊維を、ロボットで自動ワインディングする工法を提唱する。
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左から連続繊維補強のパターン見本、AGVコンセプト、シート(Gradel)
繊維のダイレクトプレースメント
チェコのCompoTechは、独自の繊維プレースメント技術を持つ複合材料の特殊成形メーカーで、今年はその技術の一部を披露していた。

この写真は、ファナック製の6軸ロボットを使う小型ワインディング装置の実演で、後部にセットされたカーボンやアラミドの複数の繊維ロービングを選択的に自動ワインディングしている。
もう1つの展示はITL(Integrated Loop Technology)と名付けるチューブなどのCFRP部品を統合(接合ではない)する加工技術で、今年のJECアワードの最終選考にも残った。下のマウンテンバイクのフレームと前輪のサスペンションにこの技術が使われている。
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ILTによるCFRP部品統合で作られたCFRP製自転車(CompoTech)
プレス工程を組み合わせた3Dプリンティング
スイスの9T Labsは、3Dプリンティングで分割部品を作った後に金型内で熱プレスする工法を提唱する。成形品内部に理想的な繊維配列をすることで、通常の成形工法では不可能な高強度部品が可能になる。
下の写真は二輪バイクのサスペンションリンクで、3Dプリンティングで繊維配向させた積層造形品の中間にオルガノシートを加えて更に強度を増している。

二輪サスペンションリンク

サスペンションリンクの構成部品。両端が33Dプリンティング品で中央がオルガノシート
【余談】2025年の大阪万博にも登場予定
下は米国LIFT Aircraft社の電動垂直着陸機(eVTOL、イーブイトール)「HEXA」の機体である。
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(左)eVTOLの機体はCFRP製 | (右)日本初飛行のHEXA(出所:丸紅のプレスリリース) |
この機体は米国Qarbon Aerospaceがタイ工場で製造したもので、使われているCFRPは特に珍しい技術を盛り込んだものではないので、展示会場では特に気に留めなかったのだが、このHEXAは2023年3月に丸紅や大阪商工会議所などが協力して大阪で初飛行を行ったので付け加えておく。2025年開催の大阪万博では目玉の1つだそうで、関西にお住まいの方はテレビCMで見た方も多いと思う。
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以上、今年のJEC Worldからのトピックスを3回に分けてお伝えしたが、誌面の都合もあり十分な解説に至らなかったことをご容赦願いたい。
なお当社、カワサキテクノリサーチでは、JEC Worldレポートを2023年8月中に刊行を予定している。こちらを通してさらに詳しい解説をご提供させて頂ければ幸甚である。
★上記レポートについての詳細はカワサキテクノリサーチまで問い合わせください
プロフィール
横山 盛之(よこやま・もりゆき) 2019年、カワサキテクノリサーチ入社。過去には、ダイセル化学工業(現ダイセル)で、特殊ナイロン、コンパウンド樹脂、熱可塑性複合材料などの市場開発に従事。1982年、同志社大学卒業。

これまでカタログや材料メーカー各社のホームページ内に散在していた樹脂(プラスチック)成形材料の情報をPlaBaseに集約しました。 メーカー・樹脂名・物性値など多様な検索方法によって、お客様の目的に合った樹脂成形材料のデータを探し出すことができます。








