サステナブル素材をアパレル製品で使うために:PlaBase Innovation Hub 2024(1)

PlaBaseは2024年2月29日、渋谷キューズ(東京都渋谷区:会場協賛)で、ディスカッションイベント「PlaBase Innovation Hub 2024」を開催しました。金森産業がPlaBaseを立ち上げて7年目にして、PlaBaseのイベントとしては2度目。そして都内実地では初の開催となりました。実地とオンラインによるハイブリッド開催で、いずれの会場にも非常に多くの方が来場し、盛況のうちに幕を閉じました。
今回のイベントでは、「サステナビリティとマテリアルの融合」と題し、プラスチックを開発・提供する側の化学企業、そしてプラスチックを使う側のメーカーが登壇し、それぞれ自社のサステナビリティ関連の取り組みを紹介つつディスカッションを繰り広げました。

なおPlaBaseの運営元の金森産業からはプラスチック・樹脂の試作サービスである「PlaQuick」もディスカッションに参戦しています。
【登壇企業】(登壇順)
- 株式会社ゴールドウイン
- Spiber株式会社
- Bioworks株式会社
- BASFジャパン株式会社
- secca inc.(雪花株式会社)
- 株式会社ORPHE(オルフェ)
- アロン化成株式会社
- 金森産業株式会社(PlaBase運営元)

「オープニングセッション」より:PlaBase 松本編集長(松本 祐介/金森産業株式会社 事業開発室 室長)
今回は、本イベント最初のセッション、「時代のニーズに合わせたサステナブルな新マテリアルをどう使いこなすか」で語られた内容の一部をご紹介します。
アパレルとサステナブルマテリアルの融合
このセッションでは、アパレルブランドのゴールドウインから常務執行役員 開発本部長 新井 元氏、素材開発メーカー側としてBioworks 取締役執行役員 坂本 孝治氏とSpiber R&D支援室室長 村田真也氏が登場。PlaBase 松本編集長がモデレーターを担いました。

ゴールドウイン 常務執行役員 開発本部長 新井 元氏
まさにこの3社の共同開発が、全体テーマである「サステナビリティとマテリアルの融合」でした。
1966年に、ゴールドウインが取り扱う「ザ・ノース・フェイス(The North Face)」がアメリカで設立。当時のアメリカ生まれのアウトドア・アパレルブランドやユーザーたちは、その当時から自然環境との調和やその持続可能性という課題への意識が高かったと新井氏は言います。アウトドアが、まさしく、自然環境下で楽しむものであり、ゴールドウインにおいても「自然環境の恩恵を受けビジネスをしている」ということで、創業当初からそうした考え方が根付いていたそうです。
一方で、その解決手段の1つとなるはずの「サステナブルマテリアル」について、アウトドアウェアで採用するにあたっては、機能性などの部分で、「付加価値が、今ひとつ満足いくレベルに至っておらず、世界に広がる速度が少し遅かった」とゴールドウインの新井氏は言います。
そうした中でも、この数年でのSpiberやBioworksといった素材企業による技術革新と、市場における「エシカル消費」への関心の高まりにより、ようやく現実的な取り組みとなってきたということでした。
アウトドアアパレルは、一般のアパレルと比べると耐久性や利便性が要求されることから、これまで軽くて丈夫なナイロンなどが重宝されてきました。そして、現在も変わりません。しかし、さらに未来を見据えて、石油由来素材からの切り替えを、今から検討していくことが重要であるとゴールドウインでは考えていると言います。
遺伝子解析と発酵の融合
まず、ゴールドウインはSpiberと、2015年から天然の構造タンパク質素材であるクモ糸の再現と、そのアパレル製品への応用を目指して共同研究開発を開始しています。

Spiber R&D支援室室長 村田真也氏
2019年に発売され話題となった、THE NORTH FACEの「MOON PARKA(ムーンパーカー)」には、ゴールドウインとSpiberが一緒に開発した、構造タンパク質「ブリュード・プロテイン™ (Brewed Protein™ )」が初めて使用されました。2023年9月には、ブリュード・プロテインポリマーの量産成功を受け、ゴールドウインブランドとして、コートやパンツ、Tシャツなどの商品を発売開始しました。
新井氏とSpiber代表取締役社長の関山和秀氏との出合いは2010年。Spiberの技術を見て「これはすごい! 世の中を変える技術だ!」と直感。その勢いに大いに乗り、MOON PARKAを開発していったといいます。
ちなみにSpiberという会社の原点であり、メディアもにぎわせた同社の「クモ糸」関連の研究。しかしクモ糸の特性である「収縮力の強力さ」がかえってアウトドアアパレルでの適用においてはネックになってしまったそう。ブリュード・プロテインは、天然のクモフィブロイン遺伝子の解析結果からの分析に基づき、新たなたんぱく質素材として設計されています。この繊維は、用途に応じて素材特性をコントロールできるのだそうで、用途はアウトドアに限定されるものではありません。ゴールドウインとSpiberは、素材のポテンシャルを引き出す独自の紡糸・製織・加工プロセスの開発も行っています。なおネーミングは、その製造過程の「発酵(Brewing)」から取ったものであるとのことです。
Spiberの村田氏は、「Spiberの構造タンパク質の技術を、アパレル関連以外にも、自動車業界の内装関係などに用途を広げていきたい」と今後のビジネスについて述べています。
原料と製糸の融合
Bioworksは、植物由来かつ生分解性のバイオマスプラスチックであるポリ乳酸(PLA)を改質した原料「PlaX™ 」を開発している素材のスタートアップです。同社の原料は、従来のPLAの弱点とされてきた耐熱性や成形性を克服するために開発されました。さらに原料自身も天然由来です。「選定するPLAの材料はサトウキビなどになるが、材料生産の労働環境もSDGsなどに配慮されているかどうか見ている」と、Bioworks の坂本氏は言います。

Bioworks 取締役執行役員 坂本 孝治氏
Bioworksのパートナー企業の紡績工場での製糸技術研究をしていることも特色です。そうした体制により、用途など応じて配合を検討していくことが可能であるそうです。天然由来の原料は、石油由来のものよりコストがどうしても高くなります。製品の製造原価の観点で、「成形品より繊維の方が製造工程におけるコスト比率が大きいことから、市場に見合ったコストでの生産が比較的しやすい」と坂本氏は説明しています。
同社とゴールドウインは石油由来の化学繊維などの代替素材として同社が開発する植物由来のポリ乳酸繊維「PlaX Fiber(プラックスファイバー)」を使用した製品の開発をしています。アパレルで使用する際には染色工程で熱をかけるため、BioworksのPlaXの技術が有効であるということです。またPlaXの配合により、製品に抗菌性を付与することも可能であるそうです。
製品開発については、現在も進行中であり、具体的な成果が出てくるのはこれからということでした。
将来に向かって継続していくこと
新井氏は、「CO2削減にしても、将来続けていくべきであって、今日だけではダメなことです」と、サステナブルの取り組みの重要な考え方について語ります。SpiberとBioworksの技術や企業背景などにも、「将来に向かって継続していく」という意思が感じられたといいます。
また、アパレル製品において、ブリュード・プロテインのように「全く新しい」素材が使われることはきわめてレアであり、これまではナイロンのように長い歴史のある素材やそれをベースに改良した素材が使われてきたのがほとんど。少なくとも、「私自身がアパレルに携わってきた中では、初めてのことだった」と新井氏。それが「すごく、面白いことだ」とも言います。
「失敗は成功の母」の言葉が示すように、新しい取り組みには、失敗がつきものです。ブリュード・プロテインの製品を無事市場へ送り出すまでにも、多くの失敗を積み重ねたそうです。サステナビリティ社会に向かって、持続的に試行錯誤をしていける関係性も大事なことです。

これまでカタログや材料メーカー各社のホームページ内に散在していた樹脂(プラスチック)成形材料の情報をPlaBaseに集約しました。 メーカー・樹脂名・物性値など多様な検索方法によって、お客様の目的に合った樹脂成形材料のデータを探し出すことができます。

