現場に寄り添うロボットたち――メッセナゴヤ2025 Next Eraゾーンレポート

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ポートメッセなごやで開催された異業種交流展示会 「メッセナゴヤ2025」の、「特別展示 Space Approach EXPO」から、Next Eraゾーンの一角「スマートロボティクス」エリアより、最前線のロボット技術について紹介します。

(執筆:松永弥生/ライター)


2025年11月5日〜7日、ポートメッセなごやで開催された「メッセナゴヤ2025」。

そのNext Eraゾーンの一角「スマートロボティクス」エリアには、大学や企業の研究チームが集い、最前線のロボット技術を披露した。


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「スマートロボティクス」エリア

自律移動やAI制御、精密加工など、各ブースでは研究者や技術者たちが現場での課題解決に挑む姿が見られた。人とロボットが共に働く社会に向けて、技術はどこまで来ているのか――、本稿では、その一端を伝える。

メッセナゴヤ2025のNext Eraゾーンに設けられた「スマートロボティクス」では、大学や企業によるロボット研究と実装の取り組みが紹介された。AIやセンシングを活用した自律移動、模倣学習、精密加工など、研究分野も応用先も多岐にわたるが、いずれも「実際の現場で使える技術」を目指している点が共通していた。

展示担当者たちはそれぞれの課題や開発過程を率直に話し、今後の実証実験や連携への手応えを語っていた。

ここでは、スマートロボティクスエリアで特に印象的だったブースを紹介する。

中部大学 長坂研究室 ― 不整地を移動可能な多脚歩行ロボットの開発

中部大学・長坂研究室では、急斜面や不整地での作業を支援する多脚歩行ロボットの開発を進めている。日本の林業現場は人手不足が深刻で、車輪型ロボットでは登れない斜面が多い。この課題を解決するため、研究室では昆虫やクモのように六本の脚を持つ構造を採用し、安定した歩行を実現する機構と制御技術を研究している。

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中部大学 長坂研究室 ブース

当初は災害現場での活用を想定していたが、稼働機会を広げるため、日常的に利用できる林業支援へと応用範囲を拡大した。間伐材や作業機材の運搬、樹木の生育状況調査、獣害の見回りなど、さまざまな作業を想定しており、将来的にはカメラとAIを搭載し、自律的にルートを判断して移動できるシステムを目指している。

会場では、斜面を登るロボットのデモンストレーションを実施し、来場者の注目を集めていた。多脚ロボットが不整地で自律的に動く姿は、林業や防災分野での実用化に向けた大きな可能性を感じさせる内容であった。

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多脚ロボットによる間伐材の収集と運搬

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急勾配も登れる六足ロボット

4th.ai ― 四足歩行ロボットが切り拓くフィジカルAI時代

スマートグループの一員であるスマートインプリメントは、自動車の制御ソフトウェア開発を主軸とする企業である。モビリティの多様化によって新車販売が減少する中、「移動」に関わるあらゆる分野へ技術を拡張するために設立されたのが4th.ai(フォースアイ)である。AIを軸に、車両開発からロボティクス、空飛ぶクルマ(eVTOL)、宇宙分野まで事業領域を広げている。


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4th.ai ブース

今回の展示では、中国Unitree社製の四足歩行ロボットに自社技術を搭載し、「自律走行×AI音声会話」をテーマにデモを実施した。ロボットはカメラで物体を検知し、人やロゴを追従する機能を持つ。音声認識によって「ついてきて」と話しかけると応答し、自然なやり取りが可能である。自己位置推定を高精度に行うため、IMUやLiDARによる複合認識を採用し、障害物を避けながら目的地まで自律移動できる。

この技術は将来的に、災害救助やインフラ点検など、人が立ち入りにくい現場での活躍が期待される。物体検知と自律走行の融合は、ロボットが人間社会の中で安全に行動するための基盤であり、「身体を持つAI=フィジカルAI」時代の到来を象徴する展示であった。



⁠中国Unitree社製の四足歩行ロボット デモンストレーション


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四足歩行ロボットによる自律走行 × AI音声会話

名古屋工業大学 加藤研究室 ― 音声から認知症を早期発見するAIスクリーニング技術

名古屋工業大学・加藤研究室では、音声データから認知症の兆候を検出するAI技術の研究を10年以上続けている。医療機関の協力のもと、認知症患者と健常高齢者の音声を収集し、音の高さや強弱、イントネーションなどの特徴量を解析することで、約9割の精度で認知症の初期症状を識別できるモデルを開発済みである。

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名古屋工業大学・加藤研究室 ブース

今回の展示では、会話ロボットを通じて日常的な音声を自然に収集する仕組みを紹介した。従来の臨床データだけでなく、生活に近い環境での発話を学習データに取り入れることで、より実用的な早期スクリーニングを目指している。現在は病院や地域コミュニティセンターでロボットとの会話データを収集しており、将来的には家庭にも導入して、日常会話から認知症のリスクを検知し、受診を促す仕組みの実現を構想している。

会話生成にはOpenAIの技術を活用しており、ユーザーの関心を引き出しながら自然な会話を続けることができる。今後は独自の会話生成モデルを開発し、より高精度で持続可能な仕組みを構築していく予定である。会場では、可愛らしいロボットと参加者の会話が注目を集め、AIと医療の融合がもたらす未来への期待が感じられた。


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アバターロボット「Sota君」と会話ができる

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触覚を取り入れた新しい会話のかたち

アスカ株式会社 ― ヒューマノイドが示す、次世代ロボットエンジニアリングの現在地

アスカ株式会社は、自動車部品を主力とするエンジニアリング企業である。同社は「ユニロボ」ブランドを展開し、共同ロボットからヒューマノイドまで幅広く扱うロボットシステム事業を推進している。今回の展示では、中国・DOBOT社製のヒューマノイドロボットを披露した。DOBOTはもともと教育・産業用ロボットメーカーとして知られ、昨年からヒューマノイド分野に参入。アスカはその日本国内の技術検証と応用展開を担っている。


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アスカ株式会社 ブース

会場では、メタクエストのVRデバイスと連動し、人の手の動きに同期して缶を箱に入れる「模倣学習」のデモンストレーションを実施した。人間の動作を繰り返し学習させ、AIでデータ化していくプロセスを公開し、来場者の関心を集めた。今後は強化学習による歩行データの改良や、自律判断機能の高度化を目指している。

一方で、現状のヒューマノイドには課題も多い。バッテリー稼働は2〜3時間に限られ、自立には介助装置が必要である。安全基準の整備も未確立で、産業利用には時間を要するだろう。しかしながら、同社はこれを「ロボットが人と共に働く未来」への第一歩と位置づけており、技術者自らが使い方を探求する姿勢が印象的であった。

VRデバイスと連動し、人の手の動きに同期して缶を箱に入れる「模倣学習」
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DOBOT社製のヒューマノイドロボット

株式会社 TIMEWELL/MOSAdemy/岡山大学 ― 四足歩行ロボットで鳥獣害対策と地域課題の解決を目指す

岡山大学発のベンチャーが中心となり、四足歩行ロボットの実証実験を通じて、農業現場の課題解決を進めている。

鳥獣害対策を出発点に、自治体や地域住民と連携しながら、農地でのセンシングや地形マッピング、AIによる学習を重ねてきた。


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株式会社 TIMEWELL/MOSAdemy/岡山大学 ブース

  

現場では、久米南町の農地を実験フィールドとして、気温・湿度・CO₂などのデータを取得。ロボットが柔らかい土や枯れ草に足を取られそうになる状況を解析し、IsaacSimによる強化学習で対応能力を高めている。

また、AIで取得した地形情報をもとに、レモン農園での摘果作業支援など、実用的な農業タスクへの応用も検討中だ。今後は、農業だけでなく山間部施設の巡回やインフラ点検など、フィールドを拡大していくという。


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農地を実験フィールドとして実証実験を実施


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レモン農園での摘果作業支援なども検討中


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ライタープロフィール

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松永弥生(まつなが・やよい)
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関西を中心に活躍するフリーライター。2000年からロボコン観戦を始め、三月兎のハンドル名でイベントレポートや動画で情報発信を開始。編集部からの依頼でライターデビュー。以来、ロボットや製造業関連ニュースをメディアに発信してきた。得意分野は、ロボットと製造業。モノづくりが大好き。文章講座やプレスリリース講座の講師としても活動中。

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PlaBase編集部
PlaBase[プラベース]

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