地上の技術が、宇宙を変える――メッセナゴヤ2025 「Space Approach EXPO」レポート

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ポートメッセなごやで開催された異業種交流展示会 「メッセナゴヤ2025」の、「特別展示 Space Approach EXPO」から、宇宙空間という極限の環境で活きる独自技術を持つ企業を紹介します。

(執筆:松永弥生/ライター)



⁠2025年11月5~7日、ポートメッセなごや(名古屋市)で異業種交流展示会 「メッセナゴヤ2025」が開催された。同展示会は3日間で5万75人が来場し、盛況となった。本稿では、宇宙産業にかかわるさまざまな分野の企業・団体など約50社・組織が出展した「特別展示 Space Approach EXPO」から、独自技術を持つ企業を紹介する。

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特別展示 Space Approach EXPO




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⁠宇宙産業はもはや限られた企業の挑戦ではなく、幅広いものづくり企業にとって新たな実践の舞台になりつつある。今回のSpace Approach EXPOでは、極限環境に挑む素材開発から、教育・研究を支える装置設計まで、多様なアプローチが並んだ。

共通していたのは、既存技術を“宇宙仕様”へと進化させる柔軟な発想と、課題解決への執念である。従来の枠にとらわれず、自社の得意分野を再構築し、新しい価値を見出そうとする姿勢が会場全体にあふれていた。



⁠信越化学工業株式会社 ― 宇宙用シリコーン材料で極限環境に挑む

信越化学工業は、宇宙用シリコーン材料「SKシリーズ」「CKシリーズ」を中心に出展した。

⁠同社は30年前、JAXAの前身機関からの依頼を受けて宇宙用接着剤を開発した実績をもつ。当時は市場が小さく長らく眠っていたが、近年の民間宇宙ビジネスの拡大を受けて再始動したそうだ。



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信越化学工業株式会社 ブース



⁠今回展示した新シリーズは、電気・電子部品向けに開発された地上実績をもとに、宇宙環境向けへとグレードアップしたもの。放熱材やコーティング材など、さまざまな用途への展開を進めているそうだ。

⁠最大の特長は、マイナス100℃の極低温でも割れずに柔軟性を維持する耐久性である。従来の−40℃対応品では不可能だった長時間運用を実現し、人工衛星など過酷な環境でも性能を発揮する。


⁠さらに小容量化によって無駄を減らし、コスト面でも約1/10に抑えた。発売から半年ほどとまだ新しいため研究・試作段階ながら、ユーザーからの問い合わせは急増しているという。


⁠今後は宇宙機器メーカーとの連携を強化し、カスタムグレード対応を通じて課題解決型の材料開発を進めていく方針を取る予定だ。




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(左)宇宙・航空用 液状シリコーンゴムの優れた特長、(右)粘度のバリエーションなどラインナップも豊富




⁠SPACE AGENT株式会社 ―微小重力環境を再現し、若い世代に「ものづくり」を伝える

SPACE AGENT株式会社は、宇宙環境の再現装置「微小重力シミュレーター」を展示した。

遠心力を利用して月面の1/6重力などを再現するもので、植物や微生物などの生命体を観察し、薬剤の作用や環境変化の影響を研究できる装置である。三軸制御により、地球の自転と同期した精密な回転を実現しており、大学や研究機関での活用を見込む。





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SPACE AGENT 株式会社 ブース



⁠同社はもともと金型や樹脂加工の技術を背景に、2020年に設立。月面探査機への部品供給をきっかけに宇宙分野へ参入した。現在は、ユーザーと共同で研究を進め、実験機の改良や大型化にも取り組んでいる。

⁠さらに、プラスチックとカーボンを組み合わせたリサイクル素材を活用し、ロケット燃料や部品への応用も目指す。

⁠「若い世代がものづくりの面白さを体験できる場をつくりたい」と担当者は語る。宇宙を題材に、技術と教育を結びつける活動を続けていくという。



顕微鏡観察実験 微小重力装置





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2025年3月7日未明に月面軟着陸成功したYAOKIケースとYAOKIフライトモデル





⁠京セラ株式会社 ― 低熱膨張セラミックスで宇宙空間の精密観測を支える

京セラ株式会社は、宇宙産業向けに低熱膨張セラミックス「ファインコージライト」を展示した。



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京セラ株式会社 ブース



⁠この素材は温度変化による寸法変化が極めて小さく、真空や放射線など過酷な宇宙環境でも高い安定性を保つ。鏡面や構造体への応用により、高精度な望遠鏡や光学機器の性能を支える素材として注目されているそうだ。

⁠同社のセラミックス技術は半導体装置分野で培われたもので、ここ10年ほどで宇宙用途にも展開。国際宇宙ステーションでの光通信実証実験にも採用された実績をもつ。

「ファインコージライト」は京セラの商標登録製品で、表面には金や銀などの金属膜を成膜して鏡面を形成。金は酸化しにくく宇宙用途に適しているという。軽量化のために裏面をリブ状に加工するなど、打ち上げコストを意識した設計工夫も行っている。


⁠今後は天文・宇宙分野に限らず、真空や高温など特殊環境下での活用拡大を目指すそうだ。



低熱膨張セラミックス「ファインコージライト」




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望遠鏡ミラー&構造部材も、ファインコージライト製





⁠カミ商事株式会社 ― 紙から生まれた高強度素材「アモルセル」で宇宙ごみ問題に挑む

カミ商事株式会社は、紙由来の新素材「アモルセル」を出展した。同社はティッシュやトイレットペーパーで知られる日用品メーカーだが、セルロース繊維の可能性を追求する研究開発から宇宙分野へ進出した。



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カミ商事株式会社 ブース⁠



⁠アモルセルは、セルロースナノファイバーを脱水・加熱・高圧プレスすることで繊維同士が樹脂状に結合し、プラスチックの2~3倍の強度を持ちながら100%生分解性を実現している。


⁠燃焼時にも有害ガスを発生せず、二酸化炭素と水のみを排出する特性から、宇宙空間での材料廃棄やデブリ問題の解決策として注目されている。山本鉄工所との共同研究により、成形体の厚みや耐久性の改良を重ね、展示ブースでは板状や箱型のモデルを紹介。2026年4月には実際に宇宙空間での使用実験が予定されているという。

⁠1年ごとの試作改良を経て、現在は数センチ厚の成形体の量産化にもめどが立ちつつあるそうだ。「紙の技術を通じて、地球にも宇宙にも優しい素材を届けたい」と担当者は語った。



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(左)左からパルプ1.0% 溶液、1.0% 水分散ナノフィブリル化セルロース、30% 乾燥ナノフィブリル化セルロース (右)厚さ5.2 mm、比重1.34のアモルセル⁠





東海バネ工業株式会社 ― 特殊ばね技術でロケットや衛星の精密機構を支える

東海バネ工業株式会社は、少量多品種の精密ばねを製造する専門メーカーとして、航空宇宙分野向けの製品を展示した。



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⁠東海バネ工業株式会社 ブース




⁠同社の特徴は、1品ごとに設計条件が異なるオーダーメイド対応力にあり、衛星1機に対してわずか数個のばねしか使用されない宇宙業界のニーズと親和性が高いそうだ。


⁠展示では、ロケットや人工衛星に採用される皿ばねなどの特殊形状品を紹介。限られたスペースの中で高い弾性力と耐久性を発揮し、切り離し機構や姿勢制御など精密な動作を支えている。


⁠宇宙用途では、ISOなどの品質管理基準が厳格であるため、製造・検査体制の高度な管理が求められるが、同社は高精度加工技術と小ロット対応の柔軟性で信頼を得ている。


⁠「大量生産ではなく、一つ一つの課題解決を積み重ねるのが私たちの強み」と担当者は言う。


⁠今後は、民間ロケットや人工衛星のほか、次世代の輸送機構や国際共同開発案件にも対応範囲を広げていく方針をとるそうだ。


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⁠(左)同社のバネはH3ロケットにも採用されている、(右)さまざまな形状のバネ。来場者が「これもバネ?」と尋ねていた




株式会社 共和製作所 ― カーボンで金属を超える精密加工に挑む

共和製作所は、金属切削加工の技術を活かし、2011年の第二創業でカーボン加工分野へ参入した企業である。



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株式会社 共和製作所 ブース




⁠展示会では、独自開発のカーボン製ワッシャーを披露した。この製品は、金属製に比べて軽量かつ高耐久で、振動吸収性に優れ、熱膨張が少ないことが特徴だ。高温下でも形状が変わらず、錆びないため、長期間メンテナンスが不要な環境に最適である。

開発では、通常の樹脂では耐熱性が不足するという課題に直面したが、約300度まで耐えられる新しい樹脂を採用することでブレイクスルーを実現。従来のFRP(ガラス繊維強化プラスチック)を超える耐熱性と剛性を達成した。

同社が持つカーボン切削技術の応用により、固形ブロックから金属と同じ形状のパーツを削り出すことが可能になった。0.05mm単位で削ることができ、ボルト穴やネジ部なども金属部品と完全に互換性をもたせた設計ができる。これにより、従来金属で製作していたパーツをそのままカーボン化し、軽量化と高剛性化を両立している。

来場者からは「カーボンでここまで精密に加工できるとは思わなかった」と驚きの声が多く寄せられていた。今後はレース車両やドローン、人工衛星など、振動対策や軽量化が求められる分野への展開を強化し、カーボンの新たな可能性を切り拓いていく方針だという。



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⁠(左)従来のアルミ部品をカーボンに置きかえ、軽量化と高剛性化を両立。(右)航空宇宙産業向け コンタクトオイル(写真中央)



ライタープロフィール

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松永弥生(まつなが・やよい)
関西を中心に活躍するフリーライター。2000年からロボコン観戦を始め、三月兎のハンドル名でイベントレポートや動画で情報発信を開始。編集部からの依頼でライターデビュー。以来、ロボットや製造業関連ニュースをメディアに発信してきた。得意分野は、ロボットと製造業。モノづくりが大好き。文章講座やプレスリリース講座の講師としても活動中。


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PlaBase編集部
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