ポートメッセなごやで開催された異業種交流展示会 「メッセナゴヤ2025」の「カーボンニュートラル・環境」エリアを紹介します。
自動車業界が進める水平リサイクル最前線――メッセナゴヤ2025「カーボンニュートラル・環境」エリア

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(執筆:松永弥生/ライター)
2025年11月5~7日までポートメッセなごやで開催された「メッセナゴヤ2025」の「カーボンニュートラル・環境」エリアでは、プラスチックの水平リサイクルに焦点を当てた展示が注目を集めた。廃車や家庭ごみから生まれ変わる再生材が示すのは、「使い捨てないものづくり」という新たな時代の方向性だ。

当日、カーボンニュートラル社会の実現に向けた「資源循環」の取り組みが注目を集めていた。中でも注目されたのが、プラスチックを同等品質の素材に再生し、再び製品として活用する水平リサイクル(マテリアルリサイクル)である。
従来の焼却処理(サーマルリサイクル)はエネルギー回収には有効だが、CO₂排出や素材ロスの課題を抱えていた。これに対し、再生材の改質や分別技術の進歩により、強度・外観・耐久性を保ったまま素材を再利用する動きが広がっている。
背景には、2050年カーボンニュートラル実現に向けた国際的な要請と、国内で高まる資源価格・再生材需要の波がある。
水平リサイクルは今や環境対応を超え、産業構造そのものを変える新しい製造のかたちとして注目されている。
株式会社デンソー:車から車へ、資源循環を再定義する「BlueRebirth」
自動車部品メーカーのデンソーがメッセナゴヤ2025で披露したのは、廃車に含まれるプラスチックを再び車に戻すという「BlueRebirth」構想だ。自動車は多くの樹脂部品を使うが、廃車時に粉砕される過程で金属や異物が混ざり、再び自動車部品に利用できる品質を保てないという課題がある。デンソーはそこにメスを入れ、「車から車へ」再資源化する新たな循環スキームを提案した。

株式会社デンソー ブース
現状のリサイクルでは、廃車はまず法定処理(液抜き、エアバッグ回収など)を行い、再利用可能な部品を外した後、車体全体をシュレッダーで粉砕する。その結果、混ざり合った粉末からは素材ごとの分別が困難で、リサイクルはできても“車に戻す”ことはできなかった。そこでデンソーは、素材ごと・部品ごとに分解する精緻な工程を導入し、品質保証付きの再生材料を生み出す仕組みを構築。どの車から、どんな樹脂が生まれたのかを追跡できるようにしたことで、信頼性の高い再生材の供給が可能になるという。
このアプローチは単なるリサイクルではなく、「動脈産業(製造)」と「静脈産業(リサイクル)」を融合する発想だ。従来の解体・破砕業を「再生原料製造業」と再定義し、廃車処理を新たな素材工場と捉える。つまり、スクラップではなく“製造拠点”として位置づけ直すことで、再生材の価値を高めようという取り組みである。
2024年には試験的に複数台の車を分解し、そこから取り出した樹脂を再成形する実証を実施。2025年6月には豊田合成株式会社など約40社とともに「BlueRebirth協議会」を立ち上げ、法制度や標準化、3Dデータの活用、社会認識の変革といった課題に取り組み始めた。この枠組みを通じ、素材メーカーやリサイクル業者、自動車メーカーが連携し、資源循環のバリューチェーンを再構築していく構想だ。
ブースでは、解体から再生までのプロセスを可視化した展示が注目を集めた。来場者からは「これこそ本当の循環型社会の実現だ」との声が寄せられ、持続可能な製造の新モデルとしての期待が高まっている。デンソーは今後も、車に使われた素材を再び車に戻す“真の水平リサイクル”の実現を目指している。

Car-to-Car資源循環バリューチェーン

実証成果としての試作品。リサイクル率25%PPのドアトリムロアボード(上)と、HVACケース(下)
トヨタ紡織株式会社:自治体と連携し、容器プラを車の部品へ――“X to CAR”で描く新たな資源循環
トヨタ紡織株式会社は、京都府亀岡市と連携し、家庭から排出される容器包装プラスチックを自動車部品に再生する「X to CAR」プロジェクトを始動した。これは、2025年3月に亀岡市と締結した「亀岡未来づくり環境パートナーシップ協定」を基盤とし、環境省の補助金を受けて本格始動したものだ。

トヨタ紡織株式会社 ブース
従来、自動車リサイクルの主流は“Car to Car(車から車へ)”だったが、国内では廃車由来の樹脂量が限られており、リサイクル材の安定確保が難しい。そこでトヨタ紡織は、家電や建材、そして容器包装など他産業由来のプラスチックを自動車部品に再利用する「X to CAR」に着目。国内で年間約800万トン廃棄されるプラスチックのうち、半分を占める容器包装系廃棄物に目を向けた。
市民が分別したプラスチックを、選別・洗浄設備を持つ処理業者が精製。続いて、永興物産株式会社が光学選別によってポリプロピレンの純度を高め、ヴァージン材と組み合わせて物性を補強。最終的にトヨタ紡織がシートなどの内装部品として再資源化する。初期段階では意匠性・安全性の要求が比較的低い部位から適用を目指す。
同社はこのプロジェクトを「企業努力だけでは成立しない、市民・自治体・企業の協働による循環モデル」と位置づける。市民の分別意識を高めるため、リサイクル材で作ったゴミ袋や花の苗と交換するなど、参加のインセンティブづくりも検討中だ。
今後3年間で技術課題をクリアし、実車への適用を目指すトヨタ紡織。環境先進都市・亀岡市とともに、“廃棄プラを車へ還す”新たな資源循環の形をつくり出そうとしている。

京都府亀岡市とのプラスチックリサイクルの取り組み

官民連携して体制を構築し、市場モデルとして拡大
永興物産株式会社:容器ごみから自動車部品へ 高付加価値リサイクルで挑む“次の循環”
プラスチックリサイクルの専門メーカー、永興物産株式会社は、長年培ってきた粉砕・ペレット化技術を生かし、高付加価値リサイクル材の製造に取り組んでいる。同社の強みは、単なる再利用にとどまらず、再生材の性能を用途に合わせて再設計する「アップサイクル型リサイクル」だ。プラスチックにはポリプロピレンやポリエステルなど多様な種類があり、永興物産はそれぞれの物性を解析したうえで、強度や衝撃吸収性を向上させた新グレードを開発。顧客の求める特性に合わせた素材を供給している。

永興物産株式会社 ブース
同社は、廃車由来の樹脂を再び車に戻すデンソーの資源循環プロジェクト「BlueRebirth」にも参画。リサイクル過程で得られたプラスチックを粉砕・ペレット化し、再び自動車部品として活用できる形に仕上げる工程を担っている。廃棄物を単なる原料としてではなく、再び高性能素材へと再生する「循環の中核企業」として注目を集めている。
さらに、トヨタ紡織株式会社および亀岡市との協働プロジェクトでは、自治体で回収された容器リサイクル材を自動車部品に転用する実証実験を進行中だ。小山環境株式会社が分別・ペレット化した再生樹脂を、永興物産がヴァージン材と配合し、強度や臭気などの課題を改善。トヨタ紡織の部品に使用できる品質へと仕立てている。2024年度には国の補助金を活用して実証段階に入り、実用化に向けた検証が進んでいる。
今後は、自動車や家電メーカーがリサイクル材の使用比率を高める動きに合わせて、設備投資を強化し、事業拡大を図る方針だ。「ヴァージン材に頼らないものづくり」を掲げる永興物産の挑戦は、循環型社会における“素材再生の要”として、次代の製造業の在り方を示している。

マテリアルリサイクルペレットの製造工程

樹脂バンパーなどの回収材を粉砕・選別したフレーク
豊田合成株式会社:廃車由来プラスチックを新たな資源へ 水平リサイクルでCO₂排出を40%削減
豊田合成株式会社は、廃車から回収したプラスチック部品を再び同種部品に再生する「水平リサイクル技術」を開発した。これまで焼却や低用途リサイクルに回されていた自動車樹脂(主にポリプロピレン)を、素材の特性を維持したまま再利用できる技術である。従来のプロセスでは品質劣化が避けられなかったが、同社は独自の塗膜剥離技術と材料調整技術により、再生材50%を配合しても新材と同等の耐衝撃性・強度・外観品質を実現した。

豊田合成株式会社 ブース
この技術は、株式会社いそのと共同で開発。いそのがリサイクル原料を高品質に選別・精製し、豊田合成が自社の改質技術で最適化することで、グローブボックスなど車内外装部品での再利用を実現した。廃車由来プラスチックをここまで高い品質で再び車に戻す取り組みは世界初であり、CO₂排出量を約40%削減できるという。
さらに、展示ではウェザーストリップ製造時に発生する廃棄ゴムのリサイクル技術も紹介。架橋ゴムを再生し、今後は自動車用再生ゴムシートへの展開を目指すとした。
同社は今後、素材メーカーや自動車メーカーと連携し、廃車樹脂を資源として再循環させる新しい製造モデルの確立を進める。「素材を捨てないクルマづくり」を合言葉に、カーボンニュートラル時代にふさわしい水平リサイクルの実装を目指している。

廃車由来プラスチックの水平リサイクル技術

再生樹脂を用いたグラブボックスと、その元となる粉砕材のサンプル展示
ライタープロフィール

松永弥生(まつなが・やよい)
関西を中心に活躍するフリーライター。2000年からロボコン観戦を始め、三月兎のハンドル名でイベントレポートや動画で情報発信を開始。編集部からの依頼でライターデビュー。以来、ロボットや製造業関連ニュースをメディアに発信してきた。得意分野は、ロボットと製造業。モノづくりが大好き。文章講座やプレスリリース講座の講師としても活動中。

これまでカタログや材料メーカー各社のホームページ内に散在していた樹脂(プラスチック)成形材料の情報をPlaBaseに集約しました。 メーカー・樹脂名・物性値など多様な検索方法によって、お客様の目的に合った樹脂成形材料のデータを探し出すことができます。
