環境対応素材の開示競争が加速――プラスチックニュース 2026年6月

PlaBaseが厳選したプラスチック関連ニュースをお届けします。今回は、プラスチックの環境負荷を可視化する取り組みや、廃プラリサイクルの共同研究について取り上げました。
【ニュース①】帝人、PC樹脂でSuMPO EPD登録
バージン樹脂材料の環境負荷データを可視化
帝人は、キヤノンと連携し、ポリカーボネート(PC)樹脂などのバージン樹脂材料を、環境ラベルプログラム「SuMPO EPD(Environmental Product Declaration、環境製品宣言)」に登録した。バージン樹脂分野での登録は、国内初になるという。同社は、環境情報の提供を通じて、サプライチェーン全体でのCO₂排出量削減に貢献するとしている。
SuMPO EPDは、サステナブル経営推進機構(SuMPO)が運営する環境ラベル制度。SuMPOが運営・管理する製品の環境影響評価(Life Cycle Assessment:LCA)手法に基づき、環境情報を算定、検証、開示する。製品カテゴリごとに定められた算定ルール(Product Category Rule:PCR)により、地球温暖化係数(GWP)・エネルギー使用量・水使用量などの環境影響指標が開示される。

出所:帝人
樹脂材料における環境負荷の可視化が課題
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、製造業では近年、カーボンフットプリント(CFP)の算定が求められている。CFPは、原材料調達から廃棄・リサイクルまで、製品のライフサイクル全体で排出された温室効果ガス(GHG)をCO₂排出量に換算して示したものだ。数値として「見える化」することで、CO₂削減に向けた対策を検討できるというメリットがある。
経済産業省と環境省では、「CFP算定ルール策定支援事業」を通じて業種や製品別の算定ルールの整備を進めており、自動車業界などでは、サプライチェーン全体での排出量管理が進んでいる。一方、樹脂材料は製造工程が多岐にわたるため、環境負荷の定量化が難しいとされてきた。各分野で環境負荷の可視化が進む中で、樹脂材料は業界平均の排出係数が算定に用いられ、樹脂材料メーカーによるCO₂排出量削減の成果が反映されにくい状況にある。こうした背景から、樹脂材料においても算定ルールの整備が求められていた。
帝人は、キヤノン向けに提供したPC樹脂「パンライト」「マルチロン」のCO₂排出量を実データで算定し、第三者検証を経てEPDに登録した。これによりユーザーは、材料選定段階で環境負荷を比較可能となる。これらの樹脂は、キヤノンが商業印刷向けプロダクションプリンター2機種に利用しており、ライフサイクルCO₂排出量算定に組み込んで、SuMPO EPDを登録・公開した。
環境対応素材の開示競争が加速
環境負荷の可視化に向けた取り組みは、素材メーカー各社で進展している。三菱ケミカルグループは、ケミカルリサイクル材の開発・供給を進めており、環境負荷低減に向けた取り組みを強化している。海外では、BASFが「製品単位のCO₂排出量(Product Carbon Footprint:PCF)」を算定し、顧客向けにデータ提供を行っている。こうした中、バージン樹脂材料のEPD登録は、材料選定の新たな指標となる可能性がある。今後、品種拡大や他樹脂への展開が進むことで、サプライチェーン全体でのCO₂排出量削減が期待される。
【ニュース②】みずほ銀行ら4社、半導体由来廃プラを自動車部品へ——九州で「X to Car」循環モデル構築の共同研究開始
みずほ銀行は2026年4月28日、有価物回収協業組合石坂グループ、ニシキ、ニフコと共同で、半導体産業由来の廃プラスチックを自動車産業向けに再資源化する研究を開始したと発表した。半導体・自動車の両産業が集まる九州地区で、廃棄物の高度選別からコンパウンド化、部品成形、機能評価までを一貫して検証する。資源循環型の事業モデルが確立された場合、動脈産業と静脈産業を結ぶサプライチェーンの社会実装を目指す。
焼却・埋め立てに依存する半導体廃プラの現状
半導体産業の集積が進む九州地域では、同産業由来の廃プラスチックが相当量発生しており、今後も増加が見込まれている。現状はその多くが、焼却時に発生する熱エネルギーを回収・利用するサーマルリサイクルや焼却、埋め立てによって処理されており、資源としての再利用、すなわちマテリアルリサイクルは十分に進んでいない。
一方、自動車産業では、欧州でELV(End-of-Life Vehicles、使用済み自動車)規則の改正が進んでおり、新車に使う再生プラスチックの割合を施行6年後に15%、10年後に25%と段階的に引き上げる見通しだ。さらに、そのうち最低20%は廃車由来が必須とされ、今後自動車産業において再生材の需要拡大が見込まれる。九州は自動車産業の一大集積地でもあることから、再生プラスチックの安定調達が地域的な課題として浮上しつつある。
4社の役割分担による「X to Car」モデル
今回の共同研究は、「X to Car」をコンセプトに掲げ、半導体産業由来の廃プラスチックを自動車部品材料として循環させるクローズド・マテリアルリサイクル型サプライチェーン構築の可能性を検証する。
同研究における各社の役割は以下の通りだ。
廃棄物の高度選別技術とリサイクルチェーン構築に実績を持つ石坂グループは、用途に応じた半導体産業由来廃棄物の収集・選別を担う。ニシキは、再原材料化と車両向け規格に適合するコンパウンド化を実施する。またニフコは、マテリアルリサイクル原料を用いた自動車部品を開発し、機械特性・耐久性・品質安定性などの観点から成形可能性を評価する。みずほ銀行は、資源循環型サプライチェーン構築に向けた金融・事業支援を検討する。

出所:みずほ銀行
廃プラの高付加価値循環に向けた各社の動き
廃プラスチックのリサイクルは、ケミカルリサイクルとマテリアルリサイクルの両方で取り組みが活発化している。レゾナックは2024年3月より、半導体材料の製造工程で発生する使用済みプラスチックをガス化する「川崎プラスチックケミカルリサイクル事業(KPR)」に取り組んでいる。使用済みプラスチックをガス化し、得られた水素を原料として低炭素アンモニアを製造している。2025年9月には、経済産業省より「価格差に着目した支援」制度の対象として認定を受け、同事業の拡大を決定している。
自動車向けマテリアルリサイクル分野では、デンソーら6社が2025年6月に「BlueRebirth協議会」を設立した。同協議会は、ロボットによる自動精緻解体を活用し、使用済み自動車から単一素材を取り出して再資源化を目指している。
今回のみずほ銀行ら4社による共同研究は、半導体産業の廃プラスチックを自動車用途へ循環させるという、異なる産業間での資源循環を目指す新たな試みとなる。また、九州の産業集積地で動静脈連携を完結させる地域完結型の循環モデルとして、今後の社会実装に向けた進展が注目される。

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