自動車用途プラスチックの第一人者が見た、「人とくるまのテクノロジー展 2026YOKOHAMA」は? 今回はレクサス新型ESの内装に採用された、加飾・照明・スイッチ機能を融合したプラスチック技術に注目した。
レクサス新型ESでプラスチックが大活躍だ!:人テク2026横浜取材から(1)

この記事について
(執筆:高原 忠良/Tech―T)
2026年5月27~29日、パシフィコ横浜にて「人とくるまのテクノロジー展2026 YOKOHAMA」(主催:自動車技術会)が開催された。
来場者数は3日間で8万493人にのぼり、前年を上回り過去最高を更新した。筆者も自動車関連プラスチックの視点から、3日間にわたり現地取材を実施した。
オープニングセレモニー

中畔自技会会長

会場雰囲気
筆者は、自身が主催する車載プラスチックのセミナーなどを通じて、「クルマに乗り込んで周りを見回すと、ガラス以外はプラスチックですね」と、プラスチックの重要性を説いてきた。
プラスチックはその外観から安っぽい材料と見られがちであるが、長きにわたり関連する企業やエンジニアたち、はたまたデザイナーはプラスチックを活用して安価ながらも質感の高い部品開発に邁進していただいてきた。
筆者の継続調査から、感覚的なコメントで恐縮だが、ここ2~3年で、プラスチック部品の活用に大きな変化、いい意味での進化を感じている。
そういうわけで、本欄では、人とくるまのテクノロジー展2026 YOKOHAMAで披露された、自動車関連のプラスチック部品の技術を中心とし、数回に渡りレポートしたい。
当然ながら筆者は、新型のレクサスESに関しての調査に赴いたわけではなく、なんらの予備知識なしでの取材であったが、サブタイトルにある結論となった。さらに興味深い点は、単独の企業ではなく、数社の協業にて新たな加飾部品として具現化、搭載されている点である。
なお、プラスチックの立場として「加飾」としているが、実際の部品の多くはスイッチや照明などの機能部品との組み合わせであり、機能と美しさを兼ね備えた部品ともいえよう。

LEXUS 新型ES
新型のレクサスES(写真:出展トヨタ自動車)では、インパネの左から右端まで、黒調の表皮部材が配置されている。

この表皮に手を近づけるとスイッチが浮き出てくる。掲載した写真中のQRコードから、YouTubeのTech-Tチャンネル動画にてこの動作をご確認いただきたい。スイッチを操作した際には、操作したことが指先に振動としてフィードバックされる。従来の機械式スイッチ部は独立意匠であったが、展示品はすっきりした意匠である。一方で機械式のスイッチを操作したときと同じように、操作の感触があるという安心感も兼ね備えている。ステアリングスイッチとしても同様の部品が左右に計2個搭載されている。
落ち着いた雰囲気の内装が、必要な際にスイッチとして機能するという静と動の融合である。静電スイッチや操作触感の振動機構などは東海理化、輪郭がくっきりとした光透過機能を有するレザーはダイキョーニシカワ製である。2社協業の開発品であり、両社のブースで展示してあった。

面発光イルミネーション加飾のドアトリム
トヨタ紡織は、面発光が変化するドアトリムを展示していた。透明樹脂による射出成形品の表面に竹調の意匠のフィルムが配置されている。成形品の車両下側には複数のRGB LEDが配置されており、発光のタイミングで、面発光が色も発光部位も変化する。このあたりもぜひ、動画で確認いただきたい。竹調のフィルムは小島プレス工業、前述の発光パネルとドアトリム全体はトヨタ紡織による。さらに、内装システムサプライヤーの林テレンプも参画しており、都合3社の協業となっている。

PCRリサイクル材を35%使用したPC/ABS製のインパネ部品
市場回収樹脂製品由来の再生材(いわゆるPCR)を35%含有したPC/SBS製の部品が内装品(おそらくはメータフード)に採用される。コベストロジャパンの展示ブースにて、樹脂グレード名Bayblend T85X R35 CQを示しながら展示されていた。同社の樹脂にてあるモールダーが部品へと加工し、さらに塗装品として納入される。取材の時点では、情報解禁日となっていないために、具体的な商流に関してはご説明いただけなかった。ウラを返せば、それだけホットな話題ということである。
新規開発品であり、また、コストの高い材料や複雑な加工工程ということで、まずはレクサスからの採用である。市場のニーズが高ければ、コストダウン開発とともに多種に展開されることとなり、注目すべき展示としてまとめた。
次回は、内装品の加飾関連中心に報告を予定している。
◇筆者からお知らせ◆
安価なプラスチックを如何に質感高く使用するかという意味で加飾技術は重要である――筆者のTech-Tでは、2026年6月30日名古屋にて、多数の加飾サンプルを示しながらの最新加飾解説セミナーを計画している。
Tech-Tのセミナーは現物を示しながらという特徴とともに、SEEDSとNEEDSの出会いの場、あるいは競合との意見交換の場としての交流会も設定されており、技術の最前線を知るとともに次の方向性探索としても高く評価いただいている。
>>詳細はこちら! 【Tech-Tセミナー/現地現物】6月30日対面『現物を見ながらの最新加飾技術解説セミナー』
プロフィール

高原忠良(たかはら・ただよし)
2020 年にTech―T設立。
「現地現物」の精神で部品分解調査や、中国・東南アジア現地取材をもとに、⾃動⾞産業の将来動向まで多領域で情報発信中。
プラスチックや樹脂部品生産や材料の生産・開発に携わる自動車用途プラスチックの第一人者。
1980 年、山形大学理学部卒。2008 年、山形大学理工学研究科卒(工学博士)。
1980~1989 年、新日本無線(現:日清紡マイクロデバイス)。
1989~2012 年、トヨタ自動車。
2012~2018 年、サムスンSDIなどグローバル企業で勤務。
2017-2025年、埼玉工業大学 客員教授など産学両分野で活躍。
セミナー・メーカー支援・中国視察ツアー・日経クロステックへの寄稿など幅広く活躍中。ホームページでも各種調査情報を元に、記事や動画を多数掲載
https://www.tech-t.jp/

これまでカタログや材料メーカー各社のホームページ内に散在していた樹脂(プラスチック)成形材料の情報をPlaBaseに集約しました。 メーカー・樹脂名・物性値など多様な検索方法によって、お客様の目的に合った樹脂成形材料のデータを探し出すことができます。
