射出工程の留意点は

 流体は圧力が高い方から低い方に流れます。射出工程はシリンダ側から高い圧力をかけて溶融樹脂を金型内に充填する工程です。射出工程では、次の現象が起こります。

 

①型内ではファウンテンフローという流れ方をします。

 

射出するときには、型内では図1に示す流れ方をします。最初に流入した溶融樹脂は金型の両壁面と接すると冷やされて固化層となり、それぞれ内側は粘度の大きい非流動層になりますが、ここでは両層を固化層と表現します。後から流入した溶融樹脂は両固化層の間を流動先端に向かって流れます。流動先端では噴水が湧き出るように流れるので、このような流れ方をファウンテンフロー(噴水流)と言います。

 

 

②型内流動では分子配向という現象が起こります。

プラスチックは長い鎖状の分子からなります。同分子は溶融状態で、力を加えないと丸まった形態(ランダムコイルという)になろうとする性質があります。このランダムコイルに“引っ張り力”や“せん断力”を加えると力の方向に引き延ばされます。

図1では型内で流動時に固化層と流動層の間で生じるせん断力によって分子が流れ方向に引き延ばされる様子(分子配向)を示しています。この状態でそのまま固化すると成形品には分子配向が残ります。

なお、分子配向は保圧工程でも生じますが、発生原理は同じですので、ここでまとめて説明しました。

 

 

③キャビティの末端まで充填するには高い射出圧力をかけます。 

図2に示すように射出工程では、シリンダ側から射出された溶融樹脂は、金型内の樹脂流路(スプルー、ランナ、ゲート)を経て、成形品を成形するキャビティに達します。

溶融樹脂をキャビティの末端まで充填するために高い射出圧力を加える必要があります。型内では充填が進むにつれて流動抵抗が大きくなるので、この抵抗に打ち勝って流動するように射出圧力(流動圧力)を加えます。

当然、溶融粘度の大きい成形材料では流動抵抗が大きいので射出圧力を高くしないとキャビティ末端まで充填できないことになります。

 

 

成形条件の設定では、次のことを留意する必要があります。

 

a)成形温度を高くすると流動しやすくなります。

成形温度が高いと溶融粘度は小さくなるので、流動しやすくなります。ただし、成形温度が高過ぎると熱分解するので、使用樹脂の熱分解温度以下に成形温度を設定する必要があります。

 

b)成形温度が低く、射出圧が高いと分子配向しやすくなります。

成形温度が低く、射出圧が高いと流動するときに高いせん断力が発生するので、分子配向しやすくなります。分子配向すると製品の強度や加熱収縮率に方向性が生じることがあります。なお、分子配向は成形品の肉厚が薄いと起こりやすい現象です。

 

c)射出速度を速くすると流動しやすくなります。

プラスチックは射出速度を速くすると(せん断速度を速くすると)、溶融粘度は小さくなる性質(非ニュートン流動)があります。そのため、射出速度を速くすると流動しやすくなります。

 

d)充填終了のタイミングでは射出速度を低速にする必要があります。

充填終了のタイミングにおいても射出速度が高速であると、型内で高い圧力が発生します。このような現象を過充填(オーバーパック)と言います。過充填になると、型開きできなくなる、残留ひずみが残る、バリが発生するなどの不具合が生じます。過充填にならないように、充填終了直前に射出速度を低速にして保圧に切り替えます。

 

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PlaBase編集部
PlaBase[プラベース]

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