ナフサレポート  Vol.2

石油化学製品がナフサ価格に変動するワケ

*石化原料とナフサ

前回はそもそも「ナフサ」とは何物なのか、解説しました。普段、耳にタコができるくらい聞いているかたもいらっしゃると思いますが、ぼんやりとでもイメージがついたようだと嬉しく思います。
今回からは、このナフサと石油化学製品との関係について迫りたいと思います。これをご覧になっている皆様の中には、石油化学製品の販売や調達以外にも材料設計など技術を担当されているかたも多いと思います。石油化学製品がなぜ日本ではナフサ価格を基準に計算されているのか、もう一歩、理解を深めたいと思います。

プラスチックやゴム、溶剤など多岐にわたる石油化学製品の出発点の多くは、オレフィン(エチレン、プロピレン、ブタジエン)と、アロマ(=芳香族。ベンゼン、トルエン、キシレン)によって構成されています。石油化学(石化)製品の原料となることから、これらを「石化原料」と呼んでいます。様々な種類のプラスチックがこのPlaBaseでも紹介されていますが、それらの原料をさかのぼると、これら石化原料に行きつきます。

例えば、ペットボトルやフィルムなどに使用されるポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂は、高純度テレフタル酸(PTA)とエチレングリコールから合成されます。PTAと聞くと学校のPTAを連想しますが、高純度テレフタル酸の英語名の頭文字を取っているだけです。PTAはパラキシレンと呼ばれるキシレンの一種から生産され、エチレングリコールの製造にはエチレンが使用されます。つまりPET樹脂は、とどのつまり、キシレンやエチレンを出発点として合成される格好になります。
もう一つ、ウレタンに例を見たいと思います。ウレタンは、ポリオールとイソシアネートと呼ばれる2つの異なる液体を混ぜることによって生産されます。このポリオールの多くはプロピレンが出発点となるポリプロピレングリコールが使用されます。一方、イソシアネートにはトルエンやベンゼンが出発点となるTDIやMDIが使用されます。つまり、かなり大雑把に言えば、ウレタンの出発点はプロピレン、ベンゼン、トルエンということになります。

このように石化原料を出発点に様々なコンビネーションで製品が連鎖的に生産されます。そのため、連鎖(チェーン)という名称を適用することにより、PET樹脂の生産の流れをPETチェーン、ウレタンであればウレタンチェーンと呼びます。石化製品のほとんどは、様々なチェーンを介して上記の「石化原料」にたどり着くのです。石化原料(例えばパラキシレン)と、石油化学製品(この場合PET樹脂)との間にある製品であるPTAを、実態そのままに中間体と呼んでいます。

話を戻しましょう。なぜ石油化学製品が日本でナフサ価格を基準に算出されているか、それはこの「石化原料」が日本ではナフサを原料に生産されるからです。「石化原料」はナフサをクラッカーと呼ばれる装置で分解後、精製することによって生産されます(図 ナフサ・石化原料・石化製品の関係)。
クラッカーは前回のコラムでもご紹介した、高圧の水蒸気を使用してナフサを分解する装置です。日本は石油資源をほとんど保有していませんので、輸入コストが安く済み、製油所にとっても「お荷物」だったナフサがクラッカーの原料となりました。ナフサの価格が値上がりすれば石化原料のコストは上昇し、その上昇分が製品に転嫁されます。逆に値下がりすればコストは安くなりますので、その減少分が製品に転嫁されます。ナフサ→石化原料→(中間体)→(中間体)→石油化学製品と連鎖していくので、見えづらいですが、おおもとの原料コストがナフサによって決まるため、石油化学製品がナフサ価格を基準として決定されるということはお判りいただけたのではないかと思います。

*ナフサ連動だけではなくなった

前項で示した、石油化学製品がナフサの価格に変動することをナフサ連動、ナフサリンク、ナフサフォーミュラと言ったりしますが、いずれも同じ意味ということをおさえておきます。
業界全体でここまでナフサ連動が普及したのには複雑な歴史がありますが、話が長くなりますのでここでは割愛いたします。しかし近年、石油化学製品の価格にはナフサ連動だけではない変動材料も出てきています。それは石化原料、中間体そして石油化学製品のそれぞれのマーケット(アジア相場)です。
例えば、ナフサから一貫で製造してきたサプライヤーが生産能力を削減し、不足分の原料を輸入に切り替える必要が出てきた場合、そのコストはこれまで使用してきたナフサ連動ではなく、その原料のアジア相場に寄る格好となります。
また、アジア相場が慢性的に高騰している原料では、サプライヤーがナフサだけではなくアジア相場も販売価格の一部に使用する例も出てきました。特にブタジエンやスチレンモノマー(エチレンとベンゼンから生産)は、ナフサ連動の部分とアジア相場に連動する部分で構成されるようになっています。このアジア相場は、ナフサ以降の石化原料を含め、中間体や製品それぞれに存在しており、弊社を含む情報会社がヒアリング等により独自の査定を実施しています。当然、それぞれの製品における需給環境や市場参加者のセンチメントによって相場は上下しますので、このアジア相場も非常に大切な材料となるわけです。
そのため、20年前までは石油化学製品のほとんどはナフサ連動だったところから、足元ではチェーンのなかに存在する製品それぞれのアジア相場も原料価格を決定する因子として登場し、動向を注視することが必須となりました。

ただし、アジア相場も加味して価格を決定する分野が登場した一方、依然としてナフサに連動する化学品が多勢を占めています。また、それらの化学品ですら元々はナフサから生産されるため、ナフサ相場の動向を見ておくことがマストとなります。

弊社ではメルマガ会員向けに無料で毎朝10:00時点のナフサ相場を配信しています。この数値はナフサの仲介を手掛ける小社が、前日のアジア相場終了後、欧米時間の相場動向を踏まえて作成したマーケットデータに基づいています。ナフサをトレーディングする関係者の多くが参考にしている数値ですので、信頼性が高いと各方面から評価頂いています。
このデータを毎日纏めておけば、アジアのナフサ相場の推移をおおまかに知ることは可能でしょう。
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次回はあともう一歩だけ、「ナフサ価格」について掘り下げたいと思います。

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PlaBase編集部
PlaBase[プラベース]

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