2019.09.18ニュース

問題視されている廃棄場所・高処理費用のFRP。そのリサイクル技術とは

FRP(繊維強化プラスチック)は、強化繊維であるガラス繊維や炭素繊維を不飽和ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂中に分散させ、比強度や比弾性率を著しく向上させた複合材料である。

FRPの中でも、特にガラス繊維強化プラスチック(GFRP)は、高い力学特性や化学的安定性に加えて価格も安く、金属材料と比較して軽量な上に、大量生産が可能なため、高度経済成長期から現在に至るまで「夢の新素材」としてバスタブやレジャーボートなどの船体材料などに多用されてきた。

しかし、近年これらのGFRP製品が寿命を迎え、大量に廃棄される時代を迎えるに当たり、大きな問題に直面している。この問題とは、GFRP製品の廃棄場所の確保である。

バスタブやレジャーボート等、水の存在下で使用されるGFRP製品の寿命は通常10年前後と考えられる。

その理由としては、GFRP製品の劣化は、例えばバスタブでは1日周期で給湯と排水を繰り返すことで、特に冬季ではその温度差は40℃近くに達し、バスタブ全体が熱膨張と熱収縮を繰り返すことになる。GFRPを構成しているガラス繊維と不飽和ポリエステル樹脂の熱膨張係数の違いから両者の間に発生する内部応力により、GFRPは次第に劣化し、寿命を迎えることになる。

一方、ボートなどの船体も同様に寿命を迎えるが、これらの廃棄されたGFRP素材の処理が極めて深刻な社会問題を引き起こしている。特に全国各地の海岸には不法投棄されたGFRP製の廃船が散見され、景観上問題視されている。

この原因は、GFRP製品の廃棄処理にはコストがかかり、船体の所有者にとって、その処理費用がかなり高額であることが大きい。廃棄されたGFRP製品の処理費用の高さの原因は、GFRPがリサイクルや廃棄を前提に設計された材料ではないことによるが、その理由として、GFRPの化学的安定性が挙げられる。

特にGFRPを構成する不飽和ポリエステル樹脂は熱硬化性樹脂の一種であり、成型時に架橋反応を伴う三次元的構造を不可逆的に形成する。一旦三次元構造が形成されると、もはや通常の加熱や溶媒処理により、もとの液体状の原料に戻すことは不可能である。

現在レジャーボートやバスタブとして用いられてきたGFRP製品の廃棄量は年間数十万トンに及んでいる。したがって、廃棄されたGFRP製品のリサイクルは現在環境面から逼迫した課題の一つとして各方面から注目を集めている。

一般に素材のリサイクルは(1)マテリアルリサイクル、(2)サーマルリサイクルおよび(3)ケミカルリサイクルに大別される。

(1)マテリアルリサイクル

マテリアルリサイクルは、廃棄された素材を物理的、機械的に加工し、別の素材の添加物として使用するリサイクルであり、一般には廃GFRP材を細かく粉砕し、セメントなどの充填剤として再利用する方法が実用化されている。

しかし、マテリアルリサイクルは、ガラス繊維と不飽和ポリエステル樹脂の接着が頑強であり、廃GFRP材からガラス繊維や不飽和ポリエステル樹脂を物理的に分離回収することが不可能であり、資源の有効活用の面からは決して効果的なリサイクル法とは言い難く、かつ細かく粉砕した廃GFRP片は、あくまでも産業廃棄物としての扱いしか受けられない。

(2)サーマルリサイクル

サーマルリサイクルとは、廃棄された素材が可燃性である場合、これを燃料として利用し、燃焼の結果発生した熱をエネルギーとして利用するリサイクル法であり、生ゴミや紙製品のリサイクル法として一般的に行われている。

しかし、廃GFRP製品の場合、上述したとおり、無機材料であるガラス繊維と有機材料である不飽和ポリエステル樹脂の複合材料であり、その分離は通常の方法では不可能であることから、廃GFRP材を焼却炉で燃焼させた場合、不飽和ポリエステル樹脂の燃焼により発生した熱により溶融したガラス繊維が焼却炉の炉壁に付着し、冷却時に固化する際、炉壁材料との熱膨張係数の差に起因する炉壁の損傷を引き起こし、焼却炉の寿命を大幅に低下させることから、廃GFRP材のサーマルリサイクルは不可能である。

(3)ケミカルリサイクル

ケミカルリサイクルとは、その名のとおり、廃GFRP材を化学的に処理することにより、不飽和ポリエステル樹脂を原料物質まで分解し、低分子化、液状化させることにより強化材であるガラス繊維を分離回収し、樹脂原料ならびに分離されたガラス繊維を再びGFRPの原料として再利用する方法であり、GFRPからGFRPへの理想的なリサイクル法として注目されている(図1)。

現在具体的な方法として、和歌山県工業技術センター、久保田らのグリコール分解法 *¹や日立化成工業、柴田らの常圧分解法 *²等が考案され、実用化に向けた取り組みが行われている。久保田らは、GFRP用不飽和ポリエステル樹脂を溶媒にエチレングリコール、触媒として水酸化ナトリウムならびにナトリウムエチラートを使用し、温度 240℃,200気圧の高温高圧下で約60時間解重合処理することにより分解すると報告している *¹。この方法では高温高圧下の処理が必要であるため、大型の廃GFRP材への適用は困難であり、不飽和ポリエステル樹脂の常圧下での解重合処理が求められる。

柴田らは、溶媒にジエチレングリコールモノメチルエーテル(DGMM)およびベンジルアルコール(BZA),触媒にリン酸三カリウム(K3PO4)を使用し、温度 190℃、常圧下で8時間解重合処理を行うことによりガラス繊維の分離に成功している *²。

このように、廃GFRP材のケミカルリサイクルは環境と調和した唯一のリサイクル法であり、資源の有効な再利用への道を開くものであるが、実用化には解決しなければならない課題も多い。最大の課題は処理コストがマテリアルリサイクルと比較して高い点である。処理コストの低減には、解重合処理の高効率化、具体的には処理温度の低温化、処理時間の低減化が不可欠であり、現在各方面で処理効率の低減に関する研究が行われている。

参考文献

*¹久保田静男『工業材料 Vol.44』1996年,No.10,p118
*²柴田勝司『日本接着学会誌 Vol.39』2003年,No.6,p226-230
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PlaBase編集部
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