【欧RoHS改正】7月22日からフタル酸エステル規制

欧州連合(EU)の化学物質規制「RoHS」の改正された。2019年7月22日から電子機器へのフタル酸エステル4種の使用が大幅に制限されている。

 2006年に施行されたRoHSは、EU域内で流通する電子機器への有害化学物質の使用を制限した。

 現在の制限物質=鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェニール(PBB)、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)の6種。使用禁止ではないが1000ppm(重量比0・1%以下)までしか含有が認められず、事実上の禁止といえる(カドミウムは100ppm以下)。

 対象製品=家電、通信機器(パソコン、コピー機など)、照明、自動販売機など流通量の多い電子機器。

 

 2006年の施行前「鉛フリーハンダ」の導入をめぐり、産業界は大騒動になった。プリント基板に電子部品を接着するハンダ材料として、鉛は普通に使われていた。接着工程の温度(リフローの温度)、接着性、耐久性などが電子部品の実装にちょうど良く、有用な物質だったからだ。

 しかし、電子機器が放置されると鉛から有害物質が流出して環境に悪影響を与える危険があり、RoHSの規制物質になった。そこで産業界では、鉛がなくても品質を保証できるハンダ材料の開発が進んだ。同時に、鉛フリーが大手電機メーカーとの取引条件となり、サプライヤーが対応に追われた。

 

 

7月の改正後、制限物質となったフタル酸エステルは4種。

  •  フタル酸ビス2‐エチルヘキシル(DEHP)
  •  フタル酸ブチルベンジル(BBP)
  •  フタル酸ジブチル(DBP)
  •  フタル酸ジイソブチル(DIBP)

含有は1000ppm(重量比0・1%以下)まで。

 フタル酸エステルも樹脂を柔らかくする可塑剤として普通に使われている。電源コード、製品内部の電気コードやケーブルが主な用途だ。

 パナソニックは規制が始まる1年前の2018年7月22日、フタル酸エステル4種が使われた製品の納入を停止した。サプライヤーには2016年に期日を伝え、早めに代替物質への切り替えを要請してきた。代替物質はトリメリット酸系(TOTM)やアジピン酸系(DINA)がある。

 東芝、ソニー、NECもフタル酸エステル4種の含有製品の納入を禁止した。2019年1月に納入停止にした富士通、日立製作所も早くから周知してきた。キヤノン、セイコーエプソンなどのプリンター・コピーメーカーも代替素材への採用を呼びかけてきた。

 

 

大手電機メーカーが早くからサプライヤーに周知してきたため、今のところ大きな混乱は起きていない。鉛フリー化の経験が生かされたが、フタル酸エステルならではの対応の難しさもあり、各社の始動が早かった。

 まずはフタル酸エステルには分析に技術的なハードルがある。鉛など現行の規制物質は、製品に入っていると蛍光X線装置で発見できる。フタル酸エステルは他の樹脂に混ざると分析が難しく、高度な検査装置が必要となる。大手電機は調達した部品全量を調査してフタル酸エステルの含有を確認しようとすると、大きな投資が必要となる。そこで大手各社はサプライヤーにRoHS改正を周知し、代替化を求めてきた。

 モノづくりの変化も現行RoHS施行時との違いだ。国内製造業の事業環境が激変し、生産拠点が海外へ移転し、海外メーカーからの調達も増加した。委託生産も当たり前となり、最終製品が完成するまで、いくつもの国をまたいだモノづくりも行われている。

 フタル酸エステルが使われるコード類やケーブル類はほとんどが海外生産だ。しかも日本の大手電機からみると4、5、6次サプライヤーで製造されている。大手電機はサプライチェーンをたどってコード・ケーブル類の生産者を探すのは不効率。直接、取引のある1次サプライヤーから伝言のゲームのように2次、3次へと法規制順守を依頼していくしかない。

 

 

また、海外へサプライチェーンが伸びたため、取引先が勝手に材料を変更する「サイレントチェンジ」への警戒も強まっている。サプライヤーが無断で材料を変更しても気づきにくく、市場で製品が不具合を起こして初めて発覚する。フタル酸エステルは分析が難しいためサプライヤーが勝手に含有させたとしても、発見できずに製品に使う可能性がある。

 大手電機メーカーにとって信頼のできるサプライヤーとの取引が、もっとも有効なサイレントチェンジ防止策であり、改正RoHS対応だ。サプライヤーもしっかりと取り組めば信頼が得られれば、大手電機と取引を継続してもらえる。さらに新規取引先を開拓できるチャンスにもなる。

 

 EUの緊急情報システム「RAPEX」のウェブサイトに化学物質規制違反の摘発情報が掲載されている。EUは常に違反に目を光らせている証拠だ。もし日本メーカーが摘発されれば、EU域内からの商品の回収などで大きな損失となる。ブランドも傷つく。信用できる企業と取引し、信頼のできるサプライチェーンを構築することが産業界に求められる。

sample
PlaBase編集部
PlaBase[プラベース]

これまでカタログや材料メーカー各社のホームページ内に散在していた樹脂(プラスチック)成形材料の情報をPlaBaseに集約しました。 メーカー・樹脂名・物性値など多様な検索方法によって、お客様の目的に合った樹脂成形材料のデータを探し出すことができます。