有機材料強化ポリ乳酸真空成形品の開発(Ⅰ)

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緒 言

グリーンプラスチックは、生分解性や燃焼時の安全性を有するため、環境適応型の工業材料として期待されている。この中でトウモロコシを原料としたポリ乳酸は、大量生産設備が導入され材料価格が大幅に低下したことや、この材料が植物を原料として石油を使用しないことから注目され、新規工業製品開発が加速している。しかし、現状のポリ乳酸を使用した製品は、射出成形品やフィルムを用いた包装資材や農業用フィルムに限られ、大型部品製造に適した真空成形に応用された例は報告されていない。

本研究では、これまで試みられていないポリ乳酸の真空成形について基礎的な検討をおこなったので報告する。今後、従来の石油系プラスチックに比べ、ポリ乳酸を工業材料として使用した場合に問題となる耐熱性や耐衝撃性、耐久性などの向上について、成形技術の最適化や環境調和特性を損なわない複合化手法の点から検討する予定である。

実験方法

1 材料

実験では汎用押出グレードのポリ乳酸(PLA)(ユニチカ製テラマックTP-4000)を使用し、厚さ3mmの真空成形用のポリ乳酸シートを作製した。このシートに関して以下の試験および試作品の成形をおこなった。

2 熱特性試験

材料の熱的な性質の把握と真空成形条件に関する基礎的なデータを得るため、熱特性の評価をおこなった。実験では、ポリ乳酸シートから矩形試験片(180×45×3mm)を切り出し試験に供した。材料試験機(インストロン製インストロン5567)を用いて、スパン間距離135mmで一定の3点曲げ荷重(0.45N、22.5N、45.0N)を試験片に加えながら、装置付属の恒温槽を用いて室温から10℃/minの速度で恒温槽温度を上げ、変位が30mmに達するまでの試験時間と変位の関係を求めた。なお、市販アクリルシートとポリ乳酸シートを110℃で6hのアニール処理をおこなったものについても同様の試験をおこない比較した。

3 真空成形

ポリ乳酸シートを用いて箱形成形品を試作した。

4 曲げ試験

ポリ乳酸シートおよび成形品から矩形試験片(80×10×3mmまたは2mm)を切り出し、材料試験機(インストロン製インストロン5567)を用いて、JIS K7171により3点曲げ試験を行った。

結果および考察

図1に真空成形用ポリ乳酸シートの熱特性試験結果を示す。図中の温度は、試験荷重において変位が30mmに達したときの試験槽温度である。今回用いたポリ乳酸は、荷重たわみ温度が59℃でありその付近にガラス転移温度が存在する。試験結果を見ると、いずれの試験荷重においても試験槽温度の上昇とともに急激に試験片の軟化が起き、変位30mmの試験槽温度は68~75℃となった。また、試験荷重が高くなると低い試験槽温度で軟化が起きることがわかる。

一方、図2に示すアクリルシートでは、試験荷重が高い場合には、軟化が起き始める温度はポリ乳酸と大きく変わらないが、その後の変位の上昇はポリ乳酸に比べて小さく、変位30mmの試験槽温度も97~125℃とポリ乳酸に比べて高く、温度幅も広くなった。

また、アニール処理をおこなったポリ乳酸シート(図3)はアニールしないものに比べ、軟化による変位の上昇が緩やかになり、アクリルシートに近い特性を示すようになった。特に、試験荷重が小さい0.45Nでは、163℃(試験時間14分)においても大きな変位の上昇が見られなかった。これはアニールによってポリ乳酸の結晶化が進んだため、結晶の融解温度(170℃)近くまで形状を保持できたものと考えられる。

これらのことから、真空成形において、ポリ乳酸は他材料に比べて比較的低い温度でシートの軟化が起きること、軟化によるシートのたれも大きいことが予想される。また、アニールしたポリ乳酸シートの結果から製品の耐熱性を向上させるためには、ポリ乳酸の結晶性を高める成形条件が有効であることがわかる。

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【図1 ポリ乳酸シートの熱特性試験結果】

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【図2 アクリルシートの熱特性試験結果】

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【図3 アニールしたポリ乳酸シートの熱特性試験結果】

(アニール条件:110℃-6h)

図4に試作した真空成形品(箱形深絞り製品)の外観を示す。金型は絞り深さが長辺の1/2程度あり底面の角もある形状だが、温度条件などを考慮することにより成形品を得ることができた。

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【図4 箱形深絞り製品の外観】

表1にポリ乳酸シートおよび成形品の曲げ試験結果を示す。曲げ弾性率は試験片により大きな違いは見られないものの、最大応力はポリ乳酸シート、試作品、アニールしたポリ乳酸シートの順で高くなった。これは成形やアニール時の加熱によりポリ乳酸の結晶化が進み最大応力が高くなったものと考えられる。この結果からポリ乳酸は、熱履歴によって結晶化が進むことと、製品の強度を向上させるためには、結晶性を高める成形条件が有効であることがわかる。

表1 曲げ試験結果

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まとめ

ポリ乳酸を大型工業製品分野に展開するため、ポリ乳酸の真空成形技術について、材料の熱的な性質や力学的な性質から検討したところ、ポリ乳酸は他材料に比べて比較的低い温度で成形用シートの軟化が、軟化によるシートのたれも大きいことが予想された。また、製品の耐熱性や強度を向上させるためには、ポリ乳酸の結晶性を高める成形条件が有効であることがわかった。

「謝辞」

研究に関して多くの助言をいただいた富山県立大学川越教授に感謝いたします。実験に協力いただいた、(株)日本成工、ユニチカ(株)、(株)セコン三木の各社に感謝いたします。 この記事は、富山県工業技術センター研究報告No.19(2005)に掲載された内容を編集したものです。


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PlaBase編集部
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