有機材料強化ポリ乳酸真空成形品の開発(Ⅱ) ―ポリ乳酸の真空成形技術の最適化―

緒 言


前回では、これまで試みられていないポリ乳酸の真空成形について基礎的な検討をおこない、ポリ乳酸は成形時に他材料に比べて比較的低い温度で成形用シートの軟化が急激におき成形条件が制限されること、製品の耐熱性や強度を向上させるためにはポリ乳酸の結晶性を高める成形条件が有効であること等の知見を得た。

今回は、グレードを変えたポリ乳酸シートを用いて真空成形を行い、成形技術の最適化について検討を加えた。

実験方法


2.1 材料

実験では、汎用押出グレードのポリ乳酸(PLA)(試料A.ユニチカ製テラマックTP-4000)と耐熱グレード(試料B.ユニチカ製テラマックTE-7000)、溶融特性改良グレード(試料C.ユニチカ製テラマックTE-6000)の3種の材料を用いて厚さ3mmの真空成形用のポリ乳酸シートを作製した。このシートに関して以下の試作品の成形及び評価をおこなった。また、シートには繊維染色用大型インクジェットプリンタ(ミマキエンジニアリング製GP-1810)を用いて図1に示す方眼を書き入れ成形性評価の指標とした。

【図1 真空成形用シート】

 

2.2 真空成形

前回と同様に箱形成形品を試作した。

 

結果および考察


試作した成形品を見るとシートによって成形性が違い、試料Aが最も成形性がよく、他の材料は製品形状が出なかった(図2)。また、成形条件と評価結果を表1にまとめた。図2に示すように、成形不良は箱形形状の4隅が金型に密着しないまま固化する場合が多く、この傾向は試料Cで最も顕著になった。今回、耐熱性など製品性能の向上を目的として各グレードの成形を試みたが、汎用グレードの成形性が優れる結果となった。これは、TP-4000に比べ、TE-6000、TE-7000は耐熱性などを向上させるため、種々の配合がおこなわれ結晶化速度が速くなっており、このために成形途中にシートが結晶化、固化した結果、延伸性が失われ賦形できなくなるものと考えられた。また、試作により成形時に使用するシートの大きさを大きくして、シート保持治具の影響を小さくすることにより、成形時のシートの延伸を起き易くし成形性を改善することができる可能性も示唆された。

【図2 箱形成形品の成形状態】

上:試料A、下:試料B(手前の隅がゆがんでいる)
【表1 各シートの成形性評価結果】

表2に成形品を長辺で2分して底面の中央と角付近の厚さを測定した結果を示した。成形できた試料Aは肉厚が薄く、他の試料では厚くなっている。試料Aは延伸性が高いため成形時に引き延ばされ肉厚が薄くなるものと考えられる。また。図3は成形できた試料Aの成形品の肉厚と方眼の延伸から求めた厚さ率と延伸率の関係を求めたもので、図4は図3の結果をもとに断面の厚さ率と延伸率分布をグラフ化したものである。試作品の形状では、底の部分が強く延伸され肉厚が薄くなり、特に底の周辺部の肉厚が最も薄く延伸率が高い結果となった。この結果は、成形時に観察されたシートの変形と金型への接触部分の変化から推定できる結果と一致していた。

【図3 箱形成形品断面の厚さ分布】

上:長辺の断面、下:短辺の断面

【表2 成形品底面の厚さ測定結果】

【図4 箱形成形品の断面の厚さ率と延伸率分布】

上:長辺の断面、下:短辺の断面

まとめ


ポリ乳酸の真空成形技術を最適化するため、グレードを変えたポリ乳酸シートの真空成形について検討をおこなった。その結果、耐熱性グレードや高流動性グレードに比べ、汎用グレードの成形性が優れていた。この成形性の違いは、軟化したシートの延伸性と固化速度の関係によるものと推定された。

 

「謝辞」

研究に関して多くの助言をいただいた富山県立大学川越教授に感謝いたします。実験に協力いただいた、(株)日本成工、ユニチカ(株)、(株)セコン三木の各社に感謝いたします。

この記事は、富山県工業技術センター研究報告No.20(2006)に掲載された内容を編集したものです。

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PlaBase編集部
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