ナフサレポートVol.3

ナフサ価格の仕組み

*国産ナフサ価格とは


前回までのコラムでは、「ナフサとはナニモノなのか」、そして「日本の石化製品がなぜナフサに連動するのか」について解説してきました。今回は、日本の石化製品が連動する国産ナフサ価格の仕組みについて紹介します。

国産ナフサ価格の変動に従って国内の石化製品は上下しますが、この国産ナフサ価格の仕組みについて詳しくない方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。この機会に理解を深めてもらいたいと思います。国産ナフサ価格とは、以下の公式によって決定される価格です。

日本の輸入平均単価(キロリットル(kl)当たりのMOF価格:円)+2000円(kl当たり)=国産ナフサ価格

日本に輸入されるナフサ価格に対して、1kl当たり2000円(輸入後にタンクで貯蔵したり、パイプラインを使用したりする際に発生する費用)を足した価格が国産ナフサ価格となります。この2000円を足す前の輸入単価のことを「MOF価格」と呼びます。MOFとは財務省の英文表記「Minister of Finance」の頭文字を取ったもの。日本の輸入価格は財務省が毎月末に発表する貿易統計で算出することが可能なことから、そのように呼ばれています。例えば、2019年3月のMOF価格は以下のように計算されます。

輸入金額(890億925万2000円)÷輸入数量(224万274kl)=3万9731円/KL
≒3万9700円/KL(十円以下四捨五入)

日本の貿易統計は毎月月末頃に公表されます。当月分の公表タイミングは翌月末頃で、財務省貿易統計のWebページにアクセスすれば誰でも確認できます。なお、四半期の国産ナフサ価格は3カ月分の輸入金額を同じく3カ月分の輸入数量で割り戻して算出されます。例えば2019年4~6月(2Q)の国産ナフサ価格は以下の通りとなります。石油化学業界で「ナフサリンク」と言われる価格改定方式はこのQ(四半期)ベースの価格を前提に、変動していく方法が一般的です。

2019年4~6月輸入金額(2570億9316万2000円)÷4~6月輸入数量(592万8963kl)=4万3362円(kl当たり)≒4万3400円/KL(十円以下四捨五入)+2000円/KL
=4万5400円(kl当たり)

このように4~6月(2Q)の国産ナフサ価格はkl当たり4万5400円決着しましたが、これは1~3月(1Q)の国産ナフサ価格(kl当たり4万1200円/KL)に比べると4200円(kl当たり)高値となります。この値差分がナフサリンクの場合、自動的に値上がりするかたちとなります(オレフィン系誘導品であれば、通常4200円×2÷1000=8円(kg当たり)分値上がり)。

貿易統計は原則として輸入通関数量、価格を前提に決定されます。翌月末に判明するデータは速報値として公表され、2カ月後の月末に確報値が発表されます。基本的にはナフサ船が着桟し、陸側のパイプラインと接続されるまでに発生した価格が課税金額の対象となることから、輸入通関を申告するまでに金額が確定しない滞船料(荷揚げ地で船を待たせた際に発生する料金)などの費用については、通関後に追加で修正申告をすることとなります。そのため、確報値はほとんどのケースで速報値よりも小幅ながら上方修正されます。

上記2Qでは、Q終了月である6月の翌月末に発表される6月の貿易統計速報値をもって、価格が決定されます。本来であれば8月末に6月の確報値を待ってから決定されてもいいはずですが、2Qの国産ナフサ価格をベースとした取引が8月末まで確定しないというのは商慣習上問題があることから、7月末の速報値ベースでフィックスされています。なお、4Qは12月分のみ確報値が存在しないことから、3月中旬に発表される前年1~12月分の確定値によって確報が代替されます。過去にこの速報値ベースの国産ナフサ価格と確報および確定値ベースの国産ナフサ価格が異なったのは、2016年4Qの1回のみ。確定値ベースで算出された国産ナフサ価格が速報ベースよりも100円(kl当たり)高くなりました。しかし、取引の決済は全て終えていたことから、この100円分の清算を実施する会社は極めて少なかったようです。

*MOF価格の予想


国産ナフサの算出方法は以上の通りですが、ではこれらをどのように予想しておけばよいのでしょうか。kl当たり2000円の部分は固定であることから、MOF価格の部分のみが予想の対象となります。MOF価格は日本の石油会社や石油化学会社が輸入した金額から算出され、輸入ナフサはアジア相場(C&F JAPAN、日本到着価格)にリンクした形で調達されることから、MOF価格もアジア相場に連動することになります。このアジア相場はシンガポールにて、土日やシンガポールの祝日を除いて毎日日本時間の夕方に開催され、ナフサ1トン当たりの金額がドルではじき出されます。このアジア相場はだいたい2カ月から2カ月半後に到着する価格を示していますので、毎日のアジア相場をチェックしておけば、今後のMOF価格、国産ナフサ価格もある程度予想できるということになります。

厳密にいえば、MOF価格は毎日のナフサ相場(ドル/トン)に、プレミアムと呼ばれる需給バランス見合いで調整される加算金と諸費用(滞船料や保険金など)を加算した価格となりますが、下表に示した通り、このプレミアムと諸費用はごく僅かであり、全体の3%程度にしかすぎません。ざっくりと今後のナフサ価格を見る程度であれば、毎日のアジア相場に10~20ドル程度加算した数値で認識しておいておけば問題ないでしょう。

前回の連載記事で紹介した、無料メルマガ(当社が会員様宛に毎朝時点のナフサ価格を連絡しています)に登録しておくのも、一つの手段かと存じます。


※貿易統計によって公表されるのはキロリットルないしはトン当たりの日本円金額となることから、ドルへの換算は通関為替で算出しています。そのため、実際のドル単価とは異なる可能性はあります。

一方、MOF価格を+-1000円(kl当たり)の範囲で、ある程度正確に予想するためには日本の石油、石油化学会社がどんなナフサをいくらで調達しているのかを把握しなければなりません。本連載の1回目で掲載したように、ナフサと言ってもさまざまな品質のものがあり、積地によって大きく異なります。統計学的分析のみで予想した数字は年に1回程度、「大はずし」をします。ナフサを使用する装置のトラブルに伴う輸入船の後ろ倒しなど、特殊な条件を織り込んでいないからです。ですから、当社ではナフサの仲介取引をする中でさまざまな情報を得ながら、統計学的分析に対してさらに手を入れた上で、入着するナフサの数量と金額、輸入比重をヒアリングし、細かく予想しています(当社の有料レポートで閲覧可能です)。

これまで3回にわたってナフサの基礎を解説しました。次回からはアジアのポリオレフィン相場について、中国国内相場との関係から紐解いていきます。

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PlaBase編集部
PlaBase[プラベース]

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