コロナウイルス騒ぎなどで原油とナフサが大幅下落!10年に1度の危機か――ナフサレポートVol.4

今回の記事は…
新型コロナウイルス騒ぎの影響の他、産油国間の協調減産体制が崩壊したことで、ナフサ価格も原油価格も大幅下落。「10年に1度の危機」ともいえる状況に陥っている市場について、詳細に解説する。

 

原油とナフサ価格が大幅に下落し、ナフサは2002年ぶりの安値を付けている。新型コロナウイルス(コビット19)騒ぎの影響による需要減の他、産油国間の協調減産体制が崩壊し価格戦争に陥ったことにより、原油の需給が大幅に悪化した(供給過多となった)ことが要因だ。

国産ナフサ価格はこのままいくと第二四半期(2Q:4~6月)には2万円台となり、2003年ぶりの安値となる可能性がある。世界で今何が起きているのか、10年に一度の危機が発生している今だからこそ、立ち止まって少し詳しく知っておく必要があるだろう。

急速に下落し続ける原油とナフサ価格

2020年3月5~6日に行われた石油輸出機構(OPEC)総会は市場参加者にとって「まさか」の連続だった。元々新型コロナウイルス騒ぎによる需要の減速が懸念されるなか、サウジアラビアが示した追加減産案をロシアが拒否した上に、これまで供給を減少させることにより石油需給の安定を支えてきたOPECプラスの減産について何ら合意はなく、4月以降の生産制限がなくなってしまった。

さらに、サウジアラビアは早々に販売価格の大幅な値下げを表明し、日量1200万バレルを超える増産(2月の生産量は日量968万バレル)を実行していくことを表明した。これを受け、原油相場は以下のグラフに示した通り、6日から週末をはさんでバレル当たり約15ドルも下落。ナフサ相場は自動的に1 ドル当たり約100ドルも値を下げた。

ブレント原油とナフサ価格の動き(2月24日~3月19日) 出典:ICE、Amerex Energy Com

その後、新型コロナウイルス騒ぎの影響により石油需要がマイナス成長になる見通しが国際エネルギー機関や金融大手から出され、需要の減速を背景に相場はさらに下落。足元(2020年3月19日時点)は原油が北海ブレントでバレル当たり25ドル、ナフサは1トン当たり210ドルの安値を付けている。米金融大手は2Qのブレント原油価格予想を一時20ドルへと引き下げた。

2016年12月にロシアも含めた協調減産の枠組みが整備されて以降、3年超もの間、想定需要量に合わせるかたちで供給を減少させることにより、OPECは世界の石油需給均衡に努め、相場を安定させてきた。相場が下落すればOPECプラスが減産をするという構図は、もはやマーケットの共通認識となってきた。これまでサウジアラビアを中心としたOPECが減産をした分は米国シェールオイルがシェアを伸ばした。

サウジアラビアが減産にこだわるのはなぜか

そもそもなぜサウジアラビアがこれほどまでに減産にこだわってきたのか、減産体制が崩壊したいまだからこそ見えてくる。

1つ目の理由は、承知の通り原油価格の引き上げだ。米国との増産合戦に伴いドバイ原油が30ドル台で推移した2016年前半は、産油国の財政が悪化したことから、その教訓を生かして積極的に減産を実施した。協調減産開始前の2016年12月のサウジアラビアの産油量は日量1045万バレルだったところから、直近の2020年2月は日量970万バレルへと減少している。

仮に減産をしなかった場合、相場は35ドル近辺だったことから、1日当たり3億5575万ドルが原油販売収入となる。しかし、減産を実施したことにより相場は約60ドルまで持ち上げられ、原油の生産量を減らしても1日当たり5億8200万ドルもの原油販売収入へと引き上げられた(減産分の原油生産コストも浮くことから、収益はさらに良化する)。

単純に1日当たりの収入増(2億2625万ドル)を年で換算すると825億8125万ドルとなる。この莫大な増益分はオイルマネーとして、株式や不動産開発、次世代事業などへと流れ、世界経済を支えてきた。

2つ目の理由は、原油生産第2位のロシア(1月の産油量は約日量1130万バレル)と手を結べた点だ。米国のシェールオイルは野放しにしても生産の限界が出てくることをサウジアラビアは想定していた可能性がある。そのため、毎年日量100万バレル程度増加する石油需要を米国だけでは支えきれないと見切っていたのではないだろうか。

そのため、OPECプラスの減産体制は米国以外の最大のライバルであるロシアの「抜け駆け」を防止する格好の仕組みだったと言える。

ロシアのプーチン大統領はOPEC総会の前日に42ドル水準でも十分採算が合うことを説明し、追加減産には慎重な立場を取っていた。これまで3年に及ぶ減産体制に対して、エネルギー企業からの圧力もあり、今回の追加減産は飲めないという姿勢を暗示していた。実際OPECプラスの会合では追加減産について破断に終わり、OPEC主導での減産体制が示される期待が残った。

しかし、実際はOPEC主体での減産も明示されなかった。サウジアラビアが減産をしないということは、つまりOPECが減産をしないことだからだ。OPEC生産量の約35%を占めるサウジアラビアが減産しなければ、自助努力だけで需給を支えることはできないため、周辺諸国にとってはサウジの決定を傍観するほかない。

ではサウジアラビアがなぜここで減産を表明しなかったのか。それは前掲の協調減産に参画した理由の2つ目に関連すると推察される。原油生産量世界第2位のロシアが開発、増産を進めれば、必然的にサウジアラビアの産油量はさらに減少するほかない。本来、最も競争力あるコストで生産できるサウジアラビアが、なぜ高コストな米国やロシアの増産を見過ごし、粛々と減産を進めるのか、その先にあるのは永遠にシェアの縮小だけではないのか。

そういった疑念がサウジアラビア内であったと推察できる。これまでは米国のみだったが、今後はロシアも増産可能となることで、もはや協調減産にくみする意味がなくなってしまったと言える。「市場原理に従えば生き残るのは我々だ」というサウジアラビアという強い意志が今回の減産体制崩壊を導き、そして、原油相場は2016年ぶりに産油国間の価格戦争へとシフトした。

逆境となる米国のシェールプレーヤーの動きは

これによって一番初めに打撃を受けるのは米国シェール勢だ。これまでの原油相場を前提に油井探査、掘削、増産を図ってきた石油会社は投資計画の抜本的な見直しを余儀なくしている。シェブロンフィリップス、マラソンオイル、オキシデンタルペトロリアムら米国大手石油会社は10日、投資を縮小し増産計画の見直しを発表。資本力のあるそれらの会社は、石油精製や石油化学事業を一貫で運営しており、投資の縮小で今回の逆風に対処することが可能だが、中規模のシェールプレーヤーはただでさえ昨年後半から資金繰りが難しくなってきた中で、今回の変動が致命傷となる可能性は大きい。2020年度の債務償還が困難になることは必至だ。

既にシェールオイルは今年後半から来年前半でピークアウトするとの論説が目立っており、主要石油需給調査機関や米国大手金融機関は、相次いで米国の原油生産量を下方修正した。サウジアラビアとしてはそこまで見抜いた上で、今回増産へかじを切ったと思われる。

今後、サウジアラビアとロシアが再び協議の場につく可能性は当然あるだろう。しかし、何かしら新たな枠組みがない限り、両社のプライドがぶつかることにより、再びの減産合意は困難を極めるものと想定される。両国は現時点で増産以外の明確なシグナルを市場に提供していない(18日に予定されていたビデオ会議は中止となった)。

2020年6月9日、10日に再びOPEC総会、OPECプラスの会合が開催されることから、その前後で新たな展開が想定される。米国は、これまで安価な油価は石油産業にとってマイナスだが、それ以上に大切な自動車産業や全体の景気にプラスに働くことから、安値な原油価格に対して何か対処することはなかった。

しかし、シェールオイルが米国にとって重要な産業の一つとなり、トランプ大統領も「エネルギー大国としての米国」を国民にアピールしてきた中で、この状況を放置するとは考えづらい。共和党にとって極めて重要なテキサス州の景気悪化も大統領選を前にして何とか対応しなければならない事案の一つとも言える。

そのような観点から、トランプ大統領は原油相場を支えるために戦略的備蓄の積み増しを発表したが、足元の供給過多のバランスを変えるほどのインパクトはない。「原油相場は安すぎても国益を損なう」との結論を出したうえで、米国がロシアやサウジアラビアに何らかの働きかけをするのか、動向が注目される(19日米国時間にトランプ大統領は「適切な時期に」介入をした上で、「中間的な地平を模索する」と発言。米国は初めて原油が安すぎても困るということを正式に表明した)。

このまま価格戦争が続けば、OPEC存続の危機も

このままいくと、サウジアラビアは原油収入が減少することにより、1年前に発表された大規模投資計画、成長戦略は大幅に下方修正を余儀なくされる。また、イラクやアルジェリアをはじめ他の産油国は足元の原油相場の下落に強い不満を抱いており、このまま価格戦争を続ければOPECそのものの解体へと帰結しかねない。

さらに、オイルマネーの不在による世界経済全体への悪影響もたびたび指摘されている。国際協調を主眼に置く主要7カ国首脳会議(G7サミット)は2020年7月に初めて中東で開催され、その議長国はサウジアラビアとなる。このG7が開催されるまで、サウジアラビアが足元の国際協調とは程遠い状態を放置するというのはやや疑問に感じる。そういった意味で、6月のOPEC総会ではロシアとサウジアラビア間の雪解けがあってもおかしくない。

過去のブレント原油価格の推移 出典:ICE

原油相場は幾度の荒波を超えて推移してきたが、2005年以降で20ドル台を付けたのは今回を除いて2016年のみとなっており、期間は1カ月以内に留まっている。

米国、ロシア、サウジアラビアの動きに要注目

今回、新型ウイルス拡大による需要への影響が深刻となっていることから、安値の状態が長引きそうだが、6月のOPEC総会を前に、米国、ロシア、サウジアラビアの動向からは目が離せない。原油相場はトランプ大統領就任後、高値のガソリン相場をけん制してサウジアラビアに増産を要請するなど、政治色が極めて濃くなってきた。政治は米国大統領選が今秋ひかえている。トランプ大統領が中国との通商交渉に続いて、原油に関する「ビッグディール」が締結できるかどうか、注視される。

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PlaBase編集部
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