これからの自動車開発におけるCFRPの役割:自動車開発とCFRP(1)

この記事は…
自動車業界でのCFRPの活用について解説する本連載。第1回は、CFRPが業界で注目されている理由と、期待されている効果について説明します。

 

自動車業界では炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を中心とした樹脂材料に注目が集まっています。CFRPは高価なので、まだ業界の中で広く採用が進んでいるわけではありません。例えば、トヨタ自動車は、高級車の「レクサスLS」や、環境対応車の「プリウスPHV」で採用しています。

今回は、なぜ今、CFRPが自動車業界で注目されているのか、どのような効果が期待されているのかを解説します。

自動車業界の抱える課題


100年に一度の大変革期を迎えている自動車業界には、さまざまな課題があります。CFRPに関係するところとしては、以下の2点が挙げられます。

・安全性能の向上
・環境性能の改善

それぞれ、世界各国の法律によって規制が厳しくなり、ユーザーが自動車を選ぶ際の基準にも大きく関わっています。

安全性能の向上

自動運転の実現に向けて、センサーやカメラを活用した周辺環境の認識や、その情報に基づいたブレーキ機能の拡充など安全機能が開発されています。一方で目に見えない部分では、衝突時の安全性能向上を実現してきました。

実際に衝突が起きてしまった際、これまでも乗員や衝突した相手を守れる安全性は確保されてきましたが、その機能実装の代償として自動車本体の重量が増加しています。重量の増加に比例して自動車を動かすために必要なエネルギーも増加するため、環境性能の悪化という新たな問題につながってしまいます。

環境性能の改善

地球温暖化は国際的な会議で問題提起されるなど、世界規模の課題になっており、特に自動車の排出ガスが大きな影響を与えているといわれています。世界各国で自動車の排出ガスに関して法律で厳しく規制されるようになり、自動車メーカー各社は対策に力を注いでいます。

各国では、下記のような施策が取られています。これらの基準は年々厳しくなっています。

  • 販売する自動車の平均燃費が一定以上でないと自動車の販売ができない
  • 燃費の良い自動車ほどユーザーが支払う税金を優遇する

環境性能改善に向けたアプローチ


自動車メーカー各社は、特に環境性能改善に向けてさまざまなアプローチを取っています。以降では、効果が大きいとされる代表的な2つのアプローチについて説明します。

次世代の動力源開発

1つ目は従来のガソリンやディーゼルに変わる次世代の動力源開発です。既にガソリンエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド(HV)車両は広く普及していますが、他にも燃料電池自動車(FCV)、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド自動車など(PHV、もしくはPHEV)などが開発されています。

これらはまだ新しい技術であり、普及が十分に進んでいないため高価ですが、今後も税制面の優遇や普及によるコスト低減が進むことで、普及していくことが期待されます。

車両全体の軽量化

続いて、車両全体を軽量化することで、必要なエネルギー量を減らすことです。例えば車体に使用する金属をより薄くしたり、金属よりも軽い樹脂などを用いたりする方法が考えられます。動力源の開発と組み合わせることで、さらに燃費の向上が期待できます。

CFRPなど樹脂材料に対する期待

特に環境性能の向上は各国の法律で規制され始めているため、確実な実現が必要です。そこで、金属よりも高剛性で、しかも軽量なCFRPなど樹脂材料に注目が集まっています。金属の加工や溶接では実現できない先進的な形状の実現や、金属の代わりに使用することで、強度を保ちながら車体を軽量化することが期待されています。

期待高まるCFRPには課題も

自動車業界では安全性や環境性能の向上に対して法律での規制が入り、大きな課題となっています。

各社が次世代動力源の開発や軽量化など対策を取っていますが、その中でCFRPは金属の代替材料としての役割が期待されています。しかしCFRPを自動車に採用することは、簡単ではなく、さまざまな課題があります。

次回以降の記事では、CFRPの特徴や自動車での採用例、CFRPを採用する際に検討が必要な課題について紹介します。(次回へ続く)

プロフィール

一之瀬 隼(いちのせ・しゅん) 自動車部品メーカーの現役エンジニアとして、先行開発から量産展開まで幅広い業務を経験。産まれたばかりの子供の成長を楽しみながら、エンジニアとライターの活動両立に苦戦中! 趣味は旅行(海外も国内も)と美味しいものを食べることと、学ぶこと。

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PlaBase編集部
PlaBase[プラベース]

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