【第6回】NSD(Non Skin Decoration):プラスチック加飾技術

今回の記事は…
プラスチック加飾技術について紹介する連載の第6回。今回は、NSD(Non Skin Decoration)について説明する。

(執筆:桝井捷平/MTO技術研究所 兼 加飾技術研究会)

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NSD(Non Skin Deoration)

近年、成形品に特別な表面層を付与せずに、成形材料、成形金型、成形技術で表面外観を向上させる技術「NSD(Non Skin Decoration)」が加飾技術としての認知度が高くなりつつあり、注目されている。

着色加飾

最近の展示会では、自社商品のうち特徴のある樹脂などに着色材を配合した高外観原着材料およびその成形品の展示が多くなった。これらは、比較的低コストで実現できる塗装代替加飾として注目されている。自動車の内装、通信機器筐体、化粧品容器などに使用されている。さらに、自動車の外装への適用も広がっている。

代表的な例を図4-1に示す。

【 図4-1 原着樹脂による成形図 】

図上左に示す三菱ケミカルのバイオPCデュラビオの着色品(4-1)が最も代表的なもので、自動車の内装部品に続いて、自動車外装部品としても採用が始まっている。その他、三菱エンジニアリングプラスチックス(4-2)、ユニチカ(4-3)、ロンビック(4-4)といったメーカーが、特徴のある原着材料を供給している。

着色加飾において、図4-2に例を示すように、「着色材と成形技術の組み合わせによる着色」である多材質(多色、多層)成形、混色成形などがある。多材質(多色もしくは多層) 成形の技術としては、一般的な2色成形の他、ステッチ部のみを他の色にしたもの、あるいは特殊2色成形、ソフト材とハード材を組み合せたもの、さらには2種ではなく多種の色や材料を組み合わせたものなどがある。

混色成形は、旭電器工業(4-5)などが行っており、2本の射出シリンダからの樹脂をノズルヘッドでコントロールして混合して射出することで、図の下中のようなパターンが形成された成形品が得られる。

【 図4-2 着色と成形技術の組み合わせ成形品例 】

その他、基材もしくは繊維を着色して、カーボンファイバー(CF)の織物柄を生かした成形品、さらに、膜厚を変化させることで、各種の発色をさせることが可能なスパッタリングによる着色品がある。

デジタルシボ

NSDの技術として、もう1つ注目されるのは、デジタルシボ「D3テクスチャー」である。

従来、金型のシボ加工は腐食液を用いたエッティングが用いられてきた。D3テクスチャーは、デザイナーが考案したシボの3次元データ、もしくは自然物の表面を三次元スキャンして作成する3次元データを用いて、金型表面を機械加工(切削加工)やレーザー加工して金型表面にシボを施す。

これは図4-3に示すように、金型表面のシボ形状の掘り込み深さや、角度、さらにパターンを正確にコントロールして、文字表現、ザラメ状表面、指紋付着防止、色目を変えた柄表現などが行われている。フィルム貼合や印刷などとの組み合せることもある。欧州では、自動車の内装部品にも採用が進んでいる。

【 図4-3 機械・レーザー加工シボ成形品例 】

金型表面高品位転写成形(High Quality Transfer、HQT)

NSDの第3の技術として、金型表面を成形品に忠実に転写させる技術である「金型表面高品位転写成形(High Quality Transfer、HQT)」がある。

従来の射出成形では、溶融樹脂を高圧で金型に射出して成形するので、マクロ的には金型表面を転写した成形品が得られる。しかし、射出された溶融樹脂は金型内で冷却されスキン層を形成しながら金型表面に接触するので、通常、ミクロ的には十分な転写が行われず、表面状態の品質が不十分な成形品が得られる場合が多い。

HQTの使用で、鏡面金型では、高光沢の成形品、シボ金型では、金型のシボをほぼ100%転写させた成形品が得られる。高品位転写を行う方法として、「樹脂充填過程での対策」と「賦形直後の対策」に大別される。通常は前者のみを対象とすることが多い。

樹脂の充填過程のみで金型表面温度を高く保つことで、成形サイクルを著しく長くすることなく、高品質な外観品が得られる。

代表的な例を、図4-4に示す。(RocTool4-6)の内部インダクター電磁誘導加熱法は、金型の昇温速度が速く、高温設定が可能で、世界的に使用され、最近では、図4-4の右上に示すように、炭素繊維複合熱可塑性樹脂(CFRTP)の外観向上成形に使用されている例が多く示されている。

【 図4-4 金型表面高品位転写 】

また、金型表面を微細加工し、本技術を用いることで、構造色加飾が行えることも示されている。金型の加熱手段としては、ヒーターを用いてもよい。図左上に山下電気(4-7)の「Y-Heat」の成形工程、金型、ヒーター構造を示す。その他、旭電器工業(4-5)などが金型設計、成形条件などの工夫で特別な装置を使用せずに、ウエルドレスメタリック成形品を得る技術を開発している。図の右下に成形品例を示す。

参考文献


4-1) 三菱ケミカル(株)
https://www.m-chemical.co.jp/products/departments/mcc/sustainable/product/1200363_7166.html
4-2) 三菱エンジニアリングプラスチック(株)
https://www.m-ep.co.jp/ja/eve/22-1.html
4-3) ユニチカ(株), ものづくりパートナー2014
4-4) ロンビック(株), 名古屋プラスチック,工業展2015
4-5) 旭電器工業(株)
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20120306/207551/
4-6) RocTool http://www.roctool.com/index.php
4-7) 山下電気(株)
http://www.yamashita-denki.co.jp/product/plastics/weldless/weldless01.html

著者


MTO技術研究所 兼 加飾技術研究会 桝井捷平

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PlaBase編集部
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