手段としてのモノでなにを伝えるのか:金沢のクリエイター集団seccaインタビュー【前編】

この記事では…
デザインをキーワードにこれからのモノづくりについて、金沢のとあるクリエイターの方から、お話を伺いました。

(執筆:北村さくら/PlaBase編集部)

プラスチック材料の情報を集約しているこのPlaBaseは、さまざまな立場でプラスチック業界に関わる方々にご利用いただいています。その中でも多いのは、やはり製造業(モノづくり)に携わる方々です。そんなモノづくりと切っても切り離せない関係にあるのが、デザインの分野。

今回は、石川県金沢市を拠点として、体験価値を大切にしたプロダクトデザインに携わる、secca inc.(株式会社 雪花/以下secca)代表取締役の上町達也氏にお話を伺いました。インハウスデザイナーという前職を経て、現在の活動に至った思いと、これから目指すモノづくりやデザインの形はどのようなものなのでしょうか。

――以前は、大手メーカーでプロダクトデザインを担当されていたのですよね。

カメラメーカーで、主に新規企画の開発を担当していました。7年間、精神的にも100%コミットして走り続けましたね。

――そこから、どのように今のお仕事の形になっていったのでしょうか。

あくまで当時の話ですが、ある新しいカメラの開発を4年半かけて行った後に抱いた、ある感覚がきっかけの1つでした。「4年半の開発期間」というと、自動車と同じレベルで、カメラとしては長い方です。それだけの時間を使って、「カメラを通してどういう体験を届けたいのか」というところから皆で熱く丁寧に議論して製品を作り上げました。そして、いよいよそのカメラが世に出るタイミングで、既に1年後の値崩れに備えたマイナーチェンジの検討が始まっていました。このことに、大きな違和感を覚えましたね。

――確かに、毎年モデルチェンジが行われる家電も多いですよね。

これには、日本のメーカーとディーラーの関係性にも原因があって、商品サイクルが価格競争に飲まれている、という現状があります。でも、価格を維持するために、外側をいかに変えるかというところばかりに力を注いでいては、ユーザーの体験価値を高めたり、そもそもの商品性能を上げるための開発が追いつかない。そうなると、結局他の会社でもできるものになってしまうし、そもそも皆の士気が下がる。

――その違和感を解消するために、起業したということですね。

そのまま在職しつづけて「デザイナーとして経営陣にまで上り詰めてその流れを変える」という選択肢も当然考えましたが、それを待つのではなくて、「自分でできることからやり始めよう」と考えました。同時に、衣食住といった人の営みの根幹部分がおろそかになりすぎているし、それが価値交換のセンスを鈍らせる原因の一つかも、と感じていたこともあって、クリエイターとしてそういう部分に関わりたいと考えていたし、中でも「食」に可能性を感じていました。

――今日のseccaが器を多く手掛けていることは、そこに由来するのでしょうか。

そうです。単にモノを売るだけの時代ではなく、「そこからどういう体験を得られるのか」に価値があると思っています。「その手段としてのモノ」と見た時に、料理人さんと組むことで、僕たちらしいやり方で食に関わり、「体験を届けるモノづくり」ができるのではないかと考えました。

――seccaが手掛ける器には、積極的にプラスチックが使われていますよね?

自分自身では「積極的に」という感覚は全くなく、むしろ逆かもしれません。

――逆、とはどういうことでしょうか。

使用する素材に、積極的も、消極的もないということですね。偏ることなくフラットな状態で対象となる製品を取り巻く全体像を見て、そのモノにとって、最適な素材や形態を選ぶようにしています。機能性、使う状況はもちろんのこと、環境負荷のことなどさまざまな観点から考えた結果選び取った素材が、その製品にとっての正解であり、それを本物と呼ぶべきだと思いますね。


今回はここまで。後編では、上町氏の考える今後のモノづくりや、seccaのこれからについてお尋ねしました。お楽しみに。

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PlaBase編集部
PlaBase[プラベース]

これまでカタログや材料メーカー各社のホームページ内に散在していた樹脂(プラスチック)成形材料の情報をPlaBaseに集約しました。 メーカー・樹脂名・物性値など多様な検索方法によって、お客様の目的に合った樹脂成形材料のデータを探し出すことができます。