CFRPを広く普及させるために――活用法と実現に向けた課題:自動車開発とCFRP(4)

この記事では…
CFRPの活用をさらに広げていくための活用法と、それを実現するための課題について解説します。

(執筆:一之瀬 隼/ 製造業ライター)

前回の記事では、CFRPが実際に使用されている市販車両を紹介しました。スーパーカーに使われていたオートクレーブ成形ではなく、RTM成形を採用することでコスト削減を実現しています。さらに改良を重ね、製造時間を短縮できるC-RTM成形も開発されています。

一方で、CFRPを自動車のさまざまな部品に適用していくためには、成形時間の短縮以外にも多くの課題があります。

今回の記事では、今よりもさらに広くCFRPを自動車に対して適用していくために、現状課題となっているポイントを紹介します。

CFRPを普及させるための課題


CFRPを普及させていくためには、次のような課題があります。

異素材との接合技術
リサイクル性の向上
顧客が直接的にメリットを感じる

 

以降では、それぞれについて具体的に説明します。

1.異素材の接合技術

前回の記事で紹介したRTM法やC-RTM法など、成形時間の短縮に加えて製造上の工夫によりコスト削減は進んでいます。しかし、自動車を構成するさまざまな部品に採用するためには、まだコストが高いです。CFRPの採用拡大は、少しずつ採用する部品を増やしていくことが現実的ですが、そのためにはCFRPと他の素材とを接合する技術が必要です。

アルミと鉄など、金属同士を接合する際に用いられてきた接合技術を、そのままCFRPに適用するのは難しいです。技術開発においては、生産性を向上させるためにも、人の手を入れず、短時間で接合できる技術を確立することが求められています。

2.リサイクル性の向上

CFRPは自動車以外に他の製品へ採用しているものも含めて、廃棄される場合にはほとんどが埋め立て処理をされており、リサイクルされていません。環境意識が高まる現代においては、軽量化による燃費改善で環境に貢献する一方で、リサイクルへの対応が課題とになっています。

実用に向けて研究が進められているのは、次のようなリサイクル法です。

300℃以上の高温で熱分解
特殊な溶液中に浸し温度を高くして分解
物理的に粉砕して分解
電気分解

 

いずれの方法も、ビジネスとして実現するためには次のような課題があります。

回収できる量が少ない
回収するためのプロセスが複雑でコストがかかる
回収した炭素繊維の強度劣化が激しく用途が限られる
CFRPを製造するときの過程によってリサイクル性が異なる

 

環境意識の高まりにより、廃棄時に一定程度をリサイクルする方法の確立は必要不可欠です。今後、ビジネスで採用できるレベルのリサイクル法の確立が期待されています。

3.顧客が直接的にメリットを感じる

軽量化を目的としたCFRPの採用と同様に、自動車の環境対応として開発された技術としてはハイブリッド自動車(HV)や電気自動車(EV)が挙げられます。特にHVは普通の車と認識されるほど普及しています。

しかし、HVは燃費が高いことによるガソリン代節約分だけで考えると、ガソリン車との価格差を埋められません。普及するにあたっては、消費者の高い環境意識に加えて、HVやEV特有のモーターによる滑らかな加速感や、エンジンを駆動させるシーンが減ることによる静音性など、コスト面以外に魅力を感じている人が多いです。

CFRPも軽量化や優れた機械的特性以外に、顧客が直接的に感じられるメリットを打ち出す必要があります。例えば、CFRPだからこそ実現できる形状や、CFRP特有の模様をブランド化することなどが考えられます。

大学・企業で研究開発が進められている



自動車を始め、さまざまな業界の製品において、金属の代替材料としてCFRPを採用するための研究開発は、製品を販売する企業だけでなく、大学でも広く行われています。

私自身もエンジニアとして、「CFRPを上手く活用し、メリットのある製品を生み出せないか」を検討するために、さらなる知識を身に付け、仲間と議論を深めることで開発を加速させていきます。

自動車業界に良い影響を与える可能性が高いCFRPに、今後も期待し、楽しみながら動向を見守っていきましょう。(次回へ続く)

プロフィール

一之瀬 隼(いちのせ・しゅん) 自動車部品メーカーの現役エンジニアとして、先行開発から量産展開まで幅広い業務を経験。産まれたばかりの子供の成長を楽しみながら、エンジニアとライターの活動両立に苦戦中! 趣味は旅行(海外も国内も)と美味しいものを食べることと、学ぶこと。

>>執筆者ブログ「悠U自適

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PlaBase編集部
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