【第7回】ソフト表面加飾:プラスチック加飾技術

この記事では…
プラスチック加飾技術について紹介する連載の第7回。今回は、ソフト加飾の説明です。

(執筆:桝井捷平/MTO技術研究所 兼 加飾技術研究会)

>>前回の記事はこちら

プラスチックの加飾の本来の目的は、見た目の心地よさ、すなわち“視覚的心地よさ”を付与することであるが、自動車の内装部品、特に高級車の内装部品では身体に触れる機会の多いインストルメントパネル、ドアトリムなどは目で見て、触って心地よい、すなわち「視覚・触覚的心地よさ(高度な加飾)」が求められる。柔らかで温かみのある手触り感を付与する加飾を、筆者は総合して「ソフト表面加飾」と称し、「本格的なソフト表面加飾」と「ソフトフィール加飾」に大別しているが、後者は第3回第4回第5回で説明した。

ファブリックやクッション層付き表皮材(例えば、TPO/PP発泡層)は圧力、熱にセンシティブなため、インモールド成形を行う場合、高圧成形法である通常の射出成形では、ファブリックの風合いおよび感触の保持や、クッション層の厚さ保持などが困難であるため、低圧の成形方法が必要である。代表的なソフト表面加飾例を図5-1、5-2に示す。

【図5-1 射出プレス表皮材貼合成形】

【図5-2 その他のソフト表面加飾例】【図5-2 その他のソフト表面加飾例】

射出プレス成形(SPモールド、SPM)による加飾成形5-1)

射出プレス成形は1982年に住友化学で、筆者らが「SPモールド(SPM)」として開発した工法で、ソフト表皮貼合の中心技術である。SPMによる表皮材貼合一体成形法は、図のように、「表皮材を雄・雌金型間に供給し、両金型を適度のクリアランスまで接近させて溶融樹脂を供給し、型閉めして表皮材と芯材樹脂を一体成形する方法」である。表皮材は、通常別工程での予備賦形や予熱なしで使用できるが、必要に応じて併用してもよい。表皮材の風合に対して、多くの因子が影響を及ぼし、これらを制御する必要がある。製品サイズも制約がなく、図に示すように長さが2.5m強になる製品も生産されている。成形装置の型締め方向は、縦と横いずれでも良いが、縦方向の方が優れていることから多く用いられている。

SPMは国内外において多くの自動車メーカーの内装部品の成形に使用されてきた。

各種低圧・適圧射出成形

低圧(適圧)射出成形または射出圧縮成形により、予備賦形表皮材を使用した小物部品の成形する手段もあり、かつて各社で試されてきたが、実際にはほとんど普及しなかった。

押出プレス成形(ホットフロー成形)

射出プレス成形(SPモールド)とほぼ同時期に、池貝鉄工が押出プレス成形による表皮材貼合一体成形5-2)を開発した。押出成形でプログラミングして樹脂を供給することが特徴で、細長い成形品などの成形に適する。しかしながら、射出プレス成形のようなバリエーションが乏しい(部分貼合、2種貼合成形などが実質不可)などから、採用はそれほど広がらなかったが、Engel社5-3)など大手海外メーカーがその派生技術を実用化している。

抄紙法スタンパブルシート(ケープラシート)膨張成形5-4)

抄紙法スタンパブルシートは加熱すると、ガラス繊維のスプリングバックで厚さ方向に数倍から10倍位膨張する。この特性を生かして、「ケープラシート」(プレス加工向け繊維強化樹脂複合材)を加熱し、表皮材と共にマッチドダイ成形すると、芯材(KPS)の目付けが400-1000gr/m2程度の軽量で曲げ特性の優れた製品が得られ、自動車のルーフライナーなどに採用されている。

パウダースラッシュ/ウレタン注入成形5-5)

浮遊させた塩ビ樹脂(PVC)などの粉末を加熱金型表面に付着させて、焼結・融合して均質な皮膜(表皮材)を作り、この表皮材と芯材をセットして、その間にPUを注入発泡させることで、インパネなどの高級感のある表面を有する成形品が得られる。

ソフト材/ハード材の2材質成形5-6)

軟質/硬質プラスチックの二層成形でソフト表面を有する部品が得られ、インパネなどの自動車部品やその他の部品として使用されている。

SOLIDUX

「SOLIDUX」は、ART&TECH5-7)が開発した技術で、特殊な前処理をしたファブリックをプリフォームして、プリフォーム品を金型にインサートして、さらに通常の射出成形で貼合一体化する。小さくて浅い成形物では良好な成形品を得ているが、それ以外では課題が多く、適用範囲は限定される。

静電植毛5-8)

静電植毛は、被対象物に接着剤を塗布し、これに強い電界(直流高電圧)をかけて短繊維(フロック、パイル)を植え付け、ビロード様の仕上がりを得る表面加工技術である。従来は、自動車の内装部品などに使用されていたが、現在は、楽器ケースや宝石箱の内装としても利用されている。

その他

ソフト表皮材貼合の代表的な2次加飾としては、表皮材の端部を溝に押し込んで見切りとする「木目込み(プレス貼り)」があり、ドアトリムのオーナメント部の貼合などに使用されている。


参考文献
5-1) 桝井捷平ら,成形加工,3,(6),402(1991) (第一回青木固賞受賞)
5-2) 萱沼淳一:プラスチック,58,(10),25(2007)
5-3) Engel社
http://www.engelglobal.com/en/at/solutions/technologies/tecomelt.html
5-4) ケープラシート
http://www.jfe-steel.co.jp/products/car/products/pdf/V3J-00_75.pdf
5-5) イノアックコーポレーション
http://www.inoac.co.jp/ja/solution/detail/auto_int_001/index.html
5-6) Engel http://www.engelglobal.com/engel_web/global/en/1513.htm
5-7) ART & TECH http://at-tech.co.jp/
5-8) ㈱ティーエヌ製作所http://seidenshokumou.com/process.html

著者


MTO技術研究所 兼 加飾技術研究会 桝井捷平

前回の記事はこちら
sample
PlaBase編集部
PlaBase[プラベース]

これまでカタログや材料メーカー各社のホームページ内に散在していた樹脂(プラスチック)成形材料の情報をPlaBaseに集約しました。 メーカー・樹脂名・物性値など多様な検索方法によって、お客様の目的に合った樹脂成形材料のデータを探し出すことができます。