射出圧縮成形とは?:プラスチックの強度(6)

この記事では…
射出圧縮成形がどういうものか、その2つの手法やそれぞれの利点について解説します。

(執筆:本間精一/本間技術士事務所)

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今回は、「プラスチックの強度」に関連する話題として、射出圧縮成形について紹介する。

射出成形では粘性抵抗があるため流動先端ほど圧力は低くなる。圧力が低くなることを「圧力損失」という。図1は圧力損失の様子を示している。

 

図1 型内における圧力損失

射出圧や保圧は成形機ノズル、スプル、ランナ、ゲートを通過すると圧力損失(ΔP)が大きくなる。さらにキャビティ(注1)内でも圧力損失(ΔP2)があるため、ゲート近くでは圧力は高いが流動末端では低くなる。このようにキャビティ内で圧力差があると、残留ひずみ(注2)、光学ひずみ(注3)、ひけ(注3)などの不具合が発生する。

これらの不具合を防止するために射出圧縮成形法が開発されている。射出圧縮成形はキャビティに溶融樹脂を充填(じゅうてん)後に、保圧(注3)の代わりに圧縮圧力を加えて成形する方法である。射出成形と射出圧縮成形の型内圧力分布の比較を図2に示す。

図2  型内圧力分布の比較

この図のように射出圧縮成形では、型内圧が均一に分布していることが分かる。

射出圧縮成形にはいろいろな方法があるが、次の2つに大別される。

型開き・圧縮法

図3に示すように、金型をバリが出ない程度(0.1~0.3mm)に開いた状態で射出し、充填した後に型締めして圧縮する方法である。

図3 型開き・圧縮法

この成形法は肉厚が約1.0mm以下の薄肉成形品に応用される例が多く、次の利点がある。

1.残留ひずみや光学ひずみを低減できる。
2.充填するときには金型を開いた分だけ肉厚は厚くなるので、薄肉品でも流動しやすくなる。
3.キャビティ面の微細凹凸(グルーブ、プリズムパターンなど)の転写率が向上し、また転写率分布も均一になる。
4.充填するときには金型を開いているので、ガス逃げがよくなる。

 

応用例には光ディスク基板(CD、CD-R、CD-RW、DVD)やLED導光板がある。

キャビティ圧縮法

厚肉成形品の成形に適用される成形法である。キャビティを大きく開いた状態で低圧射出し、充填後に溶融樹脂を圧縮する方法である。圧縮する方法にはコア圧縮と型締め圧縮がある。

図4(a)は入れ子コアを後退させたのちに型締めして低圧射出し、充填後にコアで圧縮する方法である。図4(b)は型閉め後に低圧射出し、充填後に型締めして圧縮する方法である。

図4 キャビティ圧縮法

これらの方法は次の利点がある。

1.厚肉成形品のひけや気泡を防止できる。
2.光学レンズのような厚肉品では球面精度を向上できる。
3.残留ひずみや光学ひずみを低減できる。

 

これらの特徴を活かした光学レンズや自動車グレージング(パノラマルーフ、リアガラス)の成形に採用されている。

次回へ続く)


注1:成形品を成形する金型空間部をキャビティという。
注2:主には成形品内で成形収縮率差があるときに生ずるひずみであり、クラック発生やそりの原因になる。
注3:主には成形品内に屈折率に異方性があるときに発生するひずみであり、光学エラーの原因になる。
注4:厚肉成形品の型内冷却過程で、表面層が先に固化し、内部のコア層が遅れて冷却すると、コア層の体積収縮が大きいため、表面層を引き込むことで窪みが生じる現象である。
注5:キャビティに溶融樹脂を充填後に冷却に伴って体積収縮する。体積収縮分を補うため溶融樹脂を送り込む圧力を保持圧力、略して保圧という。

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PlaBase編集部
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