「環境に優しい」ってどういうこと? 環境配慮型プラスチックのいろいろ :プラ業界の「環境との共存」(3)

この記事では…
さまざまな企業が打ち出していて、しかもさまざまな意味で言われている「環境配慮型」のプラスチックについて情報を整理してみた。

(執筆:柳本 浩希/株式会社アメレックス・エナジー・コム 石化原料部長 兼 NAPレポート編集長)

前回は、「環境との共存」について、「低炭素社会の実現」と「海洋プラスチック問題」という2つの社会課題があるということを説明した。今回は現在、さまざまな企業が打ち出している「環境配慮型プラスチック」について、その意味を整理してみた。

……というのも、世の中にはたくさんの環境対応製品にあふれており、どの意味で環境に配慮しているのか、必ずしも判然としていないからだ。

再生プラスチック


最も歴史が古い取り組みとして挙げられるのは「再生プラスチック」だ。これはポリオレフィンを原料としたフィルムや容器などの製品が生産された当初からあるもので、生産時に発生するロス分や使用済みのプラスチックを回収し、再び熱を加えて冷却し、ペレット(樹脂)にするシステム。これまではフィルムを生産する際に発生してしまう耳部など生産ロス分を再利用することが多かった。最近多いのが、さらに消費者が使用したものを回収して樹脂に再生して、再生された樹脂を一定量ブレンドして生産するという取り組みだ。

再生プラスチックを使用し、石油由来のバージン樹脂の使用を抑えることができることから、低炭素社会の実現に寄与することができる。海洋プラ問題の観点では、廃棄されるべきプラスチック製品を再生せることができるという利点がある一方、生産された製品は再び廃棄されることから、完全な解決にはならないことがうかがえる。

ただし、この再生の循環を続けていくことによって、その効果を上げることができると言える。この循環に注目したのが米国のLoop社。アイスや洗剤メーカーらがLoop社と共同で、プラスチック容器やステンレス容器の再利用を、消費者とメーカーをつなぐシステムを構築している。欧米ではすでに運用が開始されている。

また、これまではポリオレフィンやPETが中心だったリサイクルも、その他のリサイクルには不向きとされていたような高機能な合成樹脂にも広がりつつある。ユーザーとメーカーが共同で資源の循環を実施する取り組みが今後さらに加速しそうだ。

生分解プラスチック


次に、海洋プラ問題に秀でた「生分解プラスチック」が挙げられる。生分解プラスチックとは土壌や海中など自然環境の中で分解されるもの。化石原料由来のものと、再生可能原料(バイオマス)由来のものがある。

バイオマス由来のものは、低炭素社会の実現に対しても貢献できる格好となる。生分解プラスチックは、分解反応が起こる条件がそれぞれ細かく異なっていることから、使用する前にサプライヤーに確認しておく必要がある。

海中では分解速度が遅いものもあって、環境配慮面としてはグレーな一面もある。とはいえ、特にワンウェイで使用されるような使い捨てプラスチックにおいては、自然界に廃棄されるリスクが高いことから、この生分解プラスチックの導入が期待できると言える。大量生産ができないことから、消費材向けに限定した運用が想定される。

再生可能原料由来のプラスチック(バイオプラ)


3つ目として、「再生可能原料由来のプラスチック」がある。これは「バイオマスプラスチック(バイオプラ)」と呼ばれる。石油は使用すれば再生することはできないが、サトウキビや木材、微生物など再生可能なもの(すなわち「バイオマス」)から合成したものをバイオプラと呼んでいる。

このさきがけは、ブラジルで大量に生産されるサトウキビから得られるエタノールをエチレンへと転換し生産される「バイオポリエチレン」が挙げられる。さらに、このバイオエチレンから「モノエチレングリコール(MEG)」を生産し、PTAと反応させてバイオPETも上市されている。

しかし、PTAは原料であるパラキシレンのバイオグレードが存在していないことから、原料が全てバイオ原料となってはいない。この点については、米国のバイオベンチャーであるアネロテックが、バイオマスからアロマ(ベンゼン、トルエン、キシレン)留分を生産し工業化することに成功している。同社は日本飲料大手のサントリーと共に、バイオパラキシレンからバイオPTA、バイオPETを生産する工業化を進め、2023年の実用化を目指している。

バイオグレードは「消費しても再生可能である」という点から低炭素社会の実現に貢献する(サトウキビや木材などが確りと再生される前提)が、再生可能なバイオマスの量が限定的であることから、大量生産には不向きと言える。海洋プラの問題に対してはバージン樹脂と変わらないという弱点もある。

ケミカルリサイクル原料由来のプラスチック


そして、4つ目が「ケミカルリサイクルされたプラスチック」。サントリーが2020年7月に日本の容器メーカー11社と共同で、新会社アールプラスジャパンを創設し、アネロテックの化学合成技術を生かした廃プラスチックの再生に着手した。

これは使用済みのプラスチックを熱分解した上で、再びエチレンやアロマなどの化学原料に還元するものだ。化学反応によって再生されることから「ケミカルリサイクル」と呼ばれる。ケミカルリサイクルは欧州が先行しており、イギリス・プラスチックエナジーらが、廃プラスチックからナフサなどの炭化水素油を合成し、石化メーカーに販売している。そこから合成樹脂を生産することで、ケミカルリサイクルされたグリーンPEとして販売されていた。

なお、アールプラスジャパンは、炭化水素油を経由せずに直接リサイクルを実現できるとして注目されている。ケミカルリサイクルはバージン樹脂を減らすという点で低炭素社会に貢献している。また、今後の技術開発次第では大量生産も可能となる可能性がある。

他素材とプラスチックによる複合材料


最後に、紙や無機材料とプラスチックを混合(コンパウンド)させて生産する複合材料も登場している。これもバージン樹脂を減らすという点で低炭素社会に貢献すると言える。

このように、「環境にやさしい」と一言でいってもさまざまな種類のプラスチックが存在していることが分かるだろう。それぞれの特徴を表1にまとめたので、ご参考まで。

 

表1:環境にやさしいプラスチックの種類

表1 環境にやさしいプラスチックの種類

今後、用途ごとに適切な選択がされていくことで、環境との共存が遠くない未来に実現できると信じてやまない。その中で、今後、汎用プラスチック分野を中心に量産化が期待されるのは、ケミカルリサイクルされたプラスチックと言えそうだ。

大量生産が期待でき、生産コストも今後の研究開発次第ではバージン樹脂に見劣りしない可能性もある。今後、石油会社、石油化学会社、加工メーカー、消費財メーカー間で、企業の枠を超えたさらなる連携が求められるだろう。

プロフィール

柳本 浩希(やなぎもと・ひろき) 株式会社アメレックス・エナジー・コム 石化原料部長 兼 NAPレポート編集長。1985年生まれ。大学卒業後、総合化学メーカーに就職し、石化コンビナートの現場、ナフサの調達、合成樹脂の営業を経験。2016年にAmerex Petroleum Corporation 東京支店入社。現在、株式会社アメレックス・エナジー・コムにてナフサ取引の仲介のほか、ナフサ/石油化学の情報誌の編集責任を務める。

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PlaBase編集部
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