【第9回】 その他の加飾:プラスチック加飾技術

この記事では…
これまで解説した以外の、さまざまな加飾について説明します。

(執筆:桝井捷平/MTO技術研究所 兼 加飾技術研究会)

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構造色加飾


バイオミティクスと構造色加飾

「バイオミメティクス」とは、「生物が持つ優れた機能や体構造を模倣し、技術開発やモノづくりに生かす」ことであり、既に多くの分野に応用されている。バイオミティクスのプラスチック加飾への応用の中心は構造色である。構造色(structural color)は、光の波長あるいはそれ以下の微細構造による発色現象を指す。

構造色の仕組みと自然界の構造色例を図9-1に示す。

図9-1 構成色の仕組みと自然界の構造色例

図9-1 構成色の仕組みと自然界の構造色例

図に示すような規則的な構造により、着色材なしでも発色するようになる。

一般的には、「紫外線などにより脱色することがないこと」、大部分の構造色は、「見る角度に応じて、さまざまな色彩が見られること」などの特徴がある。しかし、カワセミなどは、図のように、一見ランダムな構造ではあるが、その中に規則性を潜ませた構造になっていると言われており、方向によらない構造色を作るために重要な構造であり、その解明とプラスチックへの応用が大いに期待される。

プラスチックに応用されている構造色加飾

図9-2は、プラスチックの分野で応用されている構造色例をまとめたものである。

図9-2 構造色加飾例

図9-2 構造色加飾例

主要なものを下記に示す。

1. 超ナノ多層(超多層)フィルム
第2回で述べた東レの「PICASUS」が代表的な例で、メタリックな外観でありながら、光、電磁波を透過するフィルムが得られる。

2. 表面微細加工フィルム
綜研化学(参考文献9-1)などが、フィルム表面に超微細加工を付与した構造色フィルムを作成している。

3. ゆらぎ華飾
三光合成(参考文献9-2)が、格子構造と多層構造の組み合わせで、モルフォチョウの色を実現している。

4. 微細加工金型での成形品
第4回で示したRocToolの構造色例と同様、ファナック(参考文献9-3)も、表面を微細加工した金型を用いて、射出成形で構造色を実現している。

5. 液晶フィルム
日本ゼオン(参考文献9-4)が単層でメタリック、各種カラーの構造色を出せる液晶フィルムを開発している。

6. 多層膜真空蒸着
津田工業など(参考文献9-5)が、多層膜蒸着で構造色を実現している。

7. 特殊構造と積層の組合せ
凸版印刷(参考文献9-6)が、ナノインプリント技術により形成したナノ構造上に金属薄膜を多層に成膜することで、構造色フィルムを開発している。

8. 光輝性偏光フィラー
メルク社(参考文献9-7)が、天然マイカの表面をTiO2などの高屈折率の金属酸化物で被覆した無機パール顔料を開発している。

9. その他の構造色
日油(参考文献9-8)は2層コロイド粒子を用いて微細粒子光散乱による構造色、千葉大学 (参考文献9-9)は孔雀の羽の構造にヒントを得た視認性の高い構造色、さらにSheffield大学(参考文献9-10)は鳥類の構造色の研究から自己配列により発色して異なる層構造を形成する発色性高分子を開発している。

インモールドコーティング


インモールド塗装は図9-3に示すように、通常の射出成形を行った後、意匠面側の金型にクリアランスを形成して、塗料を注入して塗装を行う方法である。

図9-3 インモールド塗装

図9-3 インモールド塗装

有機溶剤を使用せず、塗料の無駄がなく、厚肉の塗装ができるなどの特長がある。第2回で示したように、Krauss Maffeiが量産設備を開発し、自動車内外装部品への展開を進めている。

日本では旧宇部興産機械/大日本塗料が「インプレスト」(注7-11)の名称で展開している。

金型表面にコート材を付与し、成形品に転写させるインモールドコーテイング、および成形品表面で反応させるインモールドリアクテティングは欧州で紹介されているが、日本ではなじみが薄い。

繊維複合材料の加飾


図9-4 繊維複合材料(CFRP等)の加飾例

図9-4 繊維複合材料(CFRPなど)の加飾例

繊維複合材料の表面加飾(図9-4)は、基本的には、繊維の種類に関わらず同一であり、通常樹脂の加飾とほぼ同様であるが、独特の方法もある。代表的な例は下記の通りである。

1)CF織物の柄を直接表現
繊維織物は独特の柄があり、これをそのまま表面に出して、加飾部品として使用されている。ソフト樹脂と繊維織物の複合材を加工したもの、CF(炭素繊維)またはCFとシルクの織物にTPUコーティングした織物およびそれを用いた製品、CF繊維もしくは樹脂を着色した成形品がある。

2)プレスによるフィルム貼合成形
3)ソフト表面を有する成形
基材にGFRTP(ガラス繊維強化熱可塑性プラスチック)を用いたSPM(射出プレス成形)、表皮材成形品、ファブリック貼合KPS膨張品、EngelのDolphin法によるハード/ソフト2層成形品などが用いられている。

4) 塗装
CFRPのボディにCF織物柄が見えるか見えないか程度の絶妙な濃度のブラッククリヤー塗装を組み合わせたボディの車などがある。

5) H&Cを用いた外観良好な成形品

次回へ続く)


参考文献
(9-1) 吉田哲也(綜研化学)
(9-2) 三光合成
(9-3) ファナック Naotec2016
(9-4) 日本ゼオン Naotec2016
(9-5) 津田工業 Naotec2017
(9-6) 凸版印刷 高機能素材2017
(9-7) メルク
(9-8)林昌樹らJETI 59 6 P107-109(日油)
(9-9) 千葉大学
(9-10) Shefield Universty


著者

MTO技術研究所 兼 加飾技術研究会 桝井捷平

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PlaBase編集部
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