透過色PCを使った部品の内部観察:透過色で試作品を作る

この記事では…

部品を製造するときに、できれば内部を確認したい……。そんなときに役に立つ、透明な樹脂を用いた試作について紹介します。

(執筆:一之瀬 隼/ 製造業ライター)

新製品の開発や既存製品の改良を行う場合、試作品を作る段階で設計意図通りに製品ができているかを確認する必要があります。しかし、金属で作られたボディの内部に部品が組み込まれている場合、内部の部品が意図通りに動いているのかを確認するのは困難です。

外部から目視で内部の動きを確認するためには、ボディを透明な樹脂で置き換えた試作品の活用が有効です。ボディが透明な樹脂であれば、ボディ内部を目視で確認できるため、設計通りに動いているのかどうかを確認できます。また、もし設計通りに動いていない場合には、どのような動きになっているのかを確認することで、課題解決につなげられるでしょう。

この記事では、透明な樹脂を用いた試作品でボディ内部の動きを確認する方法のメリットやデメリットを紹介します。

試作品に用いる透明な樹脂


金属性のボディを透明な樹脂で置き換えたい場合、その材料にはポリカーボネート(PC)が用いられます。ポリカーボネートは、耐熱性や機械的強度などの特性が優れた熱可塑性樹脂であるエンジニアリングプラスチックの一種です。

ポリカーボネートのメリット

まず透明部品の試作においてポリカーボネートを使う際の、3つのメリットから説明します。

1.透明度が高い
製品の形状に加工した後の透明度が高くなければ、部品内部の動きが見づらくなります。ポリカーボネートは光の透過率が85~90%と高いため、屋外の窓ガラスの代替品としても製品化されています。

 

2.加工性と寸法安定性が高い
精密な金属部品の代わりに使用する場合、高い寸法精度が求められます。ポリカーボネートは、射出成形、押出成形、真空成形、ブロー成形など樹脂成形の基本的な方法には、全て対応しています。また熱可塑性樹脂なので、3Dプリンターで用いられる熱溶解積層法にも対応可能です。また、吸水性が低いため成形する際の収縮が小さく、変形しにくいなど寸法安定性が高い点も大きなメリットです。

 

3.耐衝撃性に優れている
ポリカーボネートは、樹脂の中でも耐衝撃性に優れています。樹脂内部で部品が動作し、ボディに接触する場合、耐衝撃性が高くなければ壊れてしまう場合があります。その強度は、ガラスの250倍以上、透明なポリエチレンの約50倍、おもちゃなどに使われるABS樹脂の約5倍です。

 

このようにさまざまなメリットを持つポリカーボネートですが、用途によっては大きなデメリットもあります。

ポリカーボネートのデメリット

ポリカーボネートのデメリットは、以下です。

1.耐薬品性や耐油性が低い
例えば、自動車部品などの油圧製品に使用する場合、耐油性が低いためひび割れや変形を起こしてしまう可能性があります。そのため、長時間の使用には向いていません。また、アルカリ性の洗剤やガラスコーティング材などをかけて時間をおいた場合も、ひび割れや変形を起こしてしまいます。使用するたびに、分解して洗浄するなど手間もかかってしまいます。

 

ポリカーボネートは便利な樹脂ですが、せっかく試作品を作っても狙いの評価に使えない可能性があります。ポリカーボネートが試作したい製品の使用法に耐えられるのか、事前に確認することが重要です。

課題を解決する方法


油や薬品を用いる製品でも内部の動きを確認するためには、ポリカーボネートへの表面処理を施す場合があります。それが無理そうな場合は、他の素材を検討することになります。

ポリカーボネートへの表面処理
ポリカーボネートは、幅広い場面で用いられているため、そのデメリットを補うための表面処理がいろいろ開発されています。全ての薬品、油に対応するのは難しいかもしれませんが、どのような環境で使われるかを明確にして、用途に対応する表面処理が施されたポリカーボネートを入手するとよいでしょう。

 

ポリカーボネートの代替になり得る素材
近年注目されているのは、セルロースナノファイバーです。セルロースナノファイバーは、木材のセルロースから生成される繊維で、樹脂やゴムに混ぜることで強度の高い複合材料が作れます。透明な部品を製作することも可能ですが、高価である点が大きなデメリットです。今後、製造技術の開発や普及により、価格が下がって加工法が確立されることで、ポリカーボネートの代替製品として使用される可能性があります。

 

部品内部の観察でポリカーボネートを用いる


今回は、製品が設計意図通りに動くかどうか観察するためには、ポリカーボネートを用いてボディを試作するのが効果的であることを説明しました。ポリカーボネートは、加工性や寸法安定性に優れているため、さまざまな形状に加工できます。一方で、耐薬品性や耐油性が低いため、用途によっては使用回数が限られていたり、短時間の使用しかできなかったりする場合もあります。

ただしデメリットについては、それを補完するための適切な処理を施した製品を見つけられるかもしれません。

総じてメリットが多いポリカーボネートでの試作品製作が、有効な選択肢の1つであるといえます。

プロフィール

一之瀬 隼(いちのせ・しゅん) 自動車部品メーカーの現役エンジニアとして、先行開発から量産展開まで幅広い業務を経験。産まれたばかりの子供の成長を楽しみながら、エンジニアとライターの活動両立に苦戦中! 趣味は旅行(海外も国内も)と美味しいものを食べることと、学ぶこと。

>>執筆者ブログ「悠U自適

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PlaBase編集部
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