「高機能素材 Week2020」オンライン展示会レポ(後編)

この記事では…
2020年12月に開催された「第11回 高機能素材Week」東京展に出展していた企業の製品の数々を、プラスチックの技術動向・産業動向に明るい安田 武夫氏が紹介(後編)。

(執筆:安田 武夫/安田ポリマーリサーチ研究所)

2020年12月2~4日の3日間、幕張メッセで、高機能プラスチックおよびフィルムなどに関する展示会「第11回 高機能素材Week」の東京展が開催された。東京展の出展者数は435件、会期中の来場者は1万8048人であった。

今回も実地とオンラインの両方で開催されていたが、筆者は後者のオンライン展示会に参加。筆者が注目した企業に連絡を取り、掲載の承諾を得た情報について紹介していく前編はこちら)。

五洋紙工


五洋紙工は、ナノパターンフィルムや熱伝導シート、スーパーエンプラフィルムなどを展示で紹介した。

同社の開発品である超低光沢マット転写用フィルムは、特殊なマット形状を付与したラミネーフィルムで、黒色材料の表面に転写することで、より質感の高い艶消し黒を表現することが可能だ(図10-1)。

図10-1 超低光沢マット転写用フィルム:黒色のウレタンに転写した例(出典:五洋紙工)

また、特殊なマット形状により撥水効果を付与することもできる。さらに、シリコーンフリーのため移行物が懸念される用途でも使用可能である。用途としては、家具などの表層の意匠性付与や、カメラレンズ周辺部材での採用などを挙げている(図10-2)。

図10-2 カメラレンズ周辺の部材で採用した例(出典:五洋紙工)

東亞合成


東亞合成は、瞬間接着剤を含む各種接着剤やガラス代替樹脂、アクリル系ホットメルトフィルム、有機ー無機ハイブリッド高熱伝導絶縁材などを展示で紹介した(写真8)。

写真8 低誘電性ボンディングフィルム(出典:東亞合成)

低誘電性ボンディングフィルム「アロンマイティ AF-700」には以下の特徴がある。

優れた誘電特性:高周波領域で低い誘電特性を示す
高接着性:ポリイミドやLCP、銅箔などの基材に対し優れた接着性を示す
高耐熱性:はんだリフロー時の耐熱性に優れる
低吸水性:水分吸収量が少なく、湿熱循環試験でも高い接着強度を保てる

 

このフィルムの構成や特性については、図11-1~4で示す。採用する効果として、伝送時のロス低減や、レーザーでの穴開け時のサイドエッジング抑制などを挙げている。

図11-1 低誘電性ボンディングフィルムの構成(出典:東亞合成)

図11-2 低誘電性ボンディングフィルムの特性値(出典:東亞合成) 画像クリックで拡大します

図11-3 S-パラメータ評価:伝送時のロスを低減可能(出典:東亞合成)

 

図11-4 UVレーザー加工性評価:穴開け加工時のサイドエッジングを抑制できる(出典:東亞合成)

フジワラ


フジワラは複合材製造技術や、航空機向け複合材製造技術、耐熱複合材・断熱複合材成形品、非破壊検査ソリューションなどを展示で紹介した。

写真9 固体燃料ロケットノズル試作品(出典:フジワラ) 画像クリックで拡大しま

写真9の固体燃料ロケットノズル試作品は、同社の断熱材成形技術によるものだ。カーボン繊維とフェノール樹脂や、シリカとフェノール樹脂など断熱性に優れた材料による複合材料を用いたホットプレス成形が可能である。

その他では、ビスマレイミド樹脂(BMI)やポリイミド樹脂系の耐熱複合材料を成形する技術も紹介した(写真10)。

写真10 カーボンとBMIの複合材によるオートクレーブ成形の例(出典:フジワラ) 画像クリックで拡大します

リケン


リケンは、熱・電磁波対策樹脂成形品を展示で紹介した。写真11は樹脂ギヤ製作の例である。

写真11 樹脂ギヤ製品(出典:リケン) 画像クリックで拡大します

樹脂ギヤも製作においては、形状から材料まで提案可能で、評価にも対応している。金属ギアからの代替も可能だ。ギヤを樹脂化することで、静音化、高強度、軽量化などが狙える。また、樹脂でしか実現できないギヤ形状も検討できる(図12-1~4)。

優れた誘電特性:高周波領域で低い誘電特性を示す
・歯元の応力を低減したオリジナルギヤ形状が可能
・独自配合技術によるオリジナル材料を採用(配合設計も可能)

 

図12-1 樹脂ならではの独自設計(出典:リケン)

図12-2 樹脂ギヤの最適形状をシミュレーションする(出典:リケン)

図12-3 オリジナル材料の強度評価結果(出典:リケン)

図12-4 用途に合わせて摩擦や強度特性を最適化する(出典:リケン)

大阪ガスケミカル


大阪ガスケミカルは、ポリアミド用流動性向上剤やフルオレン系樹脂材料(アクリレートなど)、フルオレンセルロースファイバー、造粒カーボンナノチューブなどを展示で紹介した。

同社の複合材料用相溶化剤「マリコン」は、ポリエチレン樹脂ベースの複合材料用相溶化剤である(写真12)。

写真12 複合材料用相溶化剤「マリコン」 (出典:大阪ガスケミカル)

マリコンは、複合材の端材や廃材のリサイクルで利用可能で、靭性や外観も改良できる(図13)。

 

図13 靭性や外観を向上させる(出典:大阪ガスケミカル)

他、マリコンの特長などを以下に示す。

・優れた誘電特性:高周波領域で低い誘電特性を示す
・ポリエチレンをベースとした相溶剤のマスターバッチである
・マリコンの配合により、通常では混ざり合わない樹脂同士やフィラーとの混練を可能とする。適用材料は、さまざまな材料に効果があり、3種以上含む場合でも適用可能である
・樹脂種:ポリオレフィン、PETなどのポリエステル、PA6などのポリアミド

日産化学


日産化学は、高機能エポキシ樹脂、エポキシナノコンポジット、対金属密着性向上剤などを展示で紹介した。

本展示で日産化学が紹介していた、高強度かつ高硬度、高透明の歯科材料向けメタクリレート分散ナノシリカは、歯科の治療時に歯間に充填する材料の原料である。光で硬化する材料で、透明度が高い。治療後も長持ちさせるためには、高弾性率、高強度であることが必須である。メタクリレート分散ナノシリカの特性については、図14-1~3で示す。

図14-1 シリカゾルの透明度:品番ごとの比較(出典:日産化学)

図14-2 メタクリレートナノコンポジットの透明度比較(出典:日産化学)

図14-3 メタクリレートナノコンポジット機械特性:剛性と硬度の比較(出典:日産化学)

KRI


大阪ガス出資の受託研究会社であるKRIは、プラスチック材料の開発支援、LiB関連開発などのレポート、蓄熱組成物、断熱塗料、断熱シート、電池キャパシタ関連資料、触り心地評価などを展示で紹介した。

KRIは「世界初」(同社)であるという疎水化処理されたシングルナノ セルロースナノファイバー(CNF)を開発(図15-1、2)。こちらは透明樹脂用補強材である。ナノレベル分散による光学ポリマーへの適用が可能である。

図15-1 シングルCNFとPMMAの複合シート(出典:KRI)

図15-2 シングルCNFとPMMAの複合シートの熱特性(出典:KRI)

同社のシングルCNF技術の特徴は、以下に示す。

・優れた誘電特性:高周波領域で低い誘電特性を示す
・ノニオン性シングルナノセルロースナノファイバー
・3~5nm幅のセルロースナノファイバー
・無修飾及びアシル化修飾タイプ形成可能
・100以上のアスペクト比
・透明な自己膜形成が可能:疎水性ポリマーとの複合化が可能(CNF/PMMA)
・90%以上の直線透過率
・線膨張係数:39ppm/℃(PMMA:75 ppm/℃)
・ガラス転移温度の上昇(15℃)

 

同社のフレキシブル多孔性PIシートは、架橋ポリイミドからなるエアロゲルの多孔性シート(図15-3~5)。低誘電率材・断熱材・防音用途への応用展開が可能である。

図15-3 フレキシブル多孔性PIシートの外観(出典:KRI)

図15-4 フレキシブル多孔性PIシートのSEM(走査電子顕微鏡)像(出典:KRI)

フレキシブル多孔性PIシートの特徴は以下に示す。

図15-5 フレキシブル多孔性PIシートの特性(走査電子顕微鏡)像(出典:KRI)

・多孔性ポリイミドシートの形成:凍結乾燥法または常圧乾燥法により形成する

・多孔性ポリイミドシートの特性:200nm以下の微細穴、優れた断熱性(熱伝導率:0.025W/m・K)、柔軟性・可撓(とう)性

三井化学分析センター


三井化学分析センターは、樹脂金属接合の解析、5G低誘電樹脂の物性評価、GF強化PPの劣化特性、CFRPの硬化不良による剥離、CFRP中のCFの配向、硬化性樹脂(接着剤)の総合解析、プラスチック部品の総合耐久性試験など、展示で紹介した。

5G(次世代移動通信規格)はモバイル、自動運転など通信関連全般に波及し、今後も市場拡大が見込まれる。同社は、高分子で培った分析物性評価技術を5Gに関連する部材・製品に適用し、課題解決をサポートしている。展示パネルには、高周波対応材料別に評価項目と評価方法が記載されていた(図16-1・2)。このような評価を進むことは5Gの今後の発展に大いに貢献すると思われる。

図16-1 5G市場と分析対象(出典:三井化学分析センター)

図16-2 高周波対応材料の分析・物性 評価方法一覧(出典:三井化学分析センター)

層間せん断試験では、通常の曲げ試験よりも短い支点間距離で試験を行い、試験片に大きなせん断応力を発生させることで、CFRP積層体の層間剥離強度(層間せん断強さ)を評価する(図16-3・4)。熱劣化試験、形態観察(断面観察)と組み合せ、劣化解析を行った。熱劣化試験後では樹脂層でクラック、層間剝離などが観察されている。

図16-3 CFRP積層体の層間せん断試験について(出典:三井化学分析センター):画像クリックで拡大します

図16-4 熱劣化試験とILSS試験前後断面観察(出典:三井化学分析センター):画像クリックで拡大します

 

減少傾向であるもの、展示は充実


今回、コロナ禍の中で出展者が減少し、新規技術の展示も少なめであった印象だが、多くの会社が充実した展示を行った感がある。今回も、現地での見学を控えてのオンライン展示取材となったが、多くの会社のサイトにアクセスして有用な情報が入手できたと考える。

いつものように会場現地での取材では、時間の制約もあり、また、資料収集はかなり重労働になる。オンライン展示会は、うまく利用すればよい情報収集の場であることを、今回も再認識した。(終わり)

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PlaBase編集部
PlaBase[プラベース]

これまでカタログや材料メーカー各社のホームページ内に散在していた樹脂(プラスチック)成形材料の情報をPlaBaseに集約しました。 メーカー・樹脂名・物性値など多様な検索方法によって、お客様の目的に合った樹脂成形材料のデータを探し出すことができます。