プラスチックはどのように分解するか:プラスチックの強度(9)

この記事では…
プラスチックにおける「分解」の定義や概念について解説する。

(執筆:本間精一/本間技術士事務所)

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プラスチックを構成するポリマーは強い共有結合(注1)で結びついているが、物理的要因や化学的要因によってポリマーの切断が起きる。ポリマーが切断して短くなることを「分解」という。化学用語では分解することを解重合と称している。分解すると分子末端数が増加し、分子の絡み合いが減少するので強度が低下する。また、JIS(日本工業規格)用語では劣化は「特性に有害な変化を伴う化学構造の変化」となっているので、分解して強度低下することを「劣化」と称している。

1.物理的要因による分解

図1に物理的分解の概念図を示す。熱、紫外線、放射線などのエネルギーがポリマーに作用すると、分解の初期物質(ラジカル)が生成する。さらに大気中の酸素、温度などの影響で分解は進行する。

図1 物理的分解の概念図

図1 物理的分解の概念図

(1)熱酸化分解
ポリマーは熱と酸素の影響で熱酸化分解(以下熱分解という)する。熱分解は温度が高いと短時間で起きるが、温度が低くても長い時間が経過すると分解する。実用的には次のケースで熱分解が起きる。

1.成形機のシリンダ内では空気(酸素)が存在するので成形温度が高いときには短時間で熱分解する。また、成形温度が低くても長時間滞留していると熱分解する。
2.実用条件でも、大気中において高温で連続使用していると熱劣化する。比較的低い温度でも長時間後には熱劣化する。

(2)紫外線分解
紫外線エネルギーはポリマーの結合エネルギー(共有結合エネルギー)より大きいので、ポリマーが紫外線を吸収するとラジカルが発生する。ラジカルは温度、酸素、湿気なども関与して紫外線分解は進行する。紫外線劣化するのは次のケースがある。

1.太陽光線の紫外線によって劣化する。
2.蛍光灯や水銀灯の光源から発生する紫外線に曝されると劣化する。

(3)放射線分解
X線、ベータ線、ガンマ線など放射線エネルギーは紫外線エネルギーよりはるかに大きいので、これらの放射線を照射すると短時間で分解する。プラスチックが放射線に曝されるのは医療機器や器具がある。ガンマ線滅菌する器具やレントゲン撮影機器などにプラスチックを用いる場合には放射線劣化が起きるので、劣化しにくいプラスチックが使用されている。

2.化学的要因による分解

化学的要因による分解について、以下で概念図と併せて解説する。

(1)加水分解
水分によって分解することを加水分解という(図2)。分子鎖にエステル結合または炭酸エステル結合(注2)を有するプラスチック(ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート)は高温水や高温蒸気中では加水分解による劣化が起きる。アルカリ性薬液の存在下では加水分解劣化はさらに促進される。温度が高いほど短時間で加水分解する傾向がある。

図2 加水分解

図2 加水分解

(2)酸化分解
プラスチックは強酸性薬液(強い酸性の薬液のこと)と接すると酸化作用により酸化分解する(図3)。薬液としては濃塩酸、濃硫酸、濃硝酸などがある。温度が高いほど短時間で酸化分解する傾向がある。

図3 酸化分解

なお、ポリマーの分解反応はいろいろな分解様式があり非常に複雑である。本記事で示した概念図はその中の1例である。

次回へ続く)


※筆者注

注1:原子同士が電子(共役電子対)を共有する結合を共有結合という。
注2:-OCO-をエステル結合という。ポリブチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートはエステル結合を有する。 -OCOO-を炭酸エステル結合という。ポリカーボネートは炭酸エステル結合を有する。

 

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PlaBase編集部
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