国内のナフサ需給、これからどうなる? :ガソリン車廃止により、石油や石油化学の世界はどう変わる?(3)

この記事では…
日本における、ガソリンの需要低下が需給に与える影響について解説する。

(執筆:柳本 浩希/株式会社アメレックス・エナジー・コム 石化原料部長 兼 NAPレポート編集長)

前回までのコラムで、世界的に広がるガソリン車の販売禁止措置など低炭素社会実現に向けた取り組みが、中長期的に世界の石油需給に与える影響について具体的に検討してきた。今回は日本にフォーカスした上で、ガソリンの需要低下が需給に与える影響を見ていきたい。

右肩下がりに減少していく内需


第二次世界大戦後の日本は、東側(民主主義)国家のアジアにおける防波堤として、復興と爆発的な経済成長をいち早く成し遂げ、世界における先進国の地位を築き上げた。承知のとおり、特に自動車産業においてはその技術によって世界をリードしてきた。
石油を動力としたモータリゼーションもアジアで断トツに早く増加した一方、資源のない日本は燃費の改善や効率化が著しく、いち早く石油の需要は減少に転じた。下の表1に示した通り、世界エネルギー機関(IEA)は日本の石油需要見通しについて、大幅に減少していくことを見込んでいる。

表1:世界エネルギー機関(IEA)による、日本の石油需要見通し
表1:世界エネルギー機関(IEA)による、日本の石油需要見通し

現行政策シナリオは、2020年10月13日までに打ち出された政策を基にしていることから、日本の2050年までのCO2排出量ネットゼロ宣言は織り込まれていない。当然、東京都の2030年以降のガソリン車販売禁止もしかりである。そのため、下段の持続可能な開発シナリオを想定すると、足元で日量325万バレル程度存在する需要は、2030年には日量100万バレル減少。2040年には同200万バレルなくなって、同123万バレル足らずとなる見通しだ。

 

さらに廃棄が進む製油所


日本の石油需要減少は、何もいまに始まったことではない。1983年に日量594万バレルあった製油所は需要の減少に合わせて統廃合を実施。この流れは2000年以降も続いており、以降に出てくる表2でも、2008年時点から比べると足元は日量140バレルもの原油精製能力が減少していることを示している。

それでも、日量300万バレル以上の精製能力が残存し、今後10年間で同50万バレル、20年で同100万~150万バレル程度の能力を削減していくことが予想される。製鉄所ととともに、日本の産業を支えてきた製油所は、さらにその3分の2から2分の1程度の能力まで削減していく必要がある。

現在、石油会社が知恵を絞って、来る需要の減少に対して、どのような供給体制へと再編していくか検討しているものと考えられる。石油化学の装置とのシナジーがしっかりできているような製油所については、利益の源泉を確保するものと見られ、石油製品の輸出競争力も担保されるものと想定される。そのため、内需が減少した分そのまま精製能力が減少するとは考えづらい。
石油化学、特にナフサクラッカーを自社が製油所に隣接して保有している地区や、石化会社との密接な連関(タンクやバース、パイプラインの供与や、単独での非活用留分の相互共有)など実施しているような製油所は、選択的に残す方向となるだろう。
表2の黄色で塗りつぶした地区の製油所は、隣接してナフサクラッカーが存在する地区だ。さらに文字を赤字とした地区は、石化装置との密接な関連が認められ、選択的に残すであろう設備となる。また、地域の燃料需要を支えるために存続が必須だったり、会社の存続面から廃棄は想定しづらかったりする地区は灰色で示した。その他の製油所(なんら色付けがされていない地区)における合計原油処理量は日量126万バレルとなり、今後この地区が統廃合の軸となりそうだ(各石油会社の個別具体的な事情を勘案していないため、具体的な地区というよりは数量的なイメージとして捉えていただきたい)。


表2:日本国内の石油需要、および各地区のナフサクラッカーや石化装置などの設備保有状況など

 

ナフサの輸入は増加する?


製油所の原油精製能力が削減されれば、当然ナフサの生産も減少することとなる。2018年時点では日量28万バレル程度、石油化学向けにナフサ(つまり、国産ナフサ)が供給されていたがこの数量は大幅に減少することが見込まれる。一方、中国におけるクラッカー大増設に伴いオレフィンの内製化が進むほか、ガスベースのクラッカーに淘汰されることにより、日本国内のナフサクラッカーも1基程度は稼働を停止することを考慮に入れると、輸入ナフサは2700万キロリットルだったところから、3000万キロリットルへと10%程度増加する程度でこと済む計算となる。
とはいえ、同様に輸入量が増加するような状況は韓国でも想定されることから、東アジアのナフサ需要は増加する見通しだ。ガソリン需要が日本と同様に減少するうえ、クラッカーの原料はガスが中心となっている欧米ではナフサが余剰となり、アジアへ裁定玉をさらに多く仕向けるだろう。これにより、東アジアの不足バランスは補填される格好となるだろう。

「将来、ナフサが使用できなくなる」と思っていた方へ


以上、3回にわたって石油需要の展望と石油化学産業への影響について解説してきた。本連載を読む前に、「ガソリンが使われなくなり製油所がなくなっていくことにより、そもそもナフサが使用できなくなるのでは?」との懸念を抱いた方もいたかもしれないが、そのような懸念は少し的外れということが、この連載でご理解いただけただろうか。

それよりは、ナフサの価格構造が今後20年で大きく変化する可能性があり、値上がり方向へと向かう可能性がある、という点をしっかり押さえていただければと思う。

プロフィール

柳本 浩希(やなぎもと・ひろき) 株式会社アメレックス・エナジー・コム 石化原料部長 兼 NAPレポート編集長。1985年生まれ。大学卒業後、総合化学メーカーに就職し、石化コンビナートの現場、ナフサの調達、合成樹脂の営業を経験。2016年にAmerex Petroleum Corporation 東京支店入社。現在、株式会社アメレックス・エナジー・コムにてナフサ取引の仲介のほか、ナフサ/石油化学の情報誌の編集責任を務める。

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PlaBase編集部
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