「マテリアルズインフォマティクス」とは何なのか?:マテリアルズインフォマティクス入門(1)

この記事では…
近年の材料開発で注目されているマテリアルズインフォマティクスの基本について、導入を検討するエンジニアの視点で紹介します。

(執筆:一之瀬 隼/ 製造業ライター)

材料開発に関係している人であれば、「マテリアルズインフォマティクス」という言葉を聞いたことがあるでしょう。日本語に訳すと、マテリアルズは材料、インフォマティクスは情報学という意味です。

期待が大きくなっているマテリアルズインフォマティクスについて、今回の記事では、今までの材料開発との違いや開発現場への導入に向けて重要する場合の課題など説明します。

材料開発手法とその課題


材料開発は、主に2種類の考え方で行われています。

1つ目は、ある材料が既に存在し、その構造や組成を観察した結果から、どのような機能や特性を持っているか明らかにする考え方です。企業や大学などの基礎研究でよく用いられています。既に構造や組成が明らかになっているため、似たような構造の材料が持つ特性に基づき、実験やシミュレーションで特性を導き出します。実験を繰り返すと時間がかかりますが、シミュレーションを活用することで、解析時間を短縮できます。

2つ目は、材料の用途が決まっており、求められる特性が明確になっている場合に用いられる開発方法です。どのような構造、組成の材料であれば要求を満たせるのかを明らかにしていきます。製品開発を行う企業内の開発者がよく用いる方法です。仮に狙い通りの構造を持った材料ができたとしても、その材料が要求に合致する特性を持っているかまでは分かりません。「材料を開発し、開発した材料で実験をして確認する」ということを、狙いの結果が出るまで繰り返す必要があります。

このように、新しい材料を開発するには長い期間が必要です。

マテリアルズインフォマティクスが課題解決の糸口になる


マテリアルズインフォマティクスにおいて、機械学習を含む情報処理技術を活用した材料開発手法を用いることがあります。ご存じのとおり、機械学習はさまざまな業界で期待が集まっていますが、材料開発でも同様に従来の課題を解決するための手法として期待を集めています。

マテリアルズインフォマティクスを採用することで、従来はトライ&エラーでしかできなかったことを、機械学習のアルゴリズムが解決してくれる可能性があります。ただし膨大な量の計算をこなすことになるので、高性能なコンピュータが必要になります。

マテリアルズインフォマティクスの実現に必要なもの


材料開発でマテリアルズインフォマティクスを導入するためには、開発する材料に対する幅広い知見と、材料に関するさまざまなデータと、適切な機械学習アルゴリズムが必要です。

機械学習のアルゴリズムと材料に関する豊富なデータがあるだけでは、新たな材料の開発はできません。機械学習に用いられるデータの妥当性と、計算結果の意味合いを理解することが難しいからです。

いままで材料開発を行っており、豊富な知見を持った技術者や開発者が機械学習を利用することで、狙い通りの特性を持った材料を得られる可能性があります。機械学習に投入する計算条件を適切に設定したり、計算結果に対して考察を行ったりするためには、材料に対する深い知見を持つ人材が必要不可欠です。

マテリアルズインフォマティクスを導入する際の課題


材料開発の現場にマテリアルズインフォマティクスを導入する際に、大きな課題となるのが適切なデータの準備です。仮に今まで開発で用いていたデータがあったとしても、機械学習のアルゴリズムに使用できるような形式に変換する必要があります。

また、機械学習のアルゴリズムは複数あり、どの手法を用いれば狙い通りの結果を得られるのかを判断するのは容易ではありません。新しい材料を開発するためには、まず、これらの課題を解決する必要があります。

まとめ


マテリアルズインフォマティクスは、材料開発において大きな期待をされている開発手法です。しかし、簡単に導入できるものではなく、機械学習アルゴリズム、豊富な知見を持った技術者、適切な形式に処理された豊富なデータがあって初めて利用できるといえます。

次回の記事では、実際にマテリアルズインフォマティクスを活用して材料開発を行った事例について紹介します。

プロフィール

一之瀬 隼(いちのせ・しゅん) 自動車部品メーカーの現役エンジニアとして、先行開発から量産展開まで幅広い業務を経験。産まれたばかりの子供の成長を楽しみながら、エンジニアとライターの活動両立に苦戦中! 趣味は旅行(海外も国内も)と美味しいものを食べることと、学ぶこと。

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PlaBase編集部
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