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2018.06.13技術解説

【肉厚】量産のための製品設計その2:射出成形の基本(2)

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前回の連載では、量産のための製品設計のポイントとして抜き勾配について紹介した。2回目となる今回は『肉厚』について紹介していく。

 

量産のための製品設計その2    肉厚

製品の肉厚。すなわち、製品の厚みのことである。この肉厚は薄すぎても、厚過ぎても成形不良の原因となる。製品の大きさや形状の複雑さ・用途などによるので一概には言えないが、一般的な雑貨品や自動車部品などの場合だと、射出成形を行う場合の一般肉厚は1mmから3mm程度に収めたい。

 

また、製品の肉厚はできる限り均一がよい。図1の様に肉厚が変化しているような断面も裏側の肉厚を調整し均一にするのが望ましい。あまりにも急激に肉厚を変化させてしまうとひけやボイド、そりといった不具合の原因になるので注意をしなければならい。

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といっても、製品の機能や用途によってなかなか肉厚を均一にできないのも事実である。その様な場合には、急激に肉厚を変化させてしまうのではなく、図2のように緩やかに肉厚を変化させ樹脂の流動性をよくすることで成形不良を回避するとよい。

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図3のような断面のリブ形状があった場合。一般の肉厚とリブの交差する部分の肉厚がどうしても厚くなってしまう。

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そうなるとこの部分に図4のようなヒケという成形品が凹んでしまう現象やボイドという成形品の中に気泡ができてしまう現象が起きてしまい製品としてはNGになってしまう可能性がある。

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これらは成形の条件で抑えることも可能だが、製品設計の段階で抑えられるにこしたことはない。このヒケを少しでも抑えるためにはリブの肉厚を周りの肉厚より薄くすることで少しでも肉厚の厚い部分を少なくするとよい。

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この例からも分かるように、単純な形状であれば肉厚を単に一定にすればよい。しかし、リブなどの形状によっては肉厚の一部を薄くするなどの工夫が必要となる。

また、このように肉厚の調整をしてもヒケなどの不具合は抑えきれないことの方が多い。最終的には成形条件での調整となるが、できる限り製品設計の段階で不具合の可能性は潰しておきたい。

 

 

量産に向けた製品設計のポイント

  1. 肉厚はできる限り均一にする
  2. 肉厚に変化をもたせる場合にはできる限り緩やかに変化させる
  3. リブなど一般の肉厚と交差するような形状はリブの肉厚を調整するなどしてヒケを抑える。

 

前回の記事はこちら
抜き勾配】量産のための製品設計その1
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・【パーティングライン】量産のための製品設計その3

プロフィール : 落合孝明

1973年生まれ。株式会社モールドテック代表取締役(2代目) 本業の樹脂およびダイカスト金型設計を軸に、デザインから制作手配まで一貫した中小企業の連携による業務展開を行っている。 日本の町工場の持つ『技から生まれる美しさ』を大切にしたプロダクトブランド【FACTONERY】企画・運営。 http://www.factionery.jp/ 著書 金型設計者1年目の教科書』(日刊工業新聞社/2014.03) 『すぐに使える射出成形金型設計者のための公式・ポイント集』(日刊工業新聞社 /2016/12/23)

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