ストレスクラックとはどのような現象か:プラスチックの強度(11)

この記事では…
繰り返しかかる負荷による破壊、ストレスクラックについて解説する。

(執筆:本間精一/本間技術士事務所)

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脆(ぜい)性破壊するときには破壊に先行してクラックが発生するが、すぐに破壊するのでクラックを確認できないことが多い。例えば、引張や曲げ試験、衝撃試験では、クラックが発生するとすぐにクラックが伝播して破壊する。クリープ破壊試験(注1)は一定の応力を負荷して長時間が経過するとクラックが発生するが、応力が負荷されているため、間もなく破壊する。疲労試験(注2)では応力を繰り返し負荷すると、ある繰り返し回数でクラックが発生するが、さらに応力の負荷を繰り返すとクラックは成長して破壊する。

 

一般的にストレスクラックという用語は一定のひずみを負荷している状態で時間が経過するとクラックが発生するときに用いられる。一定のひずみが負荷された状態では応力緩和(注3)するので、ひずみ負荷直後に発生する初期応力は時間が経過すると小さくなるが、ストレスクラック限界応力を超える応力の下では、時間が経つとクラックが発生する。クラックが発生するとひずみは解放されて成長は停止するのでクラックを目視観察できる。ただ、外力が作用すると応力集中源になるのでクラックは成長して割れトラブルになる。

ストレスクラックは時間が経ってからクラックが発生するので「遅れクラック」とも呼ばれている。なぜ遅れてクラックが発生するかについて定説はないが、ひずみが負荷されるといポリマ―間で微小なずれが起こる過程でポリマー末端、微小異物などの欠陥部(応力集中源)からクラックが発生すると推定される。

ストレスクラックは応力が大きくなるほど、かつ温度が高くなるほど発生しやすくなる傾向がある。例えば、図1に示すように、プラスチック成形品に設けられた下穴に金属ボルトを通して締め付けると、締め付け部周囲から放射状にクラックが発生する。

図 ボルト締め付けとクラック発生状態

図1 ボルト締め付けとクラック発生状態

これはボルト締め付けによって、締め付け部周囲の樹脂層を押し広げるようなひずみが発生するということである。このひずみによる応力がストレスクラック限界応力を超えることでクラックが発生する。

表1は、ポリカーボネート試験片を用いてストレスクラック試験をした結果である。

表 締め付けトルク、温度とクラックの発生率

表1 締め付けトルク、温度とクラックの発生率

試験は表に付属した図に示すように試験片に設けられた下穴を金属ボルトで締め付ける方法である。トルクと温度を変えて締め付けて1000時間放置した後にクラックの発生率を調べた結果となっている。

クラックの発生はバラツキが大きいので、1条件で12個の試料を用いてクラック発生率を測定している。表1から、締め付けトルクが大きくなるほど(応力が高くなるほど)クラックの発生率が高くなり、さらに温度が高いほどクラックのクラック発生率が高くなることが分かる。


※筆者注
注1:一定の応力を負荷して、試験片が破壊するまでの時間を測定し、負荷応力と破壊時間の関係を求める試験である。
注2:繰り返し応力を負荷して、試験片が破壊するまでの繰り返し回数を測定し、負荷応力繰り返し回数の関係を求める試験である。
注3:一定のひずみを与えて放置すると時間とともに応力が小さくなる性質である。プラスチックの粘弾性特性の1つである。

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PlaBase編集部
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