子どもからマニアまで、幅広い人に愛されるプラモデルはプラ技術の粋!:おもちゃの設計とプラスチック(10)

この記事では…
プラモデルの成形技術力の高さについて、生産の苦労話も紹介します。

(執筆:おりも みか/製造業ライター)

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プラモデルとは


「プラスチック製のおもちゃ」と言われたときに、「プラモデル」が思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。プラモデルは「プラスチック製のモデルキット」のことで、商標登録もされています。英語では「Plastic Model」と呼ばれており、文字通り「プラスチックのおもちゃ」なのです。

プラモデルの製造方法としては、射出成形(インジェクション)、真空成形(バキューム)、押出成形、ブロー成形などさまざまですが、一般的なのは射出成形です。

製品の幅がとても広く、自動車や飛行機、鉄道、戦艦、城郭などの実在するものを縮小した模型を「スケールモデル」と言い、どの程度縮小したかによって「1/48」(48分の1)、「1/144」(144分の1)などと記されます。それに対して、アニメなどの架空の兵器や武器、キャラクターなどの模型もあります。

バンダイの新作「ENTRY GRADE 1/144ストライクガンダム」

バンダイの新作「ENTRY GRADE 1/144ストライクガンダム」(出典:バンダイのプレスリリース):「初めてガンプラに触れる人」「久しぶりにガンプラを組む人」「ガンプラをこよなく愛する人」などの幅広いユーザーに向けた商品ということです。

プラモデルは大人の趣味!?


プラモデルは通常、部品がランナーに付いた状態で封入されています。まずはパーツを1つ1つランナーから切り離して、組み立てて、接着し、塗装します。時にはウェザリング(汚れなどを再現すること)や墨入れ(部品の輪郭線に塗料を入れ凹凸を目立たせること)もして、精巧な模型を作っていきます。

プラモデルというと、「少しマニアックな大人の男性の趣味」というイメージがある方もいるかもしれません。ですが今、各社おもちゃメーカーから、子どもや女性、初心者でも手軽に作ることのできるキットが発売されていますし、幅広い人が楽しめる趣味として広まっています。幼児向けとして、STマークを取得しているものも少なくありません。

ENTRY GRADE 1/144ストライクガンダムの、ランナーについた部品の例

ENTRY GRADE 1/144ストライクガンダムのランナーについた部品の例(出典:バンダイのプレスリリース):初めての人にも組み立てやすくしたということです。

子ども向けのプラモデル


大人向けと子ども向けの最も大きな違いとしては、「ランナーからパーツを切り離す際、ニッパーなどの工具を必要としない」ということが挙げられます。子ども向けでは刃物は基本的に用いることができないので、ランナーとパーツは「タッチゲート」という、手で押すだけで切り離せる形状になっています。

プラモデル生産で気を使うこと


タッチゲートは通常のゲートに比べてとても細くなっており、手で切り離せる程度の強度でなくてはならない一方で、製造工程でパーツの落下などがあってはならないので、強度が弱すぎてもいけません。部品を外したゲート部に芯(しん)が残り、とがった先端になってしまうのもNGです。

成形工場では、他の成型品に比べ、プラモデルの成型品は丁寧にそろえて箱詰めするなどの配慮が必要となります。また梱包作業でもパーツの欠落がないか確認しながら袋詰めをしたり、最後に成型品が入っていた箱に部品が落ちたりしていないかを確認します。もし1つでもパーツが落ちていたら、一度梱包した製品を開けて確認作業をしなくてはなりません。

タッチゲートは成形性もあまりよくないため、ウェルドラインやジェッティングなどの成形不良に悩まされます。プラモデルは、無塗装で打ちっぱなしの成形品がそのまま製品になってしまうので、表面の問題が隠しようがないのです。成形後に塗装する製品であれば、目立たなくさせることもできるのですが……。

さらにプラモデル生産で頭を悩ませるのが、「製品の結合部の渋さ」です。部品と部品を嵌(は)め合わせる際に、きつすぎて子どもが嵌め合わせることができないのも、緩すぎてすぐ外れてしまうのもNGなのです。この嵌め合わせの渋さというのは、成形条件を少し変更しただけでも変わってしまうという、とても繊細なものです。そのため、成型工程では数時間ごとに嵌め合わせを確認するという検査も行われています。

プラモデルというのは、プラスチック製おもちゃの中でも、誤魔化しが効かない、技術力を必要とする製品なのです。

プラモデルにおける最新の製造技術


プラモデルの製造では、日々、新しい技術が生まれています。例えば、多色成形という異なる幾つかの成形色を一度に1つのランナーパーツに流し込む特殊な技術があり、それ自体が複雑な技術です。しかしそれをさらに進化させ、無塗装のキャラクターの顔を一部品の中で色分けしたり、異なる色で多層に成型した部品の下層の色を透過させて自然な肌の質感を再現したりなど、一見プラモデルは分からないような製品もあります。

プラスチック成形の新しい可能性を感じさせてくれるおもちゃ、それがプラモデルだといえます。(次回へ続く)

プロフィール

おりも みか  新卒入社した玩具製造メーカーにて品質・生産技術担当として日本国内・中国工場での新規ライン立ち上げを経験。玩具、アミューズメント機器、医療機器、健康雑貨など主にプラスチック製品の開発・製造に携わる。結婚を機に退職し、現在は育児の傍ら製造業ライターとして活動中。

Twitter ID:@jilljean0506

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PlaBase編集部
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