射出成形品や金型の設計を加速する技術:元エンジニア工業系ライターが見た「名古屋ものづくりワールド2021」(後編)

この記事では…
元機構系エンジニアの工業系ライターが、2021年4月7~9日までの3日間、ポートメッセ名古屋で開催された「名古屋ものづくりワールド2021」をレポートする。
(執筆:石川玲子/工業系エンジニアライター)

 

2021年4月7~9日までの3日間、ポートメッセ名古屋で開催された「名古屋ものづくりワールド2021」のレポートの前編では、会場の様子や3Dプリンタ技術など、筆者が注目した技術を紹介した。今回は、展示されていた最新設計ツールの情報、今回の展示傾向などについてお伝えする。

射出成形製品の設計スピードをアップするツール


近年、射出成形時の樹脂の流れや反りの解析など、バーチャルでの検証が盛んになっている。特に韓国や台湾では、国を挙げて射出成形のシミュレーション開発に力を入れているようで、複数の会社が国の補助金を利用して開発されたツールを紹介していた。

ソリッドワークス・ジャパンのブース(出典:ソリッドワークス・ジャパン)

ソリッドワークス・ジャパンが展示していた「SOLIDWORKS Plastics」は、射出成形樹脂部品を設計するエンジニア向けのツールで、樹脂の流れの予測や保圧、冷却の解析、反りの予測解析などが可能だ。コンセプトは「設計者が使いやすい解析」。3D CAD「SOLIDWORKS」と一体化しているのが特徴だ。

従来のように設計者が作成した部品の3Dモデルを解析専門のメンバーに託してシミュレーションするのではなく、設計者が設計しながら試行錯誤できるようなツールである。CADとの連携性がよく、設計画面上でシミュレーションを繰り返しながら部品の形状設計ができることが利点だ。「SOLIDWORKS Plasticsの導入により、従来のような解析専門のメンバーに依頼するスタイルと比較し、10倍近い回数のシミュレーションを行えるようになった企業もある」と同社は説明していた。

金型設計のイメージ(出典:コダマコーポレーション

コダマコーポレーションが提供する金型設計支援システム「Top Solid’Mold 7」は、成形品の3Dデータ作成から金型構造設計までの全てを3D CAD上で行える。

成形品データの作成では、穴位置などを変更すれば、それに付随するリブなどの周辺形状も自動的に変更される。PL(パーティングライン)を指定すれば、自動的にPL面が作成され、キャビティとコアブロックに反映される。スライド形状も、PLを指定するだけでスライドや入れ子の形状が設計される。あらかじめスライドレールやアンギュラピンのような標準部品のパラメーターを入れておけば、スライド機構も自動で作成される。加えて、従来であれば2D図面に頼りがちであったモールドベースの配置やエジェクタピンの配置、ランナーやゲートの設計までも3Dデータ上で行える。

金型設計のイメージ(出典:コダマコーポレーション

現地では成形品の3Dデータ作成から金型構造設計までのデモンストレーションを見せてもらったが、全ての処理がスムーズに行われ、あっという間に金型構造設計まで終了した。

このように、Top Solid’Mold 7では多くの設計が自動化され、さらに1つのツールで金型設計の全てが完結できるのだ。3D上で部品を組み合わせるようなイメージで金型設計ができるほか、操作メニューの配置も設計の手順に沿っているなど、使いやすさにも配慮されている。同社によれば「自動設計の処理も非常に速く、自動車のバンパーのように大きな部品であっても、瞬時に処理を終えることができる」という。

近年、多くの業種で若手の育成に十分な力が注げないのが課題となっており、金型業界もまた例外ではない。しかしTop Solid’Mold 7のような金型設計支援ツール使用すれば、金型設計の標準化や若手技術者の育成なども促進でき、設計製造におけるさまざまなな時間を短縮する効果も期待できそうだ。

CAD/CAMソフトウエア、CAEシステムなどを販売するセイロジャパンのブースでは、「Moldex3D」という射出成形シミュレーションツールを紹介していた。Moldex3Dは、台湾で補助金を受けて開発されたツールで、樹脂の流動解析や反り解析のほか、冷却解析までできるのが特徴だ。

「近年の製造業では、製品の小型化や軽量化の流れを受け、プラスチック部品の薄肉化が進んでいる。製造技術面でも従来よりも高いレベルを求められることも多く、生産可能な限界を探るなどの観点から、シミュレーションの重要性も高まっている。また生産現場の情報やベテラン技術者のノウハウが設計者に共有できない、あるいは伝わりづらいといったケースなどでも、画像や動画で表現されたシミュレーションの結果を見ながら落とし所を探れるなどの利点もある」と同社は説明する。

依然としてある工数短縮や技術継承、標準化などの課題とITツールの引き合い増加


射出成形、金型関連に限った話ではないが、設計や検討にかかる時間をより短くし、技術のノウハウを継承しやすくするために、設計の標準化を進めている企業は多い。またコスト削減のために試作回数が限られるケースも多く、初期の試作段階から完成度を高めるため、シミュレーションを活用する企業も増えている。そのような風潮を受け、設計支援ツールや解析ツールの導入も増えていると聞く。

また展示内容全体としては、昨年あたりから非接触の3D測定によるリバースエンジニアリングの出展が盛んになっているように思う。従来は測定が難しかった3次元曲面の測定も、より早く手軽になっており、プレス加工品や樹脂加工品などの測定がさまがわりする可能性もあるだろう。また測定が3D化していくことにより図面や寸法基準に対する意識が変化していく可能性もあり、今後もその動向を注視していきたい。

中小企業や地域産業振興などのブースに目が届きやすくなったか


会場の様子:エントランスのコロナ対応

昨年(2020年)の名古屋ものづくりワールドは、来場者数もおよそ1万人にとどまり、出展中止の空きブースやオンライン商談セットだけが設置されたブースも多く見られた。今回の展示会は、昨年に比べると出展社、来場者ともに多く、賑わっていた印象だ。昨年は多く見られた足踏み式の消毒台など、コロナ対応商品に絡めた技術力アピールも今年は少なく、専門企業以外からのコロナ対策商品ブームは一段落したように思えた。

一方、超大手加工機メーカーなどを含め、まだまだ出展を控えている企業も多い。特に中国や台湾を中心とした外国企業の出展は激減しており、コロナ禍以前に比べると全体的に少々こじんまりとしている。しかし超大手の出展が少なくなった分、小さいブースに目が行きやすくもなっている。特に地方の産業振興センターなどの合同出展などは、普段は交流しにくい中小企業が集まっているため、覗いてみると思わぬ発見があったりした。

IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)系については特に大きな動きはなく、工作機械の稼働率などをリモートでチェックするシステムなどの展示が多かった。一昨年あたりと比較しても劇的な変化は見られない印象だった。

(終わり)

プロフィール

石川玲子(いしかわ・れいこ)
工業系エンジニアライター

工学部機械工学科を卒業後、自動車部品メーカーや電気機器メーカーの設計部門でエンジニアとして勤務。
第二子の出産をきっかけに退職し、ライターとして独立。
工業と執筆、両方の知識を持っていることを武器に、エンジニアへのインタビューや工業大学の活動を紹介する記事などを書いている。URL: http://mechawriter.com/

sample
PlaBase編集部
PlaBase[プラベース]

これまでカタログや材料メーカー各社のホームページ内に散在していた樹脂(プラスチック)成形材料の情報をPlaBaseに集約しました。 メーカー・樹脂名・物性値など多様な検索方法によって、お客様の目的に合った樹脂成形材料のデータを探し出すことができます。