2018.012.05連載

スイゼンジノリ由来の超吸水ポリマー“サクラン”の応用展開

吸水性超巨大高分子サクラン

異常気象など地球環境問題の深刻さが指摘されはじめ、このままではいけないと感じた高校時代。
一方で素材技術が進展する中“腐るプラスチック”生分解性樹脂も登場、科学技術に対する知的好奇心も芽生えた、と語る北陸先端科学技術大学院大学の金子教授。
今回は九州の一部にしか自生しない希少なスイゼンジノリから得られ、自重の約6,000倍の水を吸う超巨大高分子「サクラン」の可能性についてお話を伺いました。

天然素材への思い

杉本:当初バイオポリエステル研究用の素材として、ポリフェノールを原始ラン藻類のスイゼンジノリから抽出しようと検討される中、その過程で副産物として得られた多糖類サクランに注力していかれた経緯についてお聞かせ下さい。
写真1 養殖されたスイゼンジノリ
写真2 サクランゲル
金子:ラン藻類の研究者であれば誰もが知るスイゼンジノリは単離培養が難しく、生物学的視点からは研究素材とはされていませんでした。また、古くから自然養殖に取り組んできた椛田教授(東海大名誉教授)からは絶滅寸前であることも知らされました。
研究者として、素材の新規性もさることながら、天然資源・環境保護への観点からもテーマに据え、サクラン発見者である岡島麻衣子研究員とともに、より多くの人に関心を持ってもらえるよう高付加価値化を狙いました。
現在では「サクラン研究会」も発足して活発に活動しています。
写真3 サクラン研究会が著した書籍

機能性素材としての可能性

杉本:大量の水分を抱えることの出来るサクランですが、今後はどのような展開をお考えでしょうか。
金子:スイゼンジノリは古く江戸時代から食用として珍重されてきており、得られるサクランは、その高吸水性から保湿スキンケア材料としても展開されている非常に安全な素材です。食べたこともありますが、プルッとしていながら歯切れも良く美味しいですよ(笑)。
これまで様々な天然植物素材の構造・機能を研究対象とし、細胞レベルでの検証も行なってきた知見を活かして細胞培養用基材への応用も図っています。最新の成果では、サクラン製フィルムで作製したミルフィーユ状積層体側面に整然とマウス由来細胞が並ぶ様子を確認しています。
今後は学内共同で他の細胞培養への応用も検討していきます。
図1 サクランフィルム積層体(天面と横面)
■北陸先端科学技術大学院大学
金子達雄教授
金子教授研究室にて
・略歴
1997年
3月東京工業大学大学院理工学研究科高分子工学専攻入学中途退学(北海道大学
助手として赴任の為)
4月北海道大学大学院理学研究科生物科学専攻・助手
1998年
5月学位取得(博士(工学):東京工業大学)
2001年
7月鹿児島大学工学部応用化学工学科・助手
2002年
4月鹿児島大学大学院理工学研究科ナノ構造先端材料工学専攻・助手
2004年
4月大阪大学大学院工学研究科分子化学専攻・助手
2005年
4月大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻・助手
2006年
5月北陸先端科学技術大学院大学マテリアル
サイエンス研究科・助教授
2007年
4月北陸先端科学技術大学院大学マテリアルサイエンス研究科・准教授
2012年
7月-12月カリフォルニア大学ロサンゼルス校客員准教授
2015年
10月北陸先端科学技術大学院大学「高性能天然由来マテリアル」エクセレントコア研究拠点長
2016年
3月北陸先端科学技術大学院大学マテリアルサイエンス研究科・教授
4月北陸先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科・教授
4月北陸先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科・環境エネルギー領域長
2017年
4月北陸先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科評議員
現在、未利用生物資源の活用に関する研究に取り組んでいる。
・研究室
・聞き手
金森産業株式会社 事業開発室 杉本
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PlaBase編集部
PlaBase[プラベース]

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