3Dデータが創る、製品・金型設計のこれから:製品設計者が見た「INTERMOLD 2021」(前編)

この記事では…
東京ビッグサイトで2021年4月14~17日に開催された金型加工技術展「INTERMOLD 2021」(以下インターモールド)について、製品設計者でもあるライターがレポートする(前編)。

(執筆:重田亮治/製造業ライター)

金型加工技術展「INTERMOLD 2021」(以下、インターモールド)が、2021年4月14日から17日にかけて、東京ビッグサイトで開催された。

インターモールドは、金型加工技術を中心に、それを取り巻く工作機械、測定機器、デジタルソリューションなどが一堂に会する専門展だ。2020年はコロナ禍によりオンライン開催となったが、今回はリアル(実地)展として2年ぶりの開催となった。ただ、会期前に再び感染者数が増加傾向に転じていたこともあり、企業側も出展を取りやめたところが少なくなかった。

▼大手企業が出展予定だった場所が、まるまる休憩スペースになっていた

▼大手企業が出展予定だった場所が、まるまる休憩スペースになっていた

筆者は長らく自動車向けパワートレイン・コンポーネントの設計業務に携わってきた。製品の性質上、プラスチックよりも金属を相手にすることの方が多いのであるが、高機能化が著しいプラスチックの最新事情を目にすることができ、大変刺激を受けた。

本記事では、そんな製品設計者の視点からの紹介していきたい。

ジーベックテクノロジー

▼金型磨きコンテストの受付。コロナ対策のアクリルの壁が

▼金型磨きコンテストの受付。コロナ対策のアクリルの壁が

会場のゲートを通過し最初に目に入ったのが、ジーベックテクノロジーのブースだ。同社は、割れに強いセラミックファイバーを用いたバリ取りツールを総合的に手掛けている。近年ではバリの出ない面取りカッターも開発し、多くの特許も取得しているのが強みだ。

そして同社が毎年開催している「金型磨きコンテスト」は、インターモールドの名物ともなっているという。これは制限時間3分でSKD11のプレートを「XEBECマイスターフィニッシュ」を使って、どこまで面粗度を向上させることができるかを競うものだ。

筆者もお誘いいただいたので挑戦することにした。

▼金型磨きコンテスト

スティックタイプの砥石は手になじむだけでなく、番手ごとに色分けされており、使い勝手が良い。結果は「Ra0.123」。上位ランクの方々は「Ra0.06」台でそれには及ばなかったもののたったの3分でここまで面粗度が出せるのには驚いた。

これからの製品や金型の設計は、どうなる?


3D Printing Corporation

▼Mark Twoの実機

▼Mark Twoの実機

3D Printing Corporationのブース内で稼働していたのはMarkforged社の連続炭素繊維3Dプリンタ「Mark Two」である。その完成度の高さから、従来のマーケットのみならず新領域においても急速に採用が広がっているモデルだ。

このCFRPによる造形が可能なプリンタの強みは成形精度が高いことだ。熱溶解積層(FDM)方式では、積層品には寸法誤差が少なからず発生する。これはFDM方式が熱可塑性プラスチックの溶解および凝固による造形法であることから、その際に生じる凝固収縮も蓄積されるためだ。一方、炭素繊維の線膨張係数は非常に小さい。このため複合材とした場合にも、従来と比較して寸法精度が大きく向上する。

「Mark Two」は2つのノズルを備えている。それぞれ連続繊維をあらかじめ含浸したCFRPフィラメントと、プラスチックまたは短繊維を分散したCFRPフィラメントを扱う。独立したノズルがあることで、強度に優れる連続繊維CFRPフィラメントを製品の外周部へ優先的に積層するといった機能性付加が可能。アルミニウム合金と同等の強度が出せるという。造形品を手に取ってみて驚いたことは、その質感の良さだ。積層痕も少なく、マットな触り心地には高級感すら覚えた。開発現場での製品試作はもちろん、極小ロットの部品製造にも十分適用できるのではないだろうか。

さらに同社ではプリンタ本体だけではなく、その周辺分野にも力を入れている。直近開発されたものは、治具設計を自動化するソフトウェアだ。治具設計はさまざまな場面で必要となるプロセスだが、かなり手間と時間を取られる。

本ソフトウェアは治具設計を簡単かつ高速に行える。あらかじめ空間や拘束の条件を定義したプロファイルを用意し、対象部品のモデルをインプットすれば、数秒のうちに治具設計が完了する。

後はこのデータを3Dプリンタで出力するのもいいし、切削加工に使用することもできる。製造現場はもちろん、開発品の試験治具設計や梱包緩衝材の形状検討など幅広く使えるように感じた。

データ・デザイン

▼データ・デザインのブース

▼データ・デザインのブース

従来CAMといえば、「NCデータの作成」というピンポイントの機能を担っていたが、今後は設計、製造、組立、検査といったフロー全体がつながるとデータ・デザインは考える。このフローから蓄積された知見をもとに、自動化やAIによるアドバイスを提供することが可能だ。金型加工支援にも使われている「Smart Machining」は、その一端を垣間見えるソフトウェアだ。

通常NCデータを作成するプロセスは形状データの取り込み、加工、切削条件を設定する。それに基づきツールパスチェックを実施、ポスト処理を経てデータが完成する。本ソフトウェアではこれらがAIを用いたエンジンによって自動化されている。もちろんユーザーによって所有している加工機、工具、扱う材質などはまちまちであり、それらの情報や実績データはテンプレートとして登録しておく必要がある。

しかし実際のオペレーションでは、新規加工データといくつかの情報をインプットすることで最適条件を選択してくれるのだ。このように自動化が進むと、従来のオペレータはルーチン的なNCデータ作成業務から解放され、テンプレートの作り込みに専念することができるようになる。そしてこれこそが、各社のノウハウとして育っていくのだ。

同社のブースでは、3Dスキャナーと3Dプリンタも展示を行っていた。3DスキャナーはArtec3D社の「Artec Leo」でスタンドアロン使用できるスマートなもの。

▼Artec Leoのデモ

現場での使用を考えるとPCが不要なのはうれしいポイントだ。3DプリンタはMarkforged社の「Mark Two」とFormlabs社の光造形(SLA)方式の「Form3」を展示。後者はレジンの種類も豊富にあり、ゴムライクなものや耐熱、耐摩耗性に優れた材質など、幅広く選べるとのことだ。

(次回へ続く)

プロフィール

重田 亮治(しげた・りょうじ)

大学院にて機械工学、塑性加工学を修了後、自動車業界Tier1メーカーにてトランスミッションやターボチャージャ、EV向けパワートレインなどの設計に携わる。北米、欧州、中国・アジア諸国等のステークホルダーとの開発を経験。一方、パイプオルガンの製作、修復にも携わっており、工学と芸術の境界領域にも興味を持つ。機械設計者としての知見を軸に、技術系ライターとしても活動中。

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PlaBase編集部
PlaBase[プラベース]

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