バイオプラ関連で奮闘する中小企業:製品設計者が見た「INTERMOLD 2021」(後編)

この記事では…
東京ビッグサイトで2021年4月14~17日に開催された金型加工技術展「INTERMOLD 2021」(以下インターモールド)について、製品設計者でもあるライターがレポートする(後編)。

(執筆:重田亮治/製造業ライター)

>>前編はこちら

金型加工技術展「INTERMOLD 2021」(以下インターモールド)が、2021年4月14日から17日にかけて、東京ビッグサイトで開催された。

前回に引き続き、今回もいくつかの出展企業を、設計製品者の目線で紹介していく。

後編では3Dスキャンや樹脂流動解析ツールなどを紹介した後、中小企業によるバイオプラへの取り組みを紹介する。

セイロジャパン

▼HandySCAN3Dの展示

▼HandySCAN3Dの展示

セイロジャパンは金型設計、製作に関するトータルソリューションを展示していた。中でも目を引いたのが高精度3Dスキャナー「HandySCAN 3D」である。3Dスキャナーは各種発売されているが、こちらはハンディながら25/1000mmまで再現できるため、既存金型のデジタル化にも使用可能だ。精度保証も可能なため、正式な品質保証データとして活用できる。

筆者も経験があるのだが、かなり昔に製作した金型を更新しなければならない場合、満足な図面が残っていないことがある。また流体機械などでは性能が変化しないよう現状の製品形状をなるべくトレースすることを求められたりする。そのときは製品を切り刻むなどして計測を繰り返すのだが、大変な手間と時間を必要とする。このようなときHandySCAN 3Dがあれば複雑形状であっても簡単、高速にデジタル化することができる。読み取ったデータは外部ソフトウェア上でSTL形式やパラメトリックデータへの変換も可能だ。

データは流動解析などにも活用できる。同社は射出成形用3D樹脂流動解析ソフトウェア「Moldex3D」も販売している。今さら言うまでもないが、納期に対する要求はますます高まっており、いかにフロントローディングで手戻りを少なくするかが対応力のカギになる。射出成形においても流動解析によっておおよその当たりを付けておき、試打ち結果を見て必要があれば修正するというのが一般的だ。

特に近年採用が進むスーパーエンプラは従来のプラスチックと比べても欠陥が顕在化しやすかったりする。また繊維、粉末強化複合材などの利用も広まっており、その場合は強化材の偏りや配向なども製品強度に影響を及ぼす。

このようなこともMoldex3Dを使えば高精度に予測することが可能だ。筆者としては製品設計者でも使いやすいハードルの低さに大きな魅力を感じた。日常的には金属部品がメイン、たまにプラスチックも扱う部署の場合、設計ノウハウに乏しいことがある。筆者も設計したプラスチック部品の歩留まりが非常に悪かったり、反りが出てしまい苦労した経験がある。Moldex3Dがあれば、そのような事前検証も簡単に行うことができる。

バイオプラ関連に取り組む中小企業


エムアイモルデ

▼エムアイモルデのバイオプラ関連展示

▼エムアイモルデのバイオプラ関連展示

エムアイモルデは、マイクロセルロースファイバー配合プラスチックによる「持続可能な脱炭素社会を目指して」をテーマに出展していた。脱炭素という大きなテーマに対し、同社も以前から金型技術を軸に、この新材料に焦点を当て取り組んでいる。

現在、セルロースファイバーの最大配合比率は55%。製品形状やランナーが細い場合などは湯流れに問題が生じるため、プラスチックを足して“希釈”する。線幅0.6mmなど微細な構造を持ったスピーカーグリルなどの成形もできるだけでなく、ファイバーによる強度アップも図れる。

最新の製品は紙製品メーカーと協力して製作した、日本酒の贈答用ケースだ。こちらは円筒部分が紙製でできているのだが、上下の蓋に同社のセルロースファイバー55%配合のプラスチックが使われている。面白いことに、セルロースファイバー51%以上の配合比率であれば紙製品として扱われる。つまりこのケースも、“オール紙製”ということになるのだ。

金型業界は今後さらに現地調達、地産地消化が進むと考えられている。エムアイモルデ代表取締役の宮城島俊之氏は、「こうした市場変化に対しても踏ん張れるよう、従来の金型技術に加えて自社製品、先行開発という3本の柱を立てて乗り切っていきたい」と意気込みを語ってくれた。

ペッカー精工

▼ペッカ―精工のバイオプラスチック製品の展示(タンブラーなど)

▼ペッカ―精工のバイオプラスチック製品の展示(タンブラーなど)

ペッカー精工は生分解性プラスチックであるPLAやPBSを使ったバイオプラスチック製品を出展していた。同社は試作モデル製作や金型設計などを行っているが、12年前よりバイオプラスチックにも取り組んできた。近年のSDGsや脱炭素の動きに呼応して引き合いも増加しているという。

展示品で目を引いたものがコーヒーかすとサトウキビかすをプラスチックに配合したタンブラーだ。その配合比率は実に60%。なんと香りを嗅(か)ぐといい匂いがする。ペッカー精工の代表取締役社長 小泉秀樹氏は昨今のプラスチックを紙に置き換える動きは本質的ではなく、ごみ自体を減らさなければ意味がないと語る。このように本来廃棄されるコーヒーかすなどに着目したのもこのためだ。

また昨今売上を伸ばしているものが銀行などで使われるキャッシュトレイだ。生分解性であることに加え、抗菌機能ももたせることで既に1万個以上出荷しているという。また美しい印刷や会津塗りを施したタンブラーや盃も同様にノベルティグッズなどに人気があり、1万個以上売り上げているとのことだ。

コロナ禍だから見いだす価値の模索


インターモールドは今回2年ぶりのリアル展とはいえ、依然としてコロナ禍の最中ということもあり、通常よりも来訪者は少ないとのコメントを多く耳にした。それでも各社ウェビナーなどによる営業活動割合を増加させたり、コロナ禍だからこそ求められる製品を提案したりして成長を模索しているように感じた。

プロフィール

重田 亮治(しげた・りょうじ)

大学院にて機械工学、塑性加工学を修了後、自動車業界Tier1メーカーにてトランスミッションやターボチャージャ、EV向けパワートレインなどの設計に携わる。北米、欧州、中国・アジア諸国等のステークホルダーとの開発を経験。一方、パイプオルガンの製作、修復にも携わっており、工学と芸術の境界領域にも興味を持つ。機械設計者としての知見を軸に、技術系ライターとしても活動中。

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PlaBase編集部
PlaBase[プラベース]

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