おもちゃの性能、どこまで追求するべきか?:おもちゃの設計とプラスチック(11)

この記事では…
各メーカーの独自性が出るおもちゃの「性能」についてお教えします。

(執筆:おりも みか/製造業ライター)

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おもちゃの「性能」とは


おもちゃにとっての「性能」は、遊び、外観、耐久性など、必須項目である安全性以外の要素のことを指します。おもちゃの商品としての魅力となる部分であり、売りとなる要素のことです。

現在では、おもちゃは手頃なものから高額なものまで、広い価格帯で販売されています。例えば積み木の場合、100円ショップで購入できる一方で、国産木材や職人の手作りであったり、有名ブランドが付いていたりなどの付加価値があることで、その価格差は100倍にもなることが珍しくありません。

面白い点としては、高額であればあるほどSTマークを取得していない商品が多いということです。高額なおもちゃは、STを取得することによって受ける制約よりも、別の付加価値を高めることを優先しているわけです。

一方でおもちゃメーカーが発売するおもちゃは、ある程度の価格帯が決まっています。安全性は必ず確保した上で、コスト内でどこまで性能を上げ、売れるおもちゃになるかがメーカーの腕の見せ所です。

「遊び」とは


遊びとは、「おもちゃがどのような遊び方ができるのか」「何が子どもにとって面白いポイントであるのか」ということです。おもちゃは子どもが遊ぶものですから、必ず何かしらの遊び要素がなくてはなりません。その上で、例えば積み木ならば様々な形があったり、キャラクターや建物の形を作ることができたり、上に積むだけではない別の遊びを提供することで付加価値を付けることが可能です。

外観


おもちゃにとって外観は大事であるということは第4回でお話しました。では、どこまで追求するのか。ウェルドラインが出ていても、小さな異物が混ざっていても、塗装がはみ出ていても、実際子どもがおもちゃで遊ぶ分にはほとんど支障はありません。

また「おもちゃが衛生的かどうか」というのは、親にとって大きな関心ごとです。成型品や塗装だけでなく、パッケージ内に髪の毛などの異物の混入は即クレームにつながります。

全く何の不良もない製品が良いのはもちろんですが、現実的ではありません。そのため異物や成型不良、塗装不良はどこまで許容するのかという基準を決める必要があります。この基準によって不良率が大きく変動し、コストにかかわってきます。

耐久性


子どもの年齢によって、求めるおもちゃはどんどん変化していきます。定番でない限り、アニメもおよそ1年で終了してしまうということもあり、使用年数は1~2年程度で想定されています。そのため耐久試験の回数も1年間子どもが遊ぶと仮定して算出します。

経時による変化はサイクル試験によって検証されますが、多少の差異があっても、遊びに影響がなければ特に問題視はされません。外で遊ぶお砂場セットなどのおもちゃは、紫外線によるプラスチックの退色劣化がよく見られますが、おもちゃでは耐用期間の短さからあまり対策はされていない傾向にあります。

全てはコストとの兼ね合い


おもちゃは価格帯がある程度決まっているため、全てを完ぺきにできるわけでもなければ、あれもこれも新しい機能を追加できるわけでもありません。むしろ機能や遊びについては、シンプルで分かりやすい方が訴求しやすいという面もあり、何を取捨選択するかがポイントとなってきます。

決められた開発予算内でいかに工夫し、独自性を出し、子どもに喜んでもらえるおもちゃを作れるのか。親が安心して子どもに与えられる品質を保つのか。おもちゃメーカーが苦心している部分でもあります。

おもちゃは、ベースの金型をほとんど変えずに追加パーツや色、キャラクターを変えて新製品を発売することも珍しくないため、似たようなものを毎年発売していることもあります。これも高額な金型費用を抑えるためには必要なことです。

性能は、安全性(ST基準)とは違い、各メーカーの独自性を出せる部分です。性能に注目すると、おもちゃの世界の奥深さを知ることができるでしょう。

(次回へ続く)

プロフィール

おりも みか  新卒入社した玩具製造メーカーにて品質・生産技術担当として日本国内・中国工場での新規ライン立ち上げを経験。玩具、アミューズメント機器、医療機器、健康雑貨など主にプラスチック製品の開発・製造に携わる。結婚を機に退職し、現在は育児の傍ら製造業ライターとして活動中。

Twitter ID:@jilljean0506

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PlaBase編集部
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