欧米が世界の石化相場をけん引する

この記事では…
米国の寒波以降における、米国とアジア圏の石化製品市場の動きについて解説する。

(執筆:柳本 浩希/株式会社アメレックス・エナジー・コム 石化原料部長 兼 NAPレポート編集長)

2021年2月中旬に米国を襲った寒波の影響から、アジアの石化製品相場は軒並み値を上げている。しかし、世界最大の輸入国である中国国内の相場は同年3月に入ってから足取りが重く、アジア相場に対して大幅に安値を付けており、今後アジア相場の調整局面を誘引する可能性が出てきている。

通常、中国国内相場はアジア相場よりも高値で推移してきた。図1のグラフにおける灰色面が中国とアジアとの値差を示している。

図1:中国とアジアにおけるLLDPEの価格推移比較

これまで2019年5月の米中間の貿易戦争を背景とした中国国内相場の下落時など、一時的に中国国内相場がアジア相場に対して安値になることがあったが、1~1.5カ月程度でアジア相場が下落することによってバランスした。アジアマーケットにおける最大の需要家たる中国が基本的には「主」であり、アジア相場が「従」であるとするならば、足元のアジア相場が相対的な割高な状況は早晩解消されると見ていた。
直鎖上低密度ポリエチレン(=LLDPE)の中国国内相場とアジア相場との値差を図2のグラフに示した。

図2:LLDPEの中国国内相場とアジア相場

中国は汎用樹脂において不足ポジションであることから、中国国内で生産される石化製品は重宝され、不足分を輸入するバランスとなっている。そのため、通常時はアジア相場よりも中国国内相場の方が高値となる。2020年10月~2021年2月もほとんどのタイミングでオレンジ色の線で示した中国国内相場は青色で示したアジア相場よりも高値となっていることが分かる。

米国の寒波が襲来した2021年2月も、中国本土は春節休み期間中だったため相場はすぐに反応し、大幅に値上がりした。しかし、2021年3月に入ってからは、中国国内相場は需要家が高値警戒感から調達を渋り、反落基調となった。一方、アジア相場は米国の需給タイト化を背景に続伸。両者の値差は1トン当たり60ドルにまで拡大した。

同様の傾向は、LLDPEだけでなく、ABSやPS(ポリスチレン)など他の汎用樹脂にも言える。なぜ2021年3月に入ってから続伸するアジア相場に連動できなかったのか。1つ目の要因は、中国の需要家の調達意欲鈍化が挙げられる。米国の装置が再稼働してきていることから、足元の高値の相場に対して調整が入ることを見通して買い渋っている可能性がある。

また、昨年の補助金政策の反動から、実需の伸びが鈍化しているという可能性も否定はできない。2つ目は、中国国内のサプライヤーが定修をスキップさせて増産している点だ。特にポリオレフィンにおいてはプロパンやメタノールからの一貫生産装置において、足元の良好なマージンを背景に定修をスキップさせる動きが見受けられた。供給が想定よりも潤沢となっていることから、サプライヤーの販売意欲が高まっている可能性がある。

このように、足元で独歩高となっているアジア相場は、軟調に推移する中国国内相場を横目に調整安の圧力が高まり、PEにおいて小生の想定通り反落した(下のグラフを参照されたい)。が、しかし中国の輸入が圧倒的に多いPEを除いて、その他の樹脂においてアジア相場はほとんど値を下げず高値にて張り付いた。

この要因はひとえに欧米相場が異常な高値にて推移したことから、アジア相場は中国国内相場が値を下げても全く反応しなかったと言える。特に米国では寒波による生産装置の停止を背景に合成樹脂の在庫が減少したとともに、ワクチン接種が拡大し製造業の稼働も引き上げられ(景気が急拡大し)、需要が急増。需給はタイトとなりこれまでアジア相場に対して安値圏にあった欧米の相場は大幅に上昇し、世界の相場をけん引した。

本来、シェール由来の石化製品が増産されることにより、米国の相場は世界で最も安値になるだろうと言われていた。それが、コロナショックによるシェール産業の衰退と寒波による生産減を背景に、このありさまである。将来の仮説は常に最新の社会、環境情勢を踏まえた上で更新しなければならない。そのことを思い知らせた、今回の欧米相場の高騰となった。

プロフィール

柳本 浩希(やなぎもと・ひろき) 株式会社アメレックス・エナジー・コム 石化原料部長 兼 NAPレポート編集長。1985年生まれ。大学卒業後、総合化学メーカーに就職し、石化コンビナートの現場、ナフサの調達、合成樹脂の営業を経験。2016年にAmerex Petroleum Corporation 東京支店入社。現在、株式会社アメレックス・エナジー・コムにてナフサ取引の仲介のほか、ナフサ/石油化学の情報誌の編集責任を務める。

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