PETリサイクルの取り組みのいろいろ:プラ業界の「環境との共存」(4)

この記事では…
ペットボトルなどに使用される汎用樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂のリサイクルに関する取り組みなどについて解説する。

(執筆:柳本 浩希/株式会社アメレックス・エナジー・コム 石化原料部長 兼 NAPレポート編集長)

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今回はペットボトルやポリエステル繊維、フィルム向けに使用されている汎用樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂のリサイクルに関する取り組みを紹介したい。PET樹脂は汎用樹脂の中でも物質的(化学構造の)安定性を背景に、ポリオレフィンなどに比較してリサイクルしやすいことから、多くの企業がリサイクルに対して本格的に取り組んでいる。これらは、低炭素社会の実現に向けた取り組みの1つである、マテリアル/ケミカルリサイクルの分類に属する。なお、このリサイクルの概要や他の再生可能原料(バイオ)を使用したプラスチックなどの取り組みとの関係については『「環境に優しい」ってどういうこと? 環境配慮型プラスチックのいろいろ」を参照いただきたい。

サントリーによるサステナブルPETボトル


サントリーは、ペットボトルリサイクルの一部工程を省くことで、環境負荷低減と再生効率化を実現する「FtoPダイレクトリサイクル技術」を、協栄産業、イタリア・SIPA社、オーストリア・EREMA社と共同開発した。FtoPダイレクトリサイクル技術とは、ペットボトルから再生ペットボトルを作る「ボトルtoボトルリサイクル」をさらに発展・効率化させたもので、回収したペットボトルを粉砕・洗浄したフレーク(Flake)を高温、真空下で一定時間処理し、溶融後、直接プリフォーム(Preform)を製造できる技術だ。プリフォーム製造までに結晶化処理や乾燥など多くの工程が必要だった従来の仕組みと比較すると、CO2排出量を約25%削減できるとしている。

このようなマテリアルリサイクルとは別に、サントリーは米国のバイオベンチャーであるアネロテックと共同で非食用の植物由来原料からベンゼン・トルエン・キシレンを生成する技術開発を進めており、2030年までに全てのペットボトルにリサイクル素材あるいは植物由来素材のみを使用し、化石由来原料の新規仕様をゼロにすること(すわなち、100%サステナブル化)を目指している。

この技術はPET樹脂以外にも応用できるとし、2020年6月にアールプラスジャパン(サントリー、東洋紡、レンゴー、東洋製罐グループホールディングス、J&T環境、アサヒグループホールディングス、岩谷産業、大日本印刷、凸版印刷、フジシール、北海製罐、吉野工業所、セブン&アイ・ホールディングス、カルビーが出資)を結成。PET樹脂のみならず、ポリオレフィンやPSのケミカルリサイクルへの応用も期待される。

PETのケミカルリサイクルも国内での検討が本格化


アネロテックなど海外の化学会社だけがPETのケミカルリサイクルを進めているわけではない。日本では三菱ケミカルがキリンとの間で、ポリエチレンテレフタレート(PET)リサイクルに関する検討を開始したことを発表した。同検討では、廃棄PET ボトルからリサイクルPET ボトルへの再資源化(ケミカルリサイクル)を目的としており、同リサイクル技術に関する研究開発および実用化を目指していく。2025 年に同リサイクル技術の確立、2027 年に同リサイクル技術の実用化(ケミカルリサイクル工場の稼働開始)を見込んでいる。

現在、日本国内におけるPET ボトルからPET ボトルへのリサイクル率は低く、廃棄PET ボトルの多くが食品包装や衣類などのPET 製品へリサイクルされた後、焼却処理されている。また、メカニカル(マテリアル)リサイクルされたPET樹脂は繰り返し再生することで品質が劣化することが確認されており、課題となっていた。同背景下、今回の検討を通じて、限りなく永遠に近いサイクルを構築するPET リサイクルの構築を目指すとしている。

商社もPETリサイクルの商機を逸しない


パッケージという意味で、サプライチェーンの出口に当たる最終消費財や容器メーカー、そして入口に当たる化学メーカーのみならず、その中間に位置する国内大手商社もこの社会の変化をただ静観してはいない。丸紅はイオンとの間で、プラスチックリサイクル事業を開始することを発表した。PETボトルのリサイクルを予定しており、イオンが廃棄PET ボトルの回収およびリサイクルPET ボトルの販売を、丸紅が廃棄PET ボトルの流通システムの構築運営、リサイクル、再商品(ボトル)化を担当する。2021 年内に関東地域への事業展開を予定しており、順次、全国展開を進めていく予定。イオンは2030 年までにプラスチック製品におけるバージン材の使用量を50%削減させる目標を打ち出しており、丸紅との協業を通じて目標の達成を目指す。

また、双日は日本環境設計との間で、ケミカルリサイクル事業に関する提携を締結した。日本環境設計は、PETからその化学的中間体であるBHET(ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート)を抽出可能な独自リサイクル技術の開発に成功しており、同提携を通じて、同リサイクル技術を採用した工場の新設を予定している。同工場の生産能力は年間2万2000トンを予定しており、現時点では2021年夏頃の稼働開始を見込んでいる。

フィルム分野でもリサイクルが進む


PETのリサイクルの波はボトル分野にとどまらない。東レは2020年12月に環境配慮型PET フィルム「Ecouse(エコユース)」の開発を発表した。PET フィルムは主に、電子部品、包装材料およびディスプレイ関連向けなど幅広い用途にて使用されている。特に電子部品用フィルムは、フィルム製造から廃棄までのサプライチェーンが比較的短いことから、使用済みフィルムのリサイクルシステムの検討が進められてきた。

しかし、サプライチェーンの各工程で使用される多種多様な塗材、樹脂などを除去できる方法がこれまでなく、フィルムへの再利用は困難なため、廃棄物処理やサーマルリサイクルでの活用が中心となっていた。今回東レは、サプライチェーン各社と協力して、電子部品用途における使用済みPET フィルムを回収し再利用するリサイクルシステムを構築することを実現した。

なお、今回開発したPETフィルム「Ecouse」シリーズは、化石由来原料および廃プラスチックの削減に加え、CO2 排出量を従来品比で約30%から最大50%程度削減できるとしている。

世界ではインドラマが圧倒的


日本から離れ世界を見ると、巨大な樹脂メーカーが中心となってリサイクルの取り組みを構築しつつある。タイに本社を置く世界最大のPET樹脂メーカーであるインドラマは、15億ドル(約1630億円)を費やして世界各地のPETリサイクルメーカーを買収ないしは、自社で拠点を創設することにより、リサイクルPETボトルの生産を2025年までに現状の25万トンから75万トンへ3倍の水準へと増加させる(年間500億ボトルの生産能力に相当)。買収した会社の拠点も含め、世界で9つの拠点(フィリピン、タイ、ポーランド、オランダ、フランス、アイルランド、米国、メキシコ、ブラジル)でマテリアル/ケミカルリサイクルを実施していく。

今回は、日本およびグローバルなPETリサイクルの取り組みを紹介した。PETは他の汎用樹脂に比べてリサイクルしやすい特徴があり、今後もその特性を生かした取り組みが急速に広まるだろう。

(次回へ続く)

プロフィール

柳本 浩希(やなぎもと・ひろき) 株式会社アメレックス・エナジー・コム 石化原料部長 兼 NAPレポート編集長。1985年生まれ。大学卒業後、総合化学メーカーに就職し、石化コンビナートの現場、ナフサの調達、合成樹脂の営業を経験。2016年にAmerex Petroleum Corporation 東京支店入社。現在、株式会社アメレックス・エナジー・コムにてナフサ取引の仲介のほか、ナフサ/石油化学の情報誌の編集責任を務める。

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PlaBase編集部
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