おもちゃを奪う大人たち――これからのおもちゃに求められるものとは:おもちゃの設計とプラスチック(12)

この記事では…
取り巻く環境が大きく変化する中、おもちゃの「住み分け」が難しくなっている現状についてお話します。(最終回)

(執筆:おりも みか/製造業ライター)

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おもちゃ大賞に大きな変化が!


コロナ禍の影響で、「東京おもちゃショー2021」が去年と引き続き中止となりました。今回「日本おもちゃ大賞2021」は発表されたのですが、これまでとは大きな違いがありました。従来あった「ボーイズトイ/ガールズトイ部門」が廃止され、新たに「キャラクタートイ部門」として統一されたのです。

これまで戦隊やライダーモノは「ボーイズ(男児)」、おままごとや魔法少女は「ガールズ(女児)」として明確に分けられていました。ですがこれまでも、戦隊が好きな女の子も、おままごとを楽しむ男の子もずっと存在していました。

「ボーイズ/ガールズ」として分けられてしまうことで、子どもが望むものを手に取りづらい、親が与えることに抵抗を覚えるという問題があったのですね。現代のこうしたジェンダーの問題に、おもちゃ業界が配慮した結果と言えます。

老若男女問わず大ヒット……! その弊害とは


近年大ヒットしたアニメと言えば、「鬼滅の刃」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
これほど社会現象になったコンテンツは久しぶりのことです。多種多様のおもちゃやグッズが次々に発売され、さまざまな企業とのタイアップも目立ちます。

子ども向けにも武器などのなりきりおもちゃが発売される一方で、大人向けには高品質なフィギュアなどが発売され、いずれも大ヒットしています。幼稚園や保育園でも、“鬼滅ごっこ”が流行しているみたいです。

今やおもちゃやアニメは子どもだけのものではなく、大人も同様に楽しむものとなっています。
子ども向けのおもちゃでは安全性が優先されてできない形状や仕様が、大人向けでは付加価値としてつけることができます。その上、子ども向けのおもちゃよりも高い価格で販売することができるので、おもちゃメーカーも大人向けの高品質おもちゃに力を入れています。

最近流行したコンテンツだけではなく、初代ライダーやセーラームーンなど、過去のコンテンツのおもちゃを「大人仕様」にしたアイテムも続々発売されています。

しかし、これらには問題もあります。

大人がおもちゃを「奪う」


大人が子どものおもちゃを「奪って」しまうことも問題です。流行のおもちゃを大人が買い占め、転売によって利益を得ようとすることで、おもちゃが正規の値段で子どもに届かなくなってしまうのです。

特に男児に人気のある戦隊やライダーの武器では、しばしばこの問題が起きています。

対象年齢の問題


大人向けのグッズやアイテムを、キャラクターがついていることで子どもが欲しがったり、大人が買い与えてしまうことで、ケガや誤飲などの事故が起こってしまったりする問題もあります。

今はスーパーや駅など、どこでもカプセルトイの什器が置かれ、気軽に購入できるようになっていますが、ここで販売されるおもちゃの対象年齢はさまざまです。

実際私も幼児を育児中ですが、親の見ていない間に、対象年齢15歳以上向けのアイテムを、祖父母や親戚などが乳幼児に与えてしまったことが何度もあります。もちろん祖父母たちは子どもたちが喜ぶだろうと善意で買い与えてくれたのですが、ヒヤッとしたことは事実です。

おもちゃには対象年齢が記載されていますが、消費者にとっては購入するかどうかを決める際にはそれほど影響がないのではと感じることがあります。

おもちゃにはたくさんの注意や警告が表示されていますが、それを一言一句全て読み込んでいるという人も多くはないでしょう。

「住み分け」の難しい時代


男女の性差だけでなく、対象年齢、インターネット通販の普及によって購入場所まで、今では従来通りの「住み分け」ができなくなっています。

それはもちろん良い点もありますが、メーカーとしては悩ましい部分もあります。

今まさに、おもちゃは変革の時を迎えているのかもしれません。これからのおもちゃに求められるのは、性別も、年齢も、そして国をも超える多様性と、それを支える「品質」なのではないでしょうか。

本連載は、今回が最終回となります。
ありがとうございました。

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プロフィール

おりも みか  新卒入社した玩具製造メーカーにて品質・生産技術担当として日本国内・中国工場での新規ライン立ち上げを経験。玩具、アミューズメント機器、医療機器、健康雑貨など主にプラスチック製品の開発・製造に携わる。結婚を機に退職し、現在は育児の傍ら製造業ライターとして活動中。

Twitter ID:@jilljean0506

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PlaBase編集部
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