3Dプリンタで筐体を出力するアーム型ロボット「CRANE-X7」が目指すもの(前編)

の記事では…
アールティが開発販売する教育研究向けアーム型ロボット「CRANE-X7(クラインエックスセブン)」について、アールティの中川友紀子氏に話を聞いた。3Dプリンタで出力された筐体を持つロボットが目指す未来とは?(前編)
(執筆:松永弥生/ライター)

サービスロボットの教育・研究向け「CRANE-X7」


2021年4月22日、アールティが開発販売する教育研究向けアーム型ロボット「CRANE-X7(クラインエックスセブン)」が、2020年度 日本機械学会優秀製品賞を受賞した。

▲サービスロボットの教育・研究向けアームロボット「CRANE-X7」。7自由度+両開きハンド1。本体重量約1.8kg。可搬重量約0.5kg。

CRANE-X7は、サービスロボットの教育・研究向けに、同社が大阪大学 教授の細田 耕氏の研究室と共同開発した7軸構成のアーム型ロボットだ。「不要なものをそぎ落とし、研究室で教授や学生が安全に使えて結果が出せるロボットを目指した」と、アールティの代表 中川友紀子氏は語る。

ボディは、3Dプリンタによる樹脂製。通常なら公開されないCADデータを公開しており、研究用途に限りフリーライセンスで使用を許可している。もし部品が壊れた場合は、研究室の3Dプリンタで出力し修理が可能だ。メーカーに修理依頼しなくて済むのは、研究に忙しい学生にとってはありがたいだろう。

改造も可能で、例えばアームの先端にカメラを付けたい場合は、手首パーツのCADデータを変更し、出力すればよい。研究用途に応じて、改造が容易な点が好評だという。

モデルカラーは、赤と白。注意喚起の意味を込めて、可動部を赤くしてある。分かりやすい安全設計だ。

研究のトレンドである画像認識では、クロマキー処理がしやすい緑がほしい人もいれば、ロボットアームの色検出をしたい人もいる。そうしたニーズに応え、各パーツのカラーは、オンデマンドで白、赤、黒、黄、青、緑の6色から指定できる。

▲CRANE-X7のボディカラーは公式サイトから、パーツ毎に指定できる。

「3Dプリンタに詳しい先生からは、6色揃えていることに驚かれます」と中川さんはいう。

その理由は、熱溶解積層式(FDM)3Dプリンタの場合、フィラメントが熱収縮するために、精度を出すのが難しいからだ。この収縮率は、樹脂の色によって違う。それだけではなく、温度、湿度、メーカー、ロットといった要素の全てが収縮率に関係してくるという。だから、3Dプリンタの細かいノウハウを知っている人は、カラーバリエーションを揃えたCRANE-X7を高く評価する。

従来の常識を打ち破り3Dプリンタを使いこなす


中川さんによると、3Dプリンタの成形を得意としている会社には2種類あるという。

アールティのようにデータをうまく加工することで精度を合わせる会社と、少し大きめに出力して研磨工程で精度を出す会社だ。前者のように3D CADの図面を変更して精度を出すためには、経験がモノをいう。表面処理にかける手間を厭わなければ、後者をとりキレイに磨いて精度を出す。

3Dプリンタでの強度設計にもノウハウを積み重ねてきた。部品が大きくなればなるほど、積層方向によって割れやすさがあるからだ。強度を出すために、鋳造品や抜き型とは違う設計方法がある。

アールティは、高度人材育成を目的としたエンジニアの教育事業として、製造業向けに3Dプリンタの講習をしている。従来の製造業では、図面のサイズ通りにパーツを製造するのが絶対だ。現場では、機械を微調整して精度を出してきたのだ。

そういう常識で仕事をしてきた職人に「3Dプリンタでは機械での微調整はできないので、図面を修正して精度を出す」と伝えると「データを変えるのは、もってのほかだ!」と怒られたそうだ。

けれど、ツールが変われば仕事のやり方も変わる。考え方をアップデートしなければ、新しいツールを使いこなせない。講座では、その点を丁寧に伝えていると中川さんは言う。

(後編へ続く)

【今回のインタビュイー】

中川友紀子(なかがわ・ゆきこ)

株式会社アールティ代表取締役。1971 年東京生まれ。95 年法政大学大学院工学研究科システム工学専攻修了。東京工業大学大学院総合理工学研究科助手、科学技術振興事業団 ERATO 北野共生システムプロジェクト研究員、日本科学未来館展示サブリーダーなどを経て、05 年「ロボットのいるくらしを考える」を掲げアールティを設立。教育用ロボットやサービスロボットの開発に取り組む。

 

ライタープロフィール
松永弥生(まつなが・やよい)
関西を中心に活躍するフリーライター。2000年からロボコン観戦を始め、三月兎のハンドル名でイベントレポートや動画で情報発信を開始。編集部からの依頼でライターデビュー。以来、ロボットや製造業関連ニュースをメディアに発信してきた。得意分野は、ロボットと製造業。モノづくりが大好き。文章講座やプレスリリース講座の講師としても活動中。
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PlaBase編集部
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