3Dプリンタで筐体を出力するアーム型ロボット「CRANE-X7」が目指すもの(後編)

の記事では…
アールティが開発販売する教育研究向けアーム型ロボット「CRANE-X7(クラインエックスセブン)」について、アールティの中川友紀子氏に話を聞いた。3Dプリンタで出力された筐体を持つロボットが目指す未来とは?(後編)
(執筆:松永弥生/ライター)

Googleも注目する食品工場向けのAIロボット「Foodly」


アールティでは、食品工場向けのAIソリューションの提供もしている。実は、CRANE-X7の開発背景に、食品工場向けのAIロボット「Foodly」の存在がある。Foodlyのプロトタイプを製作中に、研究用のニーズがあると考え試作したのがCRANE-X7だ。CRANE-X7ユーザーからのフィードバックをFoodly開発に反映させ、試作を重ねてきた。

Foodlyは、食品工場で人と協働するロボットだ。ベルトコンベアで流れてくる食品をピックアップし、弁当箱に詰める。唐揚げをピッキングできることが注目を集め、テレビ東京の報道番組「ワールドビジネスサテライト」の「トレンドたまご」にも取りあげられた。

▲食品工場で人と協働するロボット「Foodly」。

「当社を“ハード屋”と思う人が多いのですが、実際はそうではないんです」と中川さんは言う。中川さんは、大学時代に人工知能の研究をしていた。2005年、スマートに動くロボットをやりたいと思って起業したのに、当時は適したロボットがなかった。「ないのならば、自分たちで作ろう」とロボットを作るようになったという。

アールティにとって、「ロボットはAIが実世界の中でどのようにうまく動くか?」を実証するためのボディなのだ。

唐揚げをつまみ上げて弁当箱に収めるのは、小学生でもカンタンにできる。けれど、それをロボットがやるには難易度が高い。唐揚げのように不定形な食材がバラ積みになっている状態から「1個の唐揚げ」をAIが見分けるのは難しいからだ。そして、柔らかいものを適切な力で把持するのはロボットにとっては難しいことだ。

唐揚げをロボットが取りあげるためには、ビジョンで見えたものに対して、ロボットがハンドを適切な位置に移動し、ハンドが高さとタイミングを測り適切な力で把持する必要がある。一般的には、ビジョンロボットハンドをそれぞれ専門家がプログラミングをするため、複数企業が絡む大きなプロジェクトになる。

またアールティの強味は、全てを社内で内製できる点にある。世界で唐揚げのバラ積み取り出しができるようになったのは、アールティが初めてだという。Googleのディープラーニングのフレームワーク「TensorFlow」を活用しているため、2020年4月にはGoogleの開発者向けブログ「Google Developers」でも紹介された。

食品工場には、慢性的な人手不足、長時間の立ち作業といったロボット化したいニーズはある。けれど、前述のようにピッキングの課題は複雑なうえ、多品種小ロットの問題もありロボットによる自動化が難しい。

また、ロボット運用に専門家が必要だったり、費用対効果やロボット設置スペースの問題もあったりする。

Foodlyは、ディープラーニングを用いて稼働現場でのティーチングレスを実現。サイズも高さ153cm、横幅39cmと、一般的な女性の体格と同じくらいだ。コスト面でも「衛生・教育+採用コストを考えるとロボットは有利」と中川さんは言う。

▲協働ロボット「Foodly」。高さ153cm、横幅39cm。重量約30kg。可搬重量、片腕約0.5kg

現在、Foodlyは食品工場のラインで人と協働する実証実験の最中だ。中川さんは「実用化されても、月産50~100台までは3Dプリンタを活用するだろう」という。人工知能は進化が速い。カメラやCPUボードは2~3年で新型が発売され性能がアップする。そのたびにボディの金型を作り直すのは得策ではないからだ。現場での普及が進めば、射出成形による生産へ移行する予定だ。

食品工場のラインで、ロボットと人が肩を並べて働くのが当たり前になる日もそう遠くはないのかもしれない。

(終わり)

【今回のインタビュイー】

中川友紀子(なかがわ・ゆきこ)

株式会社アールティ代表取締役。1971 年東京生まれ。95 年法政大学大学院工学研究科システム工学専攻修了。東京工業大学大学院総合理工学研究科助手、科学技術振興事業団 ERATO 北野共生システムプロジェクト研究員、日本科学未来館展示サブリーダーなどを経て、05 年「ロボットのいるくらしを考える」を掲げアールティを設立。教育用ロボットやサービスロボットの開発に取り組む。

ライタープロフィール
松永弥生(まつなが・やよい)
関西を中心に活躍するフリーライター。2000年からロボコン観戦を始め、三月兎のハンドル名でイベントレポートや動画で情報発信を開始。編集部からの依頼でライターデビュー。以来、ロボットや製造業関連ニュースをメディアに発信してきた。得意分野は、ロボットと製造業。モノづくりが大好き。文章講座やプレスリリース講座の講師としても活動中。
sample
PlaBase編集部
PlaBase[プラベース]

これまでカタログや材料メーカー各社のホームページ内に散在していた樹脂(プラスチック)成形材料の情報をPlaBaseに集約しました。 メーカー・樹脂名・物性値など多様な検索方法によって、お客様の目的に合った樹脂成形材料のデータを探し出すことができます。