衝撃値データをどのように活用するか:プラスチックの強度(17)

この記事では…
プラスチックの衝撃値データの利用法について解説する。

(執筆:本間精一/本間技術士事務所)

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プラスチックの衝撃値データは試験片が吸収した衝撃エネルギーをもとにした値である。製品形状によって衝撃強度は異なるので、材料の衝撃値を強度設計のデータベースとしてそのまま利用することはできない。いろいろな材料の中から候補材料を選択するのに適している。実際に候補材料から最適材料を選定するには、実用成形品または実用品に類似した形状の成形品を成形して衝撃強度が最も高い材料を選定することが必要になる。

また、衝撃値とノッチ先端アール、温度依存性、分子量依存性などのデータは材料選定や設計にとっては重要なデータになる。

図1は温度とシャルピ―衝撃値の関係を示した概念図である。

図1 温度とシャルピー衝撃値の関係

一般的にプラスチックは温度が低くなると衝撃値は低くなる特性がある。材料Aと材料Bともに室温では高い衝撃値であり、両材料にほとんど差が認められない。しかし、低温になると材料Bより材料Aの方がより低温側で衝撃値が低下している。従って、低温における衝撃強度が求められる使用条件では、材料Aを選定するのがよいことになる。

図2はノッチ先端アール(R)とシャルピ―衝撃値との関係を示した概念図である。

図2 ノッチ先端アール(R)とシャルピー衝撃値の関係

シャルピ―衝撃試験規格(JIS7111)では、標準のノッチ先端Rは0.25mmRとなっているので、材料物性表に記載されるシャルピー衝撃値は0.25mmRで測定された値である。同図において、ノッチ先端Rが0.25mmRで比較すると、材料Aより材料Bの方が高い値になっている。しかし、材料Bはノッチ先端Rが小さくなると、衝撃値は急に低下するが、材料Aはそれほど大きく低下しない。

従って、ノッチ先端Rが小さい場合には材料Aの方が優れていることになる。製品のコーナアールはノッチ先端Rの影響と同じ効果と考えられるので、製品形状の制約でコーナアールを大きく設計できない場合には、コーナアールの影響を受けにくい材料Aが適していることになる。一方、コーナアールを大きく設計できる場合には、材料Bが適していることになる。

図3は分子量とシャルピ―衝撃値の関係を示した概念図である。

図3 分子量とシャルピー衝撃値の関係

衝撃値は分子量が高くなるほど大きくなる傾向がある。高衝撃強度を必要とする製品では、高分子量材料を選定するほうがよいことになる。ただ、射出成形する製品では、分子量が高くなるほど流動性が悪くなるので、製品肉厚が薄いと成形できないこともあるので注意しなければならない。

(次回へ続く)

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PlaBase編集部
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