原油・ナフサ価格はさらに上がるのか、下がるのか:原油・ナフサ相場フォーキャスト(2)

この記事では…
原油相場の見通しを考察する上で要注目なトピックについて解説する。

(執筆:柳本 浩希/株式会社アメレックス・エナジー・コム 石化原料部長 兼 NAPレポート編集長)

前回の記事ではこれまで原油相場が“コロナショック”を克服し、足元ではコロナ禍以前の水準へと値を上げている背景を示した。では、今後の原油相場の見通しにおいてカギを握るポイントはどこにあるのだろうか。今回はキートピックスについて解説していくこととする。

まず、需給面では需要が想定よりも鈍化する可能性は引き続き存在する。ワクチンに対して抗体を持つ新型コロナウイルスの新たな変異株が発生する可能性は否定できないため、需要が想定よりも伸び悩むというシナリオは確かに存在している。しかし、現在は新型コロナの感染拡大がむしろ世界的な金融緩和の長期化、盤石化を介して先物相場の強気材料となっている状況であり、たとえ石油需要見通しが引き下げられたとしても、原油先物は売られないとの見方が優勢だ。また、需要に見合った供給量の調整もOPECプラスが主導していくことが想定される。このように安定した地盤の上で需給は推移することが想定されるが、不安もある。

不安の1つ目は、イランの経済制裁をめぐる動向だ。米国バイデン政権は大統領選の公約でイラン制裁の解除を盛り込んでいた。しかし、2021年6月に行われたイラン大統領選において対米強硬派で超保守派(Super Conservative)であるライシ師が新大統領に選出されることが確実視されると、米国-イラン間は交渉の糸口を失う展開となり、米国によるイラン制裁も現時点で解除に至る気配がない。

ただし、バイデン政権は足元の緊張関係を続けるとは想定しづらく、何らかのかたちでイランとの交渉を再開させることが想定され、来年以降制裁が緩和ないしは解除されることでイランからの原油輸出は増加していくと推察できる。イランの増加量は日量130万バレル程度と推定され、決して無視できない数量である。

また、コロナショック以降サウジアラビアが無視できていた米国シェールオイルについて、原油相場が急速に回復し高値で推移していることによって、2022年春にはコロナ以前の数量にまで生産が回復する見通しとなっている。これはコロナショック直後の予想から1年間前倒しされている。これによって、サウジアラビアがマーケットをコントロールできるモラトリアム(猶予期間)は来年春までということができる。サウジアラビアが懸命に減産してマーケットを維持しても、シェールオイルにシェアを奪われるだけという構図となるが、それをサウジアラビアが良しとするかどうか、新たな供給政策に対して注視される。もちろん、「再び増産し、価格戦争に陥る」というシナリオもオプションの1つとしてあり得るだろう。

このように、イランと米国の増産という不安が来年にかけて顕在化していくことが見込まれ、相場は足元の高値を維持するのはよりチャレンジングな状況となるだろう。

今後の相場見通しを考えるうえで、最後に注視する必要があるのは下表に示した外交イベントだ(表1)。


表1:主な外交イベント

これらのイベントについて次の3つの視点から注視いただきたい。

1つ目は前トランプ政権時にホットトピックとなった米中間の貿易戦争という格好で一気に高まりを見せた緊張関係がどのように承継され、また対立は深まるのかという点である。10月に開催予定のG20(主要20カ国)で初の米中首脳会談で予定されており、争点などについて明示されることが予想される。

2つ目は世界的な環境政策についての方向性についてだ。EUが国境炭素税の枠組みについて既に合意しており、米国もこれを支持する格好で独自の政策を打ち出すことが見込まれる。欧米諸国による新たな炭素をめぐる規制については、地球史上最初に炭素をばらまいたのが欧米諸国であったことから、新興国はその規制に対して反発することが想定され、どのような国際的枠組みの方向性が示されるのか注視される。中国やインドらがどのような反応を示すかによって、炭素をめぐる新たな経済戦争が発生しかねない状況にある。

石油は消費されれば当然炭素を放出することになることから、この炭素税は需要面において10年スパンでマイナスとなることは間違いない。また、国際的な方向性が固まれば、米国内の環境政策もバイデン政権による新たな枠組みが提示されることが想定される。シェールオイル開発は環境負荷が高く、汚染も伴うことから、それに対する新たな法的スキームで制限する可能性は否定できない。

イランの増産可否、シェールオイル増産の動向、米中間の貿易戦争をめぐる動き、世界的な環境政策と今年の後半は重要トピックスが目白押しとなる。地球の反対側で発生した出来事が明日からの私たちの商い、ひいては生活に影響を及ぼす現代社会において、ニュースをシャワーのように浴びながら自分のスペキュレーション(考え方)を刷新することは有意義と言える。上記の視点で是非日々の情報に接していただければ幸いだ。

次回は、私の大胆不敵な原油相場予想を提示したい。

プロフィール

柳本 浩希(やなぎもと・ひろき) 株式会社アメレックス・エナジー・コム 石化原料部長 兼 NAPレポート編集長。1985年生まれ。大学卒業後、総合化学メーカーに就職し、石化コンビナートの現場、ナフサの調達、合成樹脂の営業を経験。2016年にAmerex Petroleum Corporation 東京支店入社。現在、株式会社アメレックス・エナジー・コムにてナフサ取引の仲介のほか、ナフサ/石油化学の情報誌の編集責任を務める。

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