原油・ナフサ価格の今後を大胆予想! 「2倍速理論を適用し、ボックス圏へ」:原油・ナフサ相場フォーキャスト(3)

この記事では…
今後の原油・ナフサ価格について、筆者が大胆予想する。

(執筆:柳本 浩希/株式会社アメレックス・エナジー・コム 石化原料部長 兼 NAPレポート編集長)

前回の記事ではこれまでの原油相場の動向、注目トピックスについて解説してきました。今回は今後の原油・ナフサ価格について大胆予想していきたい。

原油が先物商品として注目されるようになったのは2006年以降のことである。中国を中心とした需要の増加を背景に、資産価値が高まり株式などと共にリスク資産としての地位を確立した。

表1:2003年以降の原油相場の動き

2003年以降の相場の動きを表1の通り示したが、2006年から足元までの相場の平均値は約75ドルであり、直近の相場はこの平均値に近い値を付けている。2006年からの15年間というのは非常に値の荒いことがわかるかと思うが、それぞれ場面の要諦についてコメントを付した。赤字は強材料、緑字は弱材料である。

先物としての原油相場の値動きスタートして15年経過したということもあり、基本的に値動きは大量の過去情報によって未来が類推するかたちで人工知能等の力を借りながら大手トレーダーやファンドはマーケットでプレイしている。この類推のことを「アナロジー(Analogy)」という。相場は決して過去と同じ場面に出くわさない(歴史を繰り返さない)が、韻を踏むという有名な言葉がある。「韻(Rhyme)」というのは、「詩の末尾を同じ音でそろえること」を意味し、トレンドや傾向は過去の事例を模倣することがあるということだ。

未来のことは分からないが、過去の経験知を用いて類推することは可能である。いや、現に天気予報など、私たちの生活には未確定の未来の事象について過去の事例から類推したものを用いることで、私たちは未知の将来に対して一定の理解と安心を得ている。だからここから私が説明することも、ただの博打予想ではなく、類推予想の1つとして解釈していただきたい。

上の表1においてコロナショック以降の原油の値動きを見てほしい。急速なアップトレンドを形成しているが、これはリーマンショック後の値動き(2008-2011年)に近似していることが分かるのではないか。そこで、リーマンショック後の値動きとのアナロジーという観点から、今後の相場について検討を進める。

リーマンショックの際は下落する以前の水準に回帰するまでに2.5年時間を要しているが、今回のコロナショックではたった1年で暴落以前の水準を回復したことが分かる。つまり、リーマンショック後の経済回復スピードの2.5倍というロジックが仮説として浮かび上がる。


図1:米国における失業率   出典:米国労働省HPより

図1に示したように米国失業率の推移も実際、リーマンショックの際は緩やかに改善していったのに対して、コロナショックは急速に改善していっていることが。このような急速な経済回復を背景に、米国連邦準備制度理事会は政策金利を早速2022年冬から2023年にかけて引き上げる方針を示唆した。仮にそうなると、リーマンショック時に7年かかかってようやく政策金利を引き上げられたのを、コロナショックは約3年でそのプロセスに至ろうとしている。つまり、リーマンの時間軸を2~2.5倍に早送りにしているのが足元の相場の状況と言える。

そのように考えると、既に足元はコロナショック以前の水準を回復しており、リーマンショック後の2011年以降に約3.5年間記録した100~120ドルのボックス圏と同様に、安定期に入ったと類推することが可能となる。つまり、ブレント原油相場は65~80ドル、ないしは60~75ドルのボックス圏と私は予想している。

供給面でOPECプラスの減産が緩和されていくことや、イラン産原油の輸出が増加する可能性、米国シェールオイルの供給圧力がある。一方、世界的な金融緩和やワクチンの流通により下落してもすぐに買い戻される展開が続くのではないだろうか。

なお、リーマンショック後は100ドルを超える高値で推移していたが、今回そこまで値を上げないと想定される背景は2つある。

1つは2011~2013年頃にはアラブの春と言われる民主化運動の波が中東諸国に押し寄せ、地政学的リスクが高まったほか中東の産油量が減少した点が挙げられる。

もう1つは、現在のようにシェールオイルの増産圧力がなかった(米国からシェールオイルが本格的に増産されるようになったのは2014年以降である)ことだ。今回のボックス圏の上値は100ドルまで到達する可能性は低く、足元はボックス圏の上値の水準にあると想定することができる。反対に、地政学的リスクが増大するような紛争が発生した際はこのシナリオは上方修正される点も押さえておきたい。

このように、ブレント原油が今後65-80ドル、ないしは60-75ドルのボックス圏に入る前提に立つと、国産ナフサ価格は4万円台前半から5万円台後半の間で推移すると想定される。そして、2.5倍速理論に立てば約1年で次の方向性が示されると想定され、これも過去の類推をそのまま適用させれば急速に下落というかたちとなる。足元の状況からすれば、おとぎ話ではないのは分かっていただけるのではないだろうか。

前回のコラムでもお伝えした通り、地球温暖化対策の1つである炭素税の導入や米中関係など、今秋は世界情勢の今後を占うイベントが目白押しであることから、動向には関心を持って接していただければ幸いだ。

なお、今春に原油・ナフサ・石油化学製品相場の見方について解説した本(「ナフサと石油化学マーケットの読み方 」柳本 浩希著・Amazon)も出版しているので、参考にされたい。

筆者注:本コラムで記載している事項は閲覧者の先物取引を含む商取引を誘導するものではありません。あくまで小生の予想であり、投資、投機行為につきましては読者の方々の責任において実施ください。小生は本コラムについて誤っている部分を訂正する範囲での文責を負いますが、本内容をもとにしたいかなる商取引に対して責任は負いません。

(「原油・ナフサ相場フォーキャスト」終わり)

プロフィール

柳本 浩希(やなぎもと・ひろき) 株式会社アメレックス・エナジー・コム 石化原料部長 兼 NAPレポート編集長。1985年生まれ。大学卒業後、総合化学メーカーに就職し、石化コンビナートの現場、ナフサの調達、合成樹脂の営業を経験。2016年にAmerex Petroleum Corporation 東京支店入社。現在、株式会社アメレックス・エナジー・コムにてナフサ取引の仲介のほか、ナフサ/石油化学の情報誌の編集責任を務める。

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PlaBase編集部
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