マテリアルズインフォマティクスを活用するための機械学習について:マテリアルズインフォマティクス入門(5)

この記事では…
マテリアルズインフォマティクス(MI)の導入に必要な機械学習の基礎知識について解説します。

(執筆:一之瀬 隼/ 製造業ライター)

前回は、マテリアルズインフォマティクス(MI)の導入に必要不可欠なデータベースについて、その重要性と導入時に活用できる公共のデータベースを紹介しました。今回は、マテリアルズインフォマティクスを導入する際に活用する機械学習の基礎的な知識について解説します。

マテリアルズインフォマティクスで必要な機械学習とは?


機械学習はML(Machine Learning)とも呼ばれます。アルゴリズムに読み込ませる大量のデータから学習を行い、分類や予測などを行うモデルを自動的に構築する手法です。

機械学習は材料開発以外にもさまざまな分野に活用されています。例えば、タクシーの配車予測や農業における生育予測、自動応答してくれるチャットボットの開発、株価予測、点検の自動化など幅広い分野で用いられています。

機械学習は主に、「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の3つに分類でき、目的に応じて使い分けられています。ここでは、それぞれについて簡単に紹介します。

教師あり学習

教師あり学習は、学習を行う際に読み込ませる学習データに正解を与えた状態で学習させる手法です。教師あり学習を適用する代表的な問題には、「回帰」と「分類」があります。

「回帰」は、目的変数であるyについて、説明変数xを使った式で表すことです。この式を回帰式、回帰式を求めることを回帰分析といいます。yとxの関係である回帰式を与えられたデータの中から学習し、あるxにおけるyの値を導きます。

「分類」は、その名の通りデータの集合体を分類するアルゴリズムです。学習データには、あらかじめ分類された結果が与えられており、そこに新たなデータが投入された際に、そのデータがどこに分類されるのかを導きます。

教師なし学習

教師なし学習は、正解のデータを与えられない状態で学習させる手法です。代表的な問題として、「クラスタリング」や「次元削減」が挙げられます。

「クラスタリング」はクラスター解析とも呼ばれ、与えられたデータの中から類似のデータを判別し、グループを作成する手法です。「分類」ではあらかじめグループ分けされていましたが、クラスタリングの場合には数理および統計的な観点でアルゴリズム自身がグループ分けを行います。

「次元削減」は、「与えられたデータの次元を減らすこと」で、データの可視化や過学習のリスクを下げることを目的としています。過学習は教師あり学習などで生じる課題で、与えられたデータを参考にしすぎてしまうことで生成されるモデルが複雑になり、予測精度が低下する事象です。変数が多いと過学習が発生しやすいため、次元削減で変数の数を減らすことが効果的です。

強化学習

強化学習は、アルゴリズム自身が試行錯誤をしながら、あらかじめ設定された報酬が最大になるように学習を進める手法です。さまざまな選択肢に取り組み、その結果として得られた報酬をアルゴリズムにフィードバックすることで、報酬を向上させるような行動を選択します。

強化学習は、自動運転における画像認識やロボットの動作制御、電子制御ユニットのキャリブレーションなどに用いられています。

機械学習で用いるプログラミング言語


機械学習に取り組む際にはアルゴリズムを構築、調整する必要があります。これらのアルゴリズムは主に「Python」と「R」のどちらのプログラミング言語で構築されています。

広く活用されており取り組みやすいPython

Pythonは機械学習において広く用いられているプログラミング言語で、シンプルな文法で構成されているため、経験が浅くても取り組みやすい言語です。また、使用者が多いため、調べたいことがあった場合でも、比較的すぐに欲しい情報を見つけられます。

専門的な開発を行う際に必要で難易度が高いR

Rは研究分野など、特に専門性が高い領域で用いられているプログラミング言語で、複数のプログラミング言語での開発経験がないと、スムーズに理解することはできないでしょう。また、国内における使用者もPythonに比べると少ないため情報を入手しにくく、英語の文献を調べる必要があります。

機械学習に関する基礎的な知識は必要


開発済みのアルゴリズムを活用したり、外部からのサポートを受けたりすることで、機械学習に関する深い知識がなくても課題を解決できる場合があります。しかし、基礎的な部分を理解していないと、運用する中でスムーズに進まない場合があります。

例えば、解決したい課題に対して適切なアルゴリズムを選択できずに精度が上がらない場合があります。また、アルゴリズムの小変更が必要でも自社で対応できず、外部委託が必要なため時間やコストがかかってしまうことがあります。

このような課題を解決するためには、機械学習とそれを構築するために用いられるプログラミング言語について、基礎的な知識を得ておくことは重要です。

今回の記事では機械学習の基本的な部分に触れましたが、次回はいくつかのアルゴリズムを具体的に解説し、材料開発に用いる場合の適用例、メリットデメリットなどを紹介します。

プロフィール

一之瀬 隼(いちのせ・しゅん) 自動車部品メーカーの現役エンジニアとして、先行開発から量産展開まで幅広い業務を経験。産まれたばかりの子供の成長を楽しみながら、エンジニアとライターの活動両立に苦戦中! 趣味は旅行(海外も国内も)と美味しいものを食べることと、学ぶこと。

>>執筆者ブログ「悠U自適

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PlaBase編集部
PlaBase[プラベース]

これまでカタログや材料メーカー各社のホームページ内に散在していた樹脂(プラスチック)成形材料の情報をPlaBaseに集約しました。 メーカー・樹脂名・物性値など多様な検索方法によって、お客様の目的に合った樹脂成形材料のデータを探し出すことができます。