バイオマスプラスチックの動向:プラ業界の「環境との共存」(6)

この記事では…
国内企業の再生可能原料(バイオマス)由来の石化製品の開発や、生分解性プラスチックについて取り上げます。

(執筆:柳本 浩希/株式会社アメレックス・エナジー・コム 石化原料部長 兼 NAPレポート編集長)

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今回は国内企業の再生可能原料(バイオマス)由来の石化製品の開発や、生分解性プラスチックについて詳しく解説したい。

再生可能原料由来の製品開発に関する国内企業の取り組みでは主に、従来の石油を原料とするプラスチックに代わる材料として、トウモロコシ、さつまいも、さとうきびなど再生可能な資源を原料としたバイオマスプラスチックの開発が進められている。原料となるバイオマスは、成長段階で光合成によって二酸化炭素を吸収していることから、バイオマスプラスチックを焼却した際に出る二酸化炭素は、実質的にプラスマイナスゼロ(カーボンニュートラル)となり、地球温暖化対策に有効だとされている。

国内企業の取り組みについては、企業間の協業などを通じて、再生可能原料由来の製品開発が急速に進行している。住友化学は、積水化学工業と共同で、“ごみ”由来のエタノールを原料に、エチレンを経てポリオレフィンを製造する技術開発を進めている。同社が保有する千葉工場において、2022年度から試験的な生産を開始し、2025年度には本格上市を目指す。

また、生分解性プラスチック事業については、ポリ乳酸、PVAなど、海洋や土壌などで分解できる素材を原料として採用し、環境中で微生物によって水と二酸化炭素に分解されることにより、近年社会問題とされている海洋プラスチック問題やマイクロプラスチック問題の解決策の1つとして注目されている。

三菱ケミカルは、日本製紙と共同で生分解樹脂「BioPBS」および紙製バリア素材「シールドプラス」という再生可能な原料から製造される生分解素材を用いた循環型包装材を開発した。同包装材は、再生可能な原料を用いた生分解性のある循環型の製品でありながら、BioPBSのヒートシール性とシールドプラスのバリア性により内容物の品質劣化を防止する高い機能性を有しており、今後は食品をはじめとしたパッケージ用途への展開を見込んでいる。

さらに大阪大学はでんぷんという身近な素材から、優れた海洋生分解性を示す複合シートの開発に成功しており、熱可塑性プラスチックに海洋生分解機能を搭載する材料設計指針を打ち出した。同年11月には、「海洋生分解性バイオマスプラスチック(MBBP:Marine-Biodegradable Biomass Plastics)」の開発・普及に向けた産学官連携の「MBBP 開発プラットフォーム」を設立。同プラットフォームには、積水化成品工業など民間企業をはじめ、公的研究機関、大学・公的研究所機関などが参画しており、海洋プラスチックごみ問題の解決に向けて、2025年までに製品の開発から実用化・社会普及までを目指す。

バイオマスプラスチックは原料がバイオマスであればよく、それが生物に分解できようができまいが問題はないため、生分解性のバイオマスプラスチックと非生分解性のバイオマスプラスチックが存在する。原料や製品の重量のうち約25%以上がバイオマス由来ならバイオマスプラスチックと認定されるため、言い換えれば、全てのバイオマスプラスチックが天然の再生可能な材料で作られているわけではない。そのため、多くの国では、プラスチックごみを埋め立て地に集約し、非生分解性のバイオプラスチックは埋め立て地で半永久的に残る。分解されない点において、従来の石油由来のプラスチックと変わりなく、非生分解性のバイオマスプラスチックは海洋プラごみ問題の解決策にはならないのが課題だ。

同課題に対して、環境省は2020年7月、バイオマスプラスチック利活用検討業務を公表しており、自治体でのごみ収集袋などへのバイオマスプラスチック導入に向けた取組を技術的に支援することを打ち出した。事業内容としては、

「地方公共団体の可燃ごみ指定袋へのバイオマスプラスチック導入に向けた方策の確立」

「廃棄物処理の効率向上の観点などから、ごみ処理方法ごとに適したバイオマスプラチック製ごみ袋導入の促進」

「導入に向けたガイドラインを作成し、地方公共団体へ周知することで、バイオマスプラスチックの使用量増につなげる」

などを重点戦略としている。

図1:環境省が打ち出した事業イメージ

図1に示したのは環境省が打ち出した事業イメージとなっている。また環境省は、プラスチック資源循環戦略においても、2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入することを掲げており地方公共団体での導入を技術的に支援し、自治体でのごみ収集袋などへのバイオマスプラスチック導入促進を目指す。

一方、生分解性プラスチックは全てバイオマス由来であるかというと、そうではなく、石油由来の生分解性プラスチックも存在しており、生分解性を有していれば原料が何であるかは問わないのだ。また、生分解性プラスチックは、環境中で分解すると言えば聞こえはいいが、海などに出てすぐ分解されるわけではなく、分解には時間を要するため、一定期間は海中などにプラごみとして存在する。そして、生分解性であってもどこでも分解が可能であることも間違いであることに注意したい。一般的な生分解性プラスチックは土壌で分解されるものが多いが、ポリ乳酸(Polylactic acid、polylactide:PLA)はコンポスト装置でしか分解されず、他にも土の中でしか分解されないもの、海や川でも分解可能なものなどさまざまである。

バイオマスプラスチックおよび生分解性プラスチックの性質について、石油由来のプラスチックの代替として使用していくうえで、それぞれの特徴を把握したうえで選定していくことが必要と言える。なお、過去の記事に環境配慮型のプラスチックについて、その分類をまとめてあるので、参考にされたい(「環境に優しい」ってどういうこと? 環境配慮型プラスチックのいろいろ :プラ業界の「環境との共存」(3))。

 

プロフィール

柳本 浩希(やなぎもと・ひろき) 株式会社アメレックス・エナジー・コム 石化原料部長 兼 NAPレポート編集長。1985年生まれ。大学卒業後、総合化学メーカーに就職し、石化コンビナートの現場、ナフサの調達、合成樹脂の営業を経験。2016年にAmerex Petroleum Corporation 東京支店入社。現在、株式会社アメレックス・エナジー・コムにてナフサ取引の仲介のほか、ナフサ/石油化学の情報誌の編集責任を務める。

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