2022年3月、東京ビッグサイトで開催された「日本ものづくりワールド2022」の取材レポート。今回はITソリューション編です。
日本ものづくりワールド2022 3月 レポート(前編)――IT編

この記事では…
(執筆:小林由美)
DMSどこ?――規模の縮小と展示レイアウトの変化の理由
2022年3月16~18日、東京ビッグサイトで開催された「日本ものづくりワールド 2022」の会場を見て、改めて、会場レイアウトの変化の大きさに驚かされました。全体的な規模の縮小は、コロナ禍での開催の影響が、もちろん大いにあったと思いますが……。
今回の展示エリアは、ビッグサイトの西棟1階のみ。その半分くらいを機構部品や機械加工品などの展示がメインの「機械要素技術展(M-Tech)」が占めていました(以下の絵)。筆者が、以前から一番よく取材してきた、CADやPLM、生産管理システムなどが展示される「設計・製造ソリュ―ション(DMS)展」は、かなり端の方にありました。

「日本ものづくりワールド 2022」のレイアウトについて
特に今、40代、50代以降の方はよくご存じなのかと思いますが、少なくとも、2010年ごろくらいまで、設計・製造ソリュ―ション(DMS)展と機械要素技術展(M-Tech)の2本柱状態で、東京ビッグサイトの東棟と西棟でそれぞれ二分していたような感じでした。また以前は、M-Tech側に出展されるような人も、なぜか「DMSに行きます」と言うことが、少なくとも筆者の身の周りでは多かったのです。しかしこの状態では、さすがにそう言えない状態ですね……。
「3D&バーチャル リアリティ展(IVR)」に至っては、目を凝らさないと探せないほどの規模感。加えて、「次世代 3Dプリンタ展」や「ものづくりAI/IoT展」もかなり小さいエリアです。特にAIやIoTは、製造業では比較的旬な分野だと思うのですが。でも、そうした分野の熱が冷めてしまったわけではないと思うのです。
DMS展でも同様だったのですが、今回は、外資系企業や大企業の出展が少ない傾向でした。ITベンダーも代理店も、中小規模の企業の出展が目立ちました。大手や外資ほど、コロナ対策で慎重な傾向であり、オンラインイベントやリモートワークなど新しい取り組みへの意欲も高めのようなので、そういう事情がまずあるのかと思います。
ただしDMS展などIT系の出展状況の変化はコロナ以前からありました。ITベンダーを中心に、「展示会という場をマーケティングにどう生かすか」「出展する意義は一体何か」というところで試行錯誤しているような動きです。よくあるのが、例えば、毎年「出たり・出なかったり」を繰り返す、「展示をすごく小規模にしておいて、同時期開催の自社イベントに誘導する」などです。
IT系、特にVR(仮想現実)システムや3Dプリンタのように実機が伴わない、ソフトウェアだけのソリューションであると、リアルならではの展示といっても、ソフトウェアのデモを見せることくらいしかできず、モノの展示ほどの訴求力はないのだと思います。とはいえ、直接お客さんのお顔やお声を聞き、対話ことの意義や効果は、物がある場合と同様でしょう。コロナ以前は、そのあたりのバランスやジレンマをどう考えるかといったことに頭を悩ますITベンダーがよくいたと思います。
そして、今回のコロナ禍がきっかけで、リアル展示会ではなく、自社が主催するオンラインイベントなど非対面でのマーケティング戦略に思い切り振りきっていった企業さんが多いのではないかと思います。そう考えると、今回のレイアウトは納得いくもののように思いました。
そもそもM-Techだって、エリアこそ広く見えますが、今回は自治体単位での合同出展が大半。1つ1つの自治体を見ていても、いつもより企業数が明らかに少なかったです。正直、活況さもあまり感じられなかったと思います。いろいろと、仕方ないのかもしれませんが……。
ITソリューション系の展示
ここでは、製造業向けITソリューション系の展示を少しだけ紹介します。
MI-6

MI-6のブース
まずは、MI-6です。こちらはマテリアルインフォマティクス(MI)を活用した材料開発ソリューションを開発・提供する会社です。同社の設立は2017年で、いわゆるスタートアップ企業です。 >>「「マテリアルズインフォマティクス」とは何なのか?」
同社の展示ブースでは、材料開発における実験条件や配合条件を最適化するSaaSソフトウェア「miHub」について紹介していました。
このソフトウェアでは、ベイズ最適化をベースとした解析により、これまで経験者が過去の経験や勘を駆使してあたりをつけて行っていた実験を、AIが最適な実験パラメータを探索し、実験を効率化したり、人が思いつくことがない組成を生み出したりできるようにする仕組みです。
また、MIに詳しくなくても使いこなせるようにUIが工夫されており、実験実務に携わる人自身が、MIを駆使して、的確な意思決定が素早く行えるようになります。
このような仕組みにより、実験業務の効率を高めるだけではなく、人の思考だけでは思いつかないような素材を生み出すことも可能になるということです。
化学業界の研究分野では、既にMIの認知度は高いとのことですが、化学系のどの分野でも効果が出せるというわけではないそうです。また、AIにデータを食わせれば、ポンとこちらが望む結果を出してくれるような、魔法の箱でもありません。
研究者の経験は知見は、MIを使う上でも重要であることには変わりなく、あくまで1つのツールだという認識が大事なのかもしれません。これは、他分野の解析やシミュレーションでも、よく言われる話ですね。
テクノア

テクノアのブース
次に紹介するのが、大きく雰囲気が変わり、生産管理システムなどを開発する国産ソフトウェアベンダーのテクノアです。同社は、中小企業のものづくり現場をターゲットにした生産管理システムを展示していました。
当日、テクノアが初披露していたのが、AI類似図面検索システムです。これは、紙やPDFの図面を画像認識で読み取り、AIが過去の図面から同じ、もしくは類似の図面を探し出すという仕組みです。三面図も個別に認識できるとのことです。

AI類似図面検索システムのデモ動画より
製造業では3D CADやCAE、PDMなどが普及してきている、とはよくいわれているのですが、日本の中小製造業ではまだ2D CADでの設計や、PDFや紙での図面のやり取りがまだ多く残っています。これだけ電子メールが普及しているのですが、図面の送付をFAXで行っている現場もまだあります。
そのため、過去の設計を参考にして設計をする際には、元になる図面を探し出すのに一苦労している現場も多いです。現場にいないと、「部品表で管理されていないのか?」と思われる方もいるかもしれませんが、図面番号や部品名だけでぱっと探せるものではないのですよね……。探している情報なのか、図面を開いて内容をきちんと確認しないといけないからです。図面を探すために、何時間もかかってしまうということもあるそうです。そして、うまく探せなければ、一から新規に図番を取って製図するしかありません。今回展示していたAI類似図面検索システムは、テクノアの顧客のそんな悩みから生まれたそうです。
設計・製造のITは欧米ベンダー製がとても多く、高級で大規模な仕組みや、統合管理をうたう製品が多いです。そうした製品は、日本の中小企業の現場の方々には少々荷が重すぎます。今回のような細やかな目の付け所は、まさに日本の現場をよく知る国産ベンダーならではだと思いました。
APPLE TREE

CREATOR 4S
最後は、3Dプリンタや3Dスキャナを販売するAPPLE TREEです。同社は、3Dプリンタメーカー「FLASHFORGE」、3DスキャナーメーカーのSCANTECの製品を展示しました。
今回は、新製品「CREATOR 4S」を目玉としていました。装置サイズは840×1000×675mm(幅、高さ、奥行き)、造形サイズが400×350×500mm(幅、奥行き、高さ)とかなりの大型です。従来は分割して造形しなければならなかったものも一体で造形しやすくなりました。造形制度は±0.2mm、積層ピッチは0.05~0.4mmです。
また、この機種からヒートチャンバーを搭載し、庫内を最大65℃まで温めることが可能になりました。
独立型デュアルエクストルーダー(造形材料を押し出す機構が2つある)を搭載していて、左右対称の物を作ったり、2色もしくは2素材をまぜて造形したりといったことが可能です。
ノズルが最大360℃まで加熱できることから、カーボンファイバーやナイロン、スーパーエンプラなど難易度が高い素材の造形にも対応しています。
しかも、本体価格が、このスペックで120万円程度と、10年前からすると考えられないような安い値段です。

3Dスキャナー 「KSCAN-Magic」
APPLE TREEでは、他に「TRACKSCAN」や「KSCAN-Magic」などSCANTEC社の3Dスキャナーも展示。趣味向けのエントリー機種から、寸法評価用のハイエンド機種まで幅広いラインアップの製品を紹介しました。この機種も同スペック・同機能の他社製品よりも廉価な価格帯で販売しているということでした。
(後編に続く)

これまでカタログや材料メーカー各社のホームページ内に散在していた樹脂(プラスチック)成形材料の情報をPlaBaseに集約しました。 メーカー・樹脂名・物性値など多様な検索方法によって、お客様の目的に合った樹脂成形材料のデータを探し出すことができます。
