石油化学業界2023年6大トピックス(後編)

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この記事では…

筆者が注目する石油化学業界の2023年6大トピックスをご紹介。後編ではマーケットやグリーン関係でのトピックスを取り上げる。

(執筆:柳本 浩希/石油化学コンサルタント)

>>前編

前回から引き続いて、小生が考える石油化学業界の2023年6大注目トピックス(後編)をご紹介したい。前編では主に地政学的な要素をお伝えしたが、後編ではマーケットやグリーン関係でのトピックスをお送りする。先行き不透明感が増している昨今において、読者の皆様が研究、開発、営業などあらゆる事業活動をするうえで、1つの座標になれば幸いだ。

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4.グリーンの高波と分断 -成功モデルが急務-

ウクライナ戦争後、ロシアはLNGと石油の供給を武器に欧州に対して揺さぶりをかけ続けた。しかし、ロシアによる戦争のプロセスが国際法を踏みにじるものであっただけでなく、戦闘行為の中で市民に対する非人道的虐殺が含まれたことから、欧州の長い歴史の中で構築されてきた国際法上の強硬規範(JUS COGENS)に抵触している可能性が高まった。これを受け、欧州は自らロシア産のエネルギー資源を拒絶し、LNGの輸入基地をありえないほどの急ピッチで建設し、非ロシア産のLNGや石炭を買い漁った。これにより、欧州の電力価格は10倍以上に膨れ上がった。欧州市民は人道規範の保全のために高い対価を支払ったと言える。同時に、炭化水素資源に対する嫌悪ともいえる感情は膨れ上がり、欧州の各企業は脱炭素、脱石油を急ピッチで進めている。つまり、ウクライナ戦争はグリーンの高波をさらに高くしたと言える。

一方、後進国では通貨安と資源価格の上昇により財務状態や市民の生活水準そのものが悪化し、グリーンどころではない状況にある。2023年はこの格差がさらに増大することが見込まれる。まずは先進国でグリーン社会のモデルを確立することが求められるが、その最先端を走る欧州ですらその途上にある。日本はようやくカーボンクレジットの導入時期を2028年と設定し、2030年代から本格導入を目指している。このグリーンの波が世界を分断することにならないようにするためには、先進国での成功例がまずは必要だろう。後進国への支援の傍ら、先進国では2023年も新たなプロジェクトが次々にリリースされる。

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5.石油相場は相対的に高値 -地政学的リスクはくすぶり続ける-

前編でお送りしたトピックスに示した通り、ウクライナ戦争の早期停戦が困難であるとすれば、ロシアは欧米とは敵対関係が続くことになる。これはロシアが中東などの産油国の連帯を強化することと同義であり、2023年も引き続きロシアからの供給リスクに加えてOPECプラスによる徹底的な減産政策が続くことを示唆している。そのため、石油相場は相対的に80ドル以上の高値となると予想する。一方、行き過ぎた供給量の制限は油価の上昇を招き、インフレ圧力をさらに高め、経済そのものの活動を減退させることになる。そのため、世界経済の体温を見極めた減産政策を採る必要がある。つまり、減産によって相場は支えられるが世界経済へのダメージと両立できる価格レベルを探り続ける展開となるだろう。

景気後退リスクが高まれば、一時的に大幅安となることが想定され、相場はアップダウンの激しい商状となりそうだ。ナフサは慢性的に石化向け需要が低迷することが想定されるが、供給面ではロシアからの供給が減少した分、地中海沿岸の積み地のナフサが欧州との取り合いとなることから、ある程度クラックスプレッド(ナフサと原油価格との値差)は支えられる見通し。一方、米国のシェールオイル増産に伴い供給が増加することにより、特に夏場は需給が緩む可能性がある。

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6.冬の石油化学 -統廃合、再編の加速-

2022年は想定通り、石油化学品の相場にとって厳しい一年となった。ほとんどの製品において採算割れの状況となった。多くの石化メーカーの担当者や責任者はこの事態に対して驚きをもって接した。オレフィンモノマーの相場低迷だけではなく、ポリオレフィンなどあらゆる石油化学チェーンにおける末端製品の中国向け需要が大幅に縮小してしまったことに対して、驚愕と落胆をもって反応した。

韓国やタイ、台湾など、中国向け輸出の比重が高い国では、マージン悪化により昨秋に定修(装置の解放点検をするための2~4年など定期的に実施する法定修理のこと)入りした後再稼働できないクラッカーが3基存在しているほか、さらに4基のクラッカーが急遽停止を決定した。今後日本を含む東アジア全体でナフサクラッカーの統廃合は加速するだろう。理由は、中国の内製化がさらに進行する見通しであり、ポリオレフィンの需給改善は当面2年程度期待できないことのほか、各国政府主導で脱炭素政策が実行されることにより計画的な統廃合や再編が企図されておかしくないことがあげられる。

日本では川崎地区と千葉地区においてオレフィンが余剰のバランスとなっているが、特に千葉地区ではさらなる企業間の連携が見られておかしくなさそうだ。また、新たに検討されているバイオエタノールから生産されるエチレン装置(エチレン生産能力=年間20万トン)は、地区をまたいだ日本国内のクラッカー再編の呼び水となりそうだ。日本政府はカーボンニュートラルの実現に向けて、排出量が特に多い鉄鋼や自動車、石油、石油化学産業への補助金(兆単位)を創設する計画で、この補助金を獲得し得る事業スキームの構築が急がれる。

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⁠1985年生まれ。大学卒業後、総合化学メーカーに就職し、石化コンビナートの現場、ナフサの調達、合成樹脂の営業を経験。その後、ナフサ取引の仲介や情報誌の編集責任を務め、2026年5月に炭化水素リサーチ株式会社を創業(https://hc-r.co.jp/)。ナフサと石油化学業界必携のNaphtha Portalを立ち上げる。