BASFが考える、プラスチックの将来のあり方:PlaBase Innovation Hub 2024(2)

Image

PlaBaseは2024年2月29日、渋谷キューズ(東京都渋谷区:会場協賛)で、ディスカッションイベント「PlaBase Innovation Hub 2024」を開催しました。プラスチックを開発・提供する側の化学企業、そしてプラスチックを使う側のメーカーが登壇。それぞれ自社のサステナビリティ関連の取り組みを紹介つつ、ディスカッションを繰り広げました。

前回は、本イベント最初のセッション「時代のニーズに合わせたサステナブルな新マテリアルをどう使いこなすか」で語られた内容の一部を紹介しました。今回は、サステナブル材料を開発する側で独BASF社の日本法人であるBASFジャパン株式会社 代表取締役社長 石田博基氏によるプレゼンをご紹介します。

ますます増加するプラごみへの対処、材料メーカーはどう考える?

Image

BASFジャパン 石田氏の講演冒頭では、「プラスチックにおいて消費量は過去30年で約4倍、生産量は2000~2019年で約2倍に増加。廃棄物発生量については2000~2019年で約2倍」とのデータを紹介しつつ、プラスチック廃棄量への問題提起から開始しました。プラスチックは、世界中の社会生活や産業を発展させてきた立役者的存在であり、それは今日も変わらないながらも、次に石田氏が示すような、無視してはならない課題があります。

具体的な数字にすると、「世界で、2000~2019年間の生産量は4億6000万トンに対して、廃棄物発生量は3億5300万トン」(同社)。全廃棄物発生量のうち、リサイクルされているのは9%。実際、リサイクルにまわされている廃棄物の量はもう少し多いものの、「リサイクルの際にも廃棄物が出てしまう」ということで、この数値になっていると石田氏が解説しています。「全廃棄物発生量のうち、管理できていない分が22%」(同社)。その一部が海に流れつきマイクロプラスチックとなっている可能性があることを示唆します。

Image

BASFは、長年、環境問題やプラスチック廃棄問題に積極的に対処してきました。現在、同社が掲げるサステナビリティへの取り組みスローガンは「Less is more」で、日本語に訳すと「少ない方が良い」。「少ない」(Less)には、「必要最小限の利用」「リサイクルへの取り組み」「長く使う」の3つの考え方があるそうです。

BASFの「フェアブント」によるCO2削減

同社が本社を置くドイツ ルートヴィッヒスハーフェンには、統合生産拠点、ドイツ語で「Verbund」(フェアブント)は敷地面積で10 km²におよび、約200 の生産プラントを伴う125の生産設備 (2022年末時点)を備えます。「一企業が所有するものとしては世界最大」(同社)の統合化学コンビナートになっています。フェアブントは、日本語で「統合・つながり」という意味です。この設備の中では、さまざまな品目の製品における、技術開発から生産、出荷、廃棄など全てのプロセスをつなげて統合管理をすることで、リサイクルやCO2削減(カーボンマネジメント)を行っています。しかも、このようなフェアブントサイトは、本社拠点を合わせて6拠点あるそうです。ドイツ以外では、アメリカ、ベルギー、中国、マレーシアで展開しています。フェアブント(統合生産)や熱電併給プラントにより削減したエネルギーは、CO2排出量にして620万トンに相当(2022年)するということです。今後、フェアブントサイトは中国にもう1拠点増やす計画で建設が進行中です。

Image

BASFでは、2050年までにネットゼロを実現。2030年までに、2018年比で温室効果ガス排出量を25%削減(スコープ1およびスコープ2:第三者へのエネルギー販売を除く、オフセットを含む)という目標を掲げています。その達成のため、2030年までに最大40億ユーロを投じる計画です。

カーボンマネジメント関連の取り組みを実施する一方で、2030年までに同社のサーキュラー関連の売上を170億ユーロに倍増することを目指しています。リサイクルベースの原料、再生可能原料、それぞれの素材に適した循環型モデルを確立していくということです。こうした計画により、クライメートニュートラル(気候中立)とサーキュラーエコノミー(循環経済)への転換を推進していくとしています。

こうした中長期での脱炭素への取り組みにおいては、BASFの研究開発と合わせ、顧客との協業も重要であるということです。さらに、こうした計画を推進するため、最重要なのはCO2の可視化であるといいます。自社でカーボンフットプリントを算出して可視化。エネルギー生産においては再エネ利用やCO2フリー蒸気製造、化学品製造では新技術開発やバイオベース原料の採用といったことに取り組んでいます。

BASFにおけるサーキュラーエコノミーの取り組み

BASFにおけるサーキュラーエコノミーの取り組みには、「マテリアルリサイクル」「ケミカルリサイクル」「バイオマス原料ベース」の3つの柱があります。「ケミカルリサイクルは、マテリアルリサイクルを補完するものである」と石田氏は説明しています。

マテリアルリサイクルは、廃棄されたプラスチックを、さらにプラスチックに再生をするものの、まっさらなバージン材にはなり得ず、汚れを残したり、物性の低下を伴うことが多くなります。一方、ケミカルリサイクルにはポリマーをモノマーへ分解(解重合)させ、それを原料としてプラスチックに再生し、バージン材相当のプラスチックの再生を可能とするものや、熱分解油を活用したBASFのケミカルリサイクル技術の「ChemCycling®」ではさらにナフサに戻すという処理が行えます。この技術により再生された材料は、食品包装材や自動車部品、アパレル製品などさまざまな分野で活躍しています。

解重合では、大手アパレルのInditexとの協業による事例があります。繊維廃棄物のみを原料とする循環型ナイロン6「loopamid」の開発です。loopamidを使用した繊維や材料は、ナイロンのバージン材相当品質が確保できます。Inditex傘下のブランド「Zara」で、loopamidのみを素材としたカプセルジャケットを新発売しています。「生地だけではなく、ジッパーからボタンまで、全てloopamidのみ」と石田氏が説明します。

さらにBASFでは、リサイクル時の洗浄剤「Gardoclean®」や、リサイクルマテリアルの品質を高める添加剤のIrgaCycle®(イルガサイクル)なども開発しています。

また、旭化成のスパンデックス「ロイカ®」にバイオマスバランスアプローチのテトラヒドロフランを供給しています。旭化成は、BASFのテトラヒドロフランを使用することで、同社の既存製品と比べてCO2排出量を約 25%削減することを目指しています。

Image

「『われわれが作り出すものは、『最終的には持続可能性につがらないと意味がない』ということを、(BASFは)しっかりと叩き込まれています。世の中で、石油化学品は非常に重要ですが、それをいかにサステナブルにするか。そして我々企業がしっかりそれを反映する。さらにイノベーションが起こる。我々が開発した原料を、今日ここにいる皆さまと、いろいろ協議、競争しながら最終商品にして、そしてそれを消費者に届ける。皆さんとそうした仕組みづくりにかかわり、社会に少しでも貢献していきたい」と石田氏は講演を締めくくりました。

(次回へ続く)

☆彡PlaBase会員になると、「PlaBase Innovation Hub」のようなPlaBase主催イベントや見逃し配信、プラスチックに関わる方に役立つセミナー情報などがメールで届きます。ぜひご登録ください。
⁠
⁠

Image

>>>>連載「PlaBase Innovation Hub 2024」一覧

これまでカタログや材料メーカー各社のホームページ内に散在していた樹脂(プラスチック)成形材料の情報をPlaBaseに集約しました。 メーカー・樹脂名・物性値など多様な検索方法によって、お客様の目的に合った樹脂成形材料のデータを探し出すことができます。